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第2の謎 出会い

「アルス〜!夜ご飯できたよ〜!」

セレンが落ち着いた頃、アモルおじさんが呼ぶ声がした。

「あ…、じゃあ、僕、帰ります」
「あ?話聞いてなかったのか?」
「えっ」

目の前の身体が、ぴゃっ、と跳ねて涙目になる。
ああ、言い方がきつくなる癖、早く治さないとな。

「悪い、怒ってる訳じゃなくて。同居するんだろ?」
「あ、えっ?本当にするんですか!?」
「当たり前だ。きっとアモルおじさんも3人分のご飯作ってるぞ」

あのアモルおじさんのことだから間違いない。今日は張り切って作ってるはずだ。

研究所のドアを開けると、ふわっといい香りが鼻腔をくすぐる。
テーブルにはやっぱり3つのお皿。

お皿の上にはふわふわの卵。
今日はオムレツだ。

アモルおじさんはこっちを見るなり、ぱっと笑顔になって、言った。

「その子の分もちゃんとあるからね!…これから先のことなんて、ゆっくり考えればいいよ!とりあえず食べて食べて!」
「あ…ありがとうございます…!」

きらきらした目で料理を見るセレン。
そうだ、アモルおじさんの料理は美味いんだぞ。本当に。

「そうそう、オムレツといえばさ、ケチャップで名前書きたいんだよね!君の名前、聞いてもいい?」
「えっ!あの、僕、名前――」

そこまで言って、言葉に詰まった。

――そうだよ、お前はもう名前があるんだ。

「…ほら言ってやれ、お前の名前は?」

背中を軽く押す。
また泣きそうな顔でこっちをちらっと見る。

前に向き直って、言った。

「…セレン、です」
「わあ!セレンくんかぁ!いい名前だね!書いてあげる〜!」
「…あ!綴りは最後に"e"がつくんです…!」
「なるほど、よーし…っと、これで合ってる?」

黄色い卵に赤い『Selene』の文字。

「合ってます…ありがとうございます」

セレンは愛おしそうにその文字を見つめた。

「アルスも書いてあげよう!『Ars』〜っと」
「俺極端にケチャップ少ないな」
「あはは!俺の名前も似たようなもんだよ!セレンくんは名前に恵まれたね、なんてね!」

他愛もない会話をしている間にも、セレンはにこにこしながら自分の名前を見つめていた。

「ほら、早く食え、冷めるぞ」

そう促すと、セレンはこっちを見て、

「なんか、勿体なくて」

そう言って、また泣きそうな顔をした。

それは同じ泣きそうな顔でも、さっきとは違う、


泣きそうな――幸せそうな、笑顔だった。
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