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第3の謎 仲間

「…セレンは遊ばないのか?」
「へ??」

大きな丸い目が、きょとん、と俺を見る。

「いや…お前くらいの歳なら、ああいうの好きなんじゃないのか?あんまり外にも出られなかったみたいだし」
「あ…」

遊具に目を向ける。
俺も外にはほとんど出なかったので遊んだ記憶は無いが、色とりどりの遊具で遊ぶ子供達は皆生き生きとした表情をしている。

セレンは少しの間、子供達に目を奪われていた。

「……だけ」
「ん?」

「ちょっとだけ、遊んでみたい、かも」

ぽつり、ぽつりと零れた言葉。

なるほど、そうと決まれば。俺は立ち上がり、セレンの手を引いた。

「え!?ちょっ…」

木陰から離れると、強い日差しが容赦なく降り注ぐ。
あまりに暑い。

しかし今は平気だ。
暑さより――楽しさが、勝っている。

俺はセレンと遊具にある階段を駆け登る。

「ほら、ここに座って、滑っておりるんだ」
「ちょ、怖いよ!やめて、アルス…!」
「お?一丁前に呼び捨てしやがって」
「えっ、あ、あ゙ーーー!!!」

俺はセレンの背中を押した。
勢いよくセレンの身体が坂へ飛び出す。身体はその勢いのままするすると下まで滑り、一番下で坂の外へ放り出された。

放り出された時の動きが可笑しくて、思わず笑いがこぼれる。

「ちょっと!何笑ってるの!」

シャツについた砂を手で払いながら、セレンはこっちを睨んだ。

「いや、悪い…面白くて」
「…」
「ふふっ、悪かったって」

俺も坂を滑っておりて、セレンの側まで行く。風が気持ちいい。

「…ふっ」

ふと。
セレンが、こっちを見て。

「…あはは!これ…楽しい!楽しいよ!もう1回やろ!ね?」

きらきら、笑った。

こんなにも綺麗な笑顔を、俺は生まれて初めて見た。素直にそう感じた。

つられて俺も笑顔になる。

「そうだな、もっと強く押してやる」
「ひ、ひえぇ…」

その後も、二人で何度も何度も階段を駆け登った。


結局俺は、なかなかにいい歳をしながら、暗くなるまでこの遊具で遊んでいたのだ。
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