第2の謎 出会い
「…さん…研究者さん…!」
近くでそんな声がした。泣きながら叫ぶ声。
ああ、そうか。意識が飛んでたか。
経験上、そこまで時間は経っていないだろう。数分くらいだ。
ぱち、と目を開け、少年と目が合う。
すると目の前の少年は元々大きい目を更に見開いて俺の目を見た。
「えええ?!?うそっ…!?」
余りにも驚いたのだろう。後ろに仰け反って、そのまま転ぶ。
それでもなお、少年は起き上がるなりこちらを丸い目で凝視した。
驚くのも無理はない。
さっきの衝撃と出血量。死なない方がおかしいのだ。
しかし、触手が貫いた腹の傷はもう既に埋まっている。
これも経験上何も不思議に感じるところはなかった。
目の前には震える少年。なんて説明すればいいんだろう。
なんて、頭が冷静になっていくうちに、意識が飛ぶ直前のことを思い出した。
今こうして静かになっていると言うことは、謎は完全に無効化されたのだろう。
――よかった。
意識を本能的に手放さなかった自分を褒め称えたい。
あの特殊な銃。あれは組織を内側から溶かし、生物をゼリーのようなゲル状にする性質がある。何から何まで、父さんの発明品だ。
そのゲルに含まれた物質を調べることも重要な研究の一つだった。
ゲルを回収しなくてはいけない。なるべく早く。
少年に手伝って貰いたいが、今の状況を説明するのがなかなかに難しい。
「あー…細かいことは後で説明する…とにかく、こいつを集めるの手伝ってくれないか…?」
「あっ…えっと…わかりました!」
震える手で器具を受け取る少年。
本当に申し訳無い。
* *
「不老不死!?」
「ああ」
ゲルを回収し終え、警察の調べに適当に受け答えた後、俺と少年は広場から少し歩いたところにある公園に向かっていた。
広場は警察やら野次馬やらでしっちゃかめっちゃかだ。俺もしつこく質問を受けたが、隙をついてふらっと抜け出してきた。
「父さんの作った薬でな。死ぬ程の致命傷喰らっても、5分足らずで意識が戻る。まあ謎を研究するんだから何回死んでも足りないよな」
「へええ…今の化学って凄いんですね」
「父さんは研究の成果を表に出したがらないからな。俺の研究所の化学は世間一般の化学のふた回りぐらいは進んでるぞ」
公園について、二人でベンチに座る。
「謎について勉強してくれてるのは本当に嬉しい。跡を継いでほしいって言いたいところだけど、俺は謎が解決するまで一生研究者だからな…後継者がいらないんだ」
「そっか…そうなんですね」
木陰は涼しい。じっとり汗ばんだ身体に、さあっと吹く風が心地よい。
3年前の謎の出現は秋頃だった。
夏の暑さを身体で感じたのは本当に久しぶりだ。
――もう3年か。
ずっと恐れていた謎が出現したというのに、片付くまでにはあっという間だった。
こんなにも被害が最小限で済んだ。
死者も出ていない。
父さんが積み重ねてきた研究のお陰だ。
いくら父さんに感謝したって足りない。
近くでそんな声がした。泣きながら叫ぶ声。
ああ、そうか。意識が飛んでたか。
経験上、そこまで時間は経っていないだろう。数分くらいだ。
ぱち、と目を開け、少年と目が合う。
すると目の前の少年は元々大きい目を更に見開いて俺の目を見た。
「えええ?!?うそっ…!?」
余りにも驚いたのだろう。後ろに仰け反って、そのまま転ぶ。
それでもなお、少年は起き上がるなりこちらを丸い目で凝視した。
驚くのも無理はない。
さっきの衝撃と出血量。死なない方がおかしいのだ。
しかし、触手が貫いた腹の傷はもう既に埋まっている。
これも経験上何も不思議に感じるところはなかった。
目の前には震える少年。なんて説明すればいいんだろう。
なんて、頭が冷静になっていくうちに、意識が飛ぶ直前のことを思い出した。
今こうして静かになっていると言うことは、謎は完全に無効化されたのだろう。
――よかった。
意識を本能的に手放さなかった自分を褒め称えたい。
あの特殊な銃。あれは組織を内側から溶かし、生物をゼリーのようなゲル状にする性質がある。何から何まで、父さんの発明品だ。
そのゲルに含まれた物質を調べることも重要な研究の一つだった。
ゲルを回収しなくてはいけない。なるべく早く。
少年に手伝って貰いたいが、今の状況を説明するのがなかなかに難しい。
「あー…細かいことは後で説明する…とにかく、こいつを集めるの手伝ってくれないか…?」
「あっ…えっと…わかりました!」
震える手で器具を受け取る少年。
本当に申し訳無い。
* *
「不老不死!?」
「ああ」
ゲルを回収し終え、警察の調べに適当に受け答えた後、俺と少年は広場から少し歩いたところにある公園に向かっていた。
広場は警察やら野次馬やらでしっちゃかめっちゃかだ。俺もしつこく質問を受けたが、隙をついてふらっと抜け出してきた。
「父さんの作った薬でな。死ぬ程の致命傷喰らっても、5分足らずで意識が戻る。まあ謎を研究するんだから何回死んでも足りないよな」
「へええ…今の化学って凄いんですね」
「父さんは研究の成果を表に出したがらないからな。俺の研究所の化学は世間一般の化学のふた回りぐらいは進んでるぞ」
公園について、二人でベンチに座る。
「謎について勉強してくれてるのは本当に嬉しい。跡を継いでほしいって言いたいところだけど、俺は謎が解決するまで一生研究者だからな…後継者がいらないんだ」
「そっか…そうなんですね」
木陰は涼しい。じっとり汗ばんだ身体に、さあっと吹く風が心地よい。
3年前の謎の出現は秋頃だった。
夏の暑さを身体で感じたのは本当に久しぶりだ。
――もう3年か。
ずっと恐れていた謎が出現したというのに、片付くまでにはあっという間だった。
こんなにも被害が最小限で済んだ。
死者も出ていない。
父さんが積み重ねてきた研究のお陰だ。
いくら父さんに感謝したって足りない。