夕刻、見送りは予定時刻通りに始まった。
鮮やかな牡丹柄の打掛を羽織り、この日のために若旦那から贈られた特注の金のかんざしをふんだんに使った結髪。
うやうやしく続く従者の列のやや後方の真ん中に、豪華絢爛に飾られた菊の姿があった。
この前代未聞の身請け行列をひと目見ようと、遊郭の沿道にはたくさんの見物人でごった返していた。
少しずつ近づく、遊郭の出入り門。
遊女が一度くぐれば、一生出ることはないと言われているその門を、身請け行列に運ばれ菊が出ようとした時だった。
見物の民衆に紛れ、健太が立っていた。
前日、健太は奉公が終わり置屋を出ていたのだ。
菊は健太を見つめた、そして菊は遊郭の門を出た。身請け行列が動き続け門から遠ざかっても、菊は首を向けて健太を見つめ続けた。
そんな菊の姿を、健太は行列が遠ざかりが見えなくなるまで見送った。
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