複合施設で映画を見終えた健太は、隣接するレストランでの食事の予定を中止して、駐車場に停めた車の中で泣きじゃくる菊弥を抱きしめていた。

「ごめんね…泣いちゃって…」

休日の時間を愉しむふたりが食事までの暇つぶしに、何気なく観覧した映画。
その映画は江戸時代に流行った女装遊女出身の作家が書いた伝記の一部を元にした話で、「伝説の極悪遊女の真実が現代に蘇る!実話を元にした、ある遊女の物語。」という宣伝文句で公開されていた。

「悲しくて…涙が止まらない…」

エンドロールが流れ始めてから、しゃくりあげるように泣き始めた菊弥。
ぎゅっと瞑られた大きな瞳から大粒の涙をボロボロと溢れさせながら、人目もはばからず菊弥は健太の胸に顔を埋めた。

「大丈夫…きっと生まれ変わって、ふたりはどこかで幸せに暮らしてるよ。」

健太は子供のようにしゃくりあげる菊弥の小さな背中をぎゅっと抱きしめ、静かに呟いた。

完。
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