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第2の謎 出会い

「あ、あの!」

突然、少年が大きな声を出す。普通に驚いた。
隣を見ると、何か心を決めた様子でこちらを真っ直ぐ見てきた。

「どうした?」
「あ、えっと…良かったらでいいんですけど…っ、いや!断られても引きません!」

「僕を、助手にしてもらえませんか!」

必死な表情。
綺麗な顔だな、と改めて感じた。

「助手、か…」

唐突な提案に驚く。
後継者が無理なら、という考えなのだろうか。

助手。
正直、その発想はなかった。父さんがそうであったように、研究は1人でやるものだとばかり考えていた。

なるほど、確かに助手が居たら、単純で重要でない作業にあまり時間をかけずに効率化を図れるかもしれない。
おまけに少年の勉強にもなる。一石で何鳥も取れそうだ。

「ど、どうでしょうか…」

ちらちらと様子を伺ってくる少年。
その様子が面白くて、俺はついつい答えを出すまでの間を引っ張った。

一呼吸置いて、言った。

「…いいんじゃないか?助手」
「!」

ぱ、と少年の表情が明るくなる。
思わず頬が緩んでしまう。

「謎を解決するまでの期間、な。それまでずっとうちにいろよ」
「え、えっ…?それってどのぐらいかかるんでしょう…?」
「このペースだと39年だな」
「えええ!?そ、そんなに…!?」

わたわたと焦る少年。

この少年と話す度、俺はますますこの少年に惹かれていった。
この子をもっと知りたい。この子に触れたい。この子に――
この感情の名前を、俺は知らなかった。

「嫌か?」

俺は意地悪く言った。

「あ…いえ!」

その返事が聞きたかったからだ。

「助手か…できれば夜中にいて欲しいことが多いんだが…お前、家はどの辺だ?親に話をつけてもらってもいいか?」
「あ、…その…」

少年は口ごもる。
親が厳しいのだろうか。

話をつけられなかったら、別にいつだって構わない――そう言おうとした時、先に少年が口を開く。

「いないんです」
「…何?」
「…親、いないんです、僕。…3年前から」
「!」

そこで察した。
どうして少年が、こうも熱心に謎についての勉強をしたがるのか。

そうか。そうだよな。
犠牲者は今分かっているだけでも4桁に及ぶ。この世界に犠牲者は俺の父さん以外にも沢山いるんだ。

そんな当然のことを忘れていた。

「あ、でも大丈夫です!もう昔の事なので」
「そうか。…悪い」
「大丈夫ですって。そんな顔しないでください」

困ったように笑う少年。
ああ、この子の方がずうっと大人だ。

「…それなら、家に来い」
「え?」

この子を、守りたかった。
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