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第3の謎 仲間

「ま、待って、研究者さん…!」

セレンの手を握り、一緒に外に出る。
扉を閉めたところで、俺はセレンに向き直った。

「おい、セレン」
「は、はい!」

ビクッ、とセレンの身体が跳ね、恐る恐る俺を見た。

「まずは」

「その『研究者さん』って呼ぶの、やめろ」
「…へ?」

言われた事が意外だったのだろうか。セレンは強ばった表情から一変し、きょとん、と俺を見る。

「あと敬語もやめろ。いちいち言うことが長くなってお前も面倒だろ?」
「えっ!そ、そんなこと…」
「俺も面倒なんだよ」
「うっ…」

わかりやすく落ち込むセレン。また言い方がきつくなってたな。

「悪い。別に怒ってるわけじゃない」

頭を軽く撫でてやると、 セレンは伏せていた大きな目を俺に向けた。
それでも少し困ったような顔をしている。

「でも…敬語を外すのは厳しいです…だって、こんなに、…尊敬してるのに」
「ふふっ、だからこその今日だ。一緒にいろんな場所に行ってお互いを知ろう」
「そんな無茶な…」

ますます困った顔をするセレン。
面白くなって皺の寄った眉間をつつくと、セレンは露骨に嫌そうな顔をする。面白いな。

「どこに行くんですか」
「そうだな、とりあえず広場の近くの公園に行こう」
「公園…」

俺達が初めてちゃんと話した場所。
俺にとっては、外の世界で初めて父さん以外との思い出の場所になった。

俺達は公園に向かって歩き始めた。

もうすっかり夏だ。日差しは随分照っているが、空気はカラッとしている。
それでも、常に研究所の適温で暮らしている俺の身体にはかなり堪えた。

少し歩くと、広場に着く。

広場は立ち入り禁止になっていた。
謎が出現してから1週間ほどしか経っていないそこは、まだ瓦礫の山。
つい最近久々に見た、お店が並んでいた風景が頭に過ぎり心が痛む。

そうか、人が集まるところに謎が出現してしまったら、その時自体の被害は少なくても、その後の影響が大きいのか。
謎の出現場所についての研究も必要だな――

「研究者さん?」
「!」

セレンの声で我に返る。
いつの間にか足を止めていた。

「ああ、悪い。考え事してたんだ」
「…広場、ですか」
「そうだな。酷い有様だ、…許せない」
「……」

セレンは沈んだ顔をする。
駄目だ、今日は明るい日にしないと。俺はセレンの頭を小突いた。

「いたっ!」
「おい、研究者さんって呼ぶなって言っただろ」
「えーっ…じゃあなんて呼べばいいんですか」
「あ?『アルス〜!』でいい」
「ハードルが高すぎる…」

こいつのころころ変わる表情は見ていて飽きない。思わず笑みがこぼれる。

そのまま、俺達は公園へ向かった。
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