月
「ちょっと!これ私がもらうのよ!」
「なによ!最初に私が目を付けてたんだから!」
真っ昼間に隣の菊の部屋の騒がしさに耐えかねた凛がのぞきにくると、そこはまるで安売り会場のような賑やかさだった。
若旦那は菊に「身一つでくればいい」と言っており、菊は所有している豪華な着物や装飾品の数々を置屋の遊女達に譲ることにしたのだ。
呆れながらも物珍しさで部屋に入ってきた凛は、上品な絹の風呂敷の上に売り物のように並べられた数々の豪華なかんざしの隅にひっそりと置かれた金属製のかんざしを見つけた。
「あんた、これも人にやっていいの?」
凛は金属製のかんざしを手に取り、菊を見た。
菊は穏やかな表情を浮かべて小さく頷いた。
「それじゃ、私はこれをもらうわ」
凛はそのままかんざしを髪にさした。
「大事にするわね。」
凛の言葉に、菊は笑顔で頷いた。
そして翌朝、菊は夕方には身請けされついに置屋を出る。
女装遊女が遊郭始まって以来の破格の金で身請けされる。
まるで大規模な婚礼でもあるかのように見送りは壮大なものになり、置屋は朝から総出で準備に追われていた。
そんな喧騒をよそに、菊は置屋の横の草むらに赴いていた。
唯一手元に残っていた持ち物を手放すために。
菊は草むらの中にしゃがむと、そこへカエルのおもちゃを置いた。
そして、カエルの優しく撫でた。
少しでも寂しくないように、ゴミ溜めではなく柔らかい草の中で朽ちていけるように、そう願って何度も優しく撫でた。
「なによ!最初に私が目を付けてたんだから!」
真っ昼間に隣の菊の部屋の騒がしさに耐えかねた凛がのぞきにくると、そこはまるで安売り会場のような賑やかさだった。
若旦那は菊に「身一つでくればいい」と言っており、菊は所有している豪華な着物や装飾品の数々を置屋の遊女達に譲ることにしたのだ。
呆れながらも物珍しさで部屋に入ってきた凛は、上品な絹の風呂敷の上に売り物のように並べられた数々の豪華なかんざしの隅にひっそりと置かれた金属製のかんざしを見つけた。
「あんた、これも人にやっていいの?」
凛は金属製のかんざしを手に取り、菊を見た。
菊は穏やかな表情を浮かべて小さく頷いた。
「それじゃ、私はこれをもらうわ」
凛はそのままかんざしを髪にさした。
「大事にするわね。」
凛の言葉に、菊は笑顔で頷いた。
そして翌朝、菊は夕方には身請けされついに置屋を出る。
女装遊女が遊郭始まって以来の破格の金で身請けされる。
まるで大規模な婚礼でもあるかのように見送りは壮大なものになり、置屋は朝から総出で準備に追われていた。
そんな喧騒をよそに、菊は置屋の横の草むらに赴いていた。
唯一手元に残っていた持ち物を手放すために。
菊は草むらの中にしゃがむと、そこへカエルのおもちゃを置いた。
そして、カエルの優しく撫でた。
少しでも寂しくないように、ゴミ溜めではなく柔らかい草の中で朽ちていけるように、そう願って何度も優しく撫でた。
