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第零章

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目が覚めると、手元にドロっとした何かついている気がして、目を向ける。赤く染まる手に思わず息を飲み込んだ。

目の前倒れる顔の見えない骸。彼らはこちらに手を伸ばし何かを紡いだ。伸ばされた手を振り払うとバラバラになり崩れていった。

 「………ひっ…」

 バラバラと崩れたものに近づくと口と思われるものがパクパクと動き先ほどと同じように何かを紡ぐ。近づき耳を傾けると小さな声で「助けて」「どうして」と次第に言葉ははっきりと「自分(おまえ)のせいで」そうつむぎ先ほど迄バラバラに崩れていたものが元に戻り自分の手をつかんだ。

 "ごめんなさい"そう何度も同じ言葉を紡ぐ。すると手を掴んでいた骸は消え、いつもの部屋が現れる。

 忘れてしまおうと香炉に手にした。香粉をとるため箱を手にすると軽さに不思議に思い、箱を開けると、確かにそこに入れていた香粉が無くなっていた。

 「どうして…」

 どこを探してもなく、ならいっそと、原薬を潰し服用しようとした時手を捕まれ払われた。潰した薬が手から離れ落ちる。

声をあらげた彼は酷く傷ついたような顔をしていた。

 (あ、この顔知ってる…)

ここへ来て間なしの頃、今のように怒られたことがある。怒られた理由はもう忘れてしまったけどその後優しく抱きしめられた温もりは今も覚えている。あの時も今のような表情をしていた。

 「そんな悲しそうな顔しないで下さい。香満さん、この箱にはいっているものに触りましたよね?一体どこに」

 「………処分した。けどあれは…」

そして彼の言葉に笑みを浮かべ首を振る。

それに対して彼がそれ以上追求することはなかった。
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