「あのね…水月ちゃん、優一の足は…」

またあの日の夢を見る。
何度も繰り返し見たあの日の夢。

夢であり目標だった人が
近くにいるのに自分と離れていってしまうような、
あの気持ちを感じた日。

「水月、心配しなくていいんだよ、誰のせいでもないんだ、足だってきっといつか動くようになるよ。」

心配をかけまいと私に告げるその言葉が、
どれだけ遠く感じたのか、彼は知っているのだろうか。

優しい彼らしい言葉だったが、
幼い自分にも到底希望の言葉には感じられないほど、苦しい物であった。

「俺のせいなんだ…俺の…」

決して彼のせいでもない事は知っていた。
ただひたすら涙を流す彼に、どのような言葉をかけても慰めにはならない事も分かっていた。

「私がゆうにぃが一緒にいれない分まで側にいるよ、ずっといる。」

その言葉がどれほど伝わるのか、
それを聞いた彼が何を思うのか、
それは分からなかった。

分からなかったけれど、幼き私は
目の前で大切な兄の夢を奪ってしまったと泣く
もう一人の幼馴染を放っておくことは出来なかったんだと思う。

「水月…水月…」

二人で泣きじゃくった冷たい病院の廊下、
あの日の光景を瞼の裏に残しながら、
私はまた目を覚ますのだ。

今日は私達が楽園へ旅立つ日、
「ゴッドエデン」
楽園と言う名の地獄への旅立ちの日だ。