雷門に吹く新しい風
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勝負の開始を告げるホイッスルは無く、
目の前の少年がグラウンドを蹴り、こちらへと向かう力強い足音を開始の合図と言わんばかりに私と京介はアイコンタクトを交わす。
ボールを持つ京介へと松風が向かってくる。
ただその場でリフティングしているだけの京介だが、
松風のプレイは浅く、ボールに触る事すらできないみたいだ。
「ふーん、そういう事」
「あぁ」
京介もどうやら同じ考えに至ったようだ。
唐突に松風に向かってボールを出すが、勢いもないイージーボールすら、松風はトラップすることが出来ず、私の足元へとボールが転がってくる。
こちらへ向かってくる松風は、やはり私が思っていた通り初心者のようで、
ボールをヒールであげ難なく躱すとその勢いのまま転んでしまった。
息もあがりつつある初心者を私と京介が甚振るように、プレイは続いて行った。
その場で動かないという縛りとは裏腹にそんなルール関係ないと言わんばかりのコントロールから来るキープ力と乱れのない連携から来る以心伝心のパスに、松風は翻弄されるばかりで。
「どうした?」
「もう終わり?」
膝をつき肩で息をする松風にそう問いかけてみた。
「まだまだ...!」
「そのザマでよくサッカーを知ってるなんて大口を叩けたな...」
「やっぱりアンタムカつく...何にも分かってないクセに!」
イライラした気持ちがどうしても抑えきれなくて、松風に向かって強めのボールを蹴った。
たとえ京介よりパワーは劣ろうと、私だって今まで伊達にサッカーに入れ込んできた訳ではない、当然受け止めきれる訳もなく松風は勢いのまま弾き飛ばされる。
「いってぇ...まだまだ...!」
それでも立ち上がってくる松風に京介も苛立ちを更に募らせたようで、遊んでいるとは到底言えないプレイになっていく。
「そろそろやめといたら?」
「まだまだ...!」
それでもまだ立ち向かってくる松風、何が彼をこんなに突き動かすんだ?
サッカーの事何も分かってないズブの素人が、何度も何度も立ち上がってくるのが理解できない。
きっと京介も同じ気持ちだろう。
グラウンドの端でこの勝負を良しとした理事長達が勝負を観戦していた。
「おそらく、彼らはシードですね。あのテクニック、只者ではありません。」
「フィフスセクターに鍛え上げられたサッカーエリート集団、シード...サッカーにおける完全なる英才教育を受けていると聞いております。彼らもその一員といった事ですか...」
「女子のシードというのは今まで聞いたことがありませんでしたが、彼女も相当な実力のようですね、それにしても彼らと勝負している...松風天馬..と言ったかな?」
「はい...新入生のようですが」
「中々頑張ってるじゃないですか...」
そんな大人たちからの視線など目もくれず、勝負は一方的にヒートアップしていった。
その場にへたり込み、苦しそうに肩で息をする松風に、少しだけ後ろめたさを感じて目を逸らしてしまう。
だが京介は考える事をやめたのか、勝負を畳みにかかる。
「そろそろ飽きてきた...終わりにするぜ」
「京介...」
京介が何をしようとしているかは言われずとも分かった。
きっとさっき2軍の連中を潰した時のように、アレで一気に勝負を終わらせるつもりだろう。
心に浮かびかけた罪悪感を使命感で押し込めて、京介へとボールを渡す。
さすがに松風も何か来ると判断してか少し身構えているが、きっとそんなのは関係無くなってしまうんだろう。
京介が力を込めて蹴ったボールに黒いオーラが凝縮していく。
「デスソード...!」
黒いオーラを帯びたボールが勢いを増し、松風へと向かっていく。
とめられるはずもない、触っただけでもどうなる事か知れたことではない。
勝負が決まったのが分かっているからか、その後の光景を見たくないからかなのかは分からないけれど、私は決着シーンへ背を向ける。
「サッカーやるんだ!!やると決めたら絶対、やるんだぁー!!!!!」
松風の覚悟の籠った叫びが耳に届き、ふと振り返ってしまう。
目に入ったのは松風から立ち昇るオーラ。
「あれは...!」
身に覚えのある現象に思わず釘付けになってしまう。
ボールを体全身で、なんとか受け止めようとする松風、
できるはずがない、そんなわけない、確信していた。
だが、その思いとは裏腹に、松風はボールを弾き飛ばし、その足元へと収めて見せた。
「と...とった!!」
「何だと...?!」
「どうして...!?」
私も京介も目の前で起きた現象が信じられず、思わず声が漏れる。
騒めき立つグラウンド、きっとギャラリーも私達と同じ気持ちなのだろう。
部の存続が掛かったはずのサッカー部の面々ですら、半ば諦めと共にあったはずだ。
「あいつ...」
「取りました...天馬君取りましたよ...!!ボールを取ったって事は、天馬君の勝ちね!!」
ヒヤヒヤとこの勝負を見ていたであろう音無から声がかかる。
「これでサッカーができる...!」
ただ嬉しそうに笑顔を見せる松風が、とても眩しく、そして羨ましく思えた。
けれどそんな明るい気持ちよりも胸に沸く苛立ちと、今も病室にいるであろう彼を思う気持ちがグチャグチャになって、私の心を締め付ける。
「サッカーサッカー言わないでよ...!何にも知らない癖に...!!」
いつの間にか足元に転がって来ていたボールを、勢い任せに、締め付けられた心をどうにかしたいその一心で思いっきり蹴りつける。
「ちょっと!約束が違うわよ...!」
引き留める音無の声は、私には届いていなかった。
ボールはその勢いのまま、私の気持ちをぶつけるかのように松風へと真っすぐ飛んでいく。
しかしそこへ突然もう一つサッカーボールが飛んでくる。
そのボールは私の蹴ったボールへ正確なコントロールでぶつかると、軌道を松風から見事逸らしてしまった。
「えっ...!?」
何が起こったか分からず、茫然としていると、グラウンドの外から声が聞こえる。
「お前たち!サッカー部の神聖なグラウンドで何を騒いでいる!!」
「神童くん...!」
「あの人は...」
ようやくのお目当ての登場に、京介がニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「やっと現れたか」
遅れてやってきた今回の大本命へと私も睨みつけるような視線を送る。
そんな私の態度など全く意に介さず、少年は芯の通った声でこちらへ宣言する。
「俺は!雷門中キャプテン、神童拓人!そして、ここにいるのが、雷門イレブンだ!!」
勢ぞろいする11人の少年、
グラウンドに相対するのは吹き始めたそよ風と吹き荒れた煽風達。
彼らが出会ったのは運命か、必然か。
唐突に雷門中を巻き込んで渦巻くのは、革命への兆しか、はたまた...。
目の前の少年がグラウンドを蹴り、こちらへと向かう力強い足音を開始の合図と言わんばかりに私と京介はアイコンタクトを交わす。
ボールを持つ京介へと松風が向かってくる。
ただその場でリフティングしているだけの京介だが、
松風のプレイは浅く、ボールに触る事すらできないみたいだ。
「ふーん、そういう事」
「あぁ」
京介もどうやら同じ考えに至ったようだ。
唐突に松風に向かってボールを出すが、勢いもないイージーボールすら、松風はトラップすることが出来ず、私の足元へとボールが転がってくる。
こちらへ向かってくる松風は、やはり私が思っていた通り初心者のようで、
ボールをヒールであげ難なく躱すとその勢いのまま転んでしまった。
息もあがりつつある初心者を私と京介が甚振るように、プレイは続いて行った。
その場で動かないという縛りとは裏腹にそんなルール関係ないと言わんばかりのコントロールから来るキープ力と乱れのない連携から来る以心伝心のパスに、松風は翻弄されるばかりで。
「どうした?」
「もう終わり?」
膝をつき肩で息をする松風にそう問いかけてみた。
「まだまだ...!」
「そのザマでよくサッカーを知ってるなんて大口を叩けたな...」
「やっぱりアンタムカつく...何にも分かってないクセに!」
イライラした気持ちがどうしても抑えきれなくて、松風に向かって強めのボールを蹴った。
たとえ京介よりパワーは劣ろうと、私だって今まで伊達にサッカーに入れ込んできた訳ではない、当然受け止めきれる訳もなく松風は勢いのまま弾き飛ばされる。
「いってぇ...まだまだ...!」
それでも立ち上がってくる松風に京介も苛立ちを更に募らせたようで、遊んでいるとは到底言えないプレイになっていく。
「そろそろやめといたら?」
「まだまだ...!」
それでもまだ立ち向かってくる松風、何が彼をこんなに突き動かすんだ?
サッカーの事何も分かってないズブの素人が、何度も何度も立ち上がってくるのが理解できない。
きっと京介も同じ気持ちだろう。
グラウンドの端でこの勝負を良しとした理事長達が勝負を観戦していた。
「おそらく、彼らはシードですね。あのテクニック、只者ではありません。」
「フィフスセクターに鍛え上げられたサッカーエリート集団、シード...サッカーにおける完全なる英才教育を受けていると聞いております。彼らもその一員といった事ですか...」
「女子のシードというのは今まで聞いたことがありませんでしたが、彼女も相当な実力のようですね、それにしても彼らと勝負している...松風天馬..と言ったかな?」
「はい...新入生のようですが」
「中々頑張ってるじゃないですか...」
そんな大人たちからの視線など目もくれず、勝負は一方的にヒートアップしていった。
その場にへたり込み、苦しそうに肩で息をする松風に、少しだけ後ろめたさを感じて目を逸らしてしまう。
だが京介は考える事をやめたのか、勝負を畳みにかかる。
「そろそろ飽きてきた...終わりにするぜ」
「京介...」
京介が何をしようとしているかは言われずとも分かった。
きっとさっき2軍の連中を潰した時のように、アレで一気に勝負を終わらせるつもりだろう。
心に浮かびかけた罪悪感を使命感で押し込めて、京介へとボールを渡す。
さすがに松風も何か来ると判断してか少し身構えているが、きっとそんなのは関係無くなってしまうんだろう。
京介が力を込めて蹴ったボールに黒いオーラが凝縮していく。
「デスソード...!」
黒いオーラを帯びたボールが勢いを増し、松風へと向かっていく。
とめられるはずもない、触っただけでもどうなる事か知れたことではない。
勝負が決まったのが分かっているからか、その後の光景を見たくないからかなのかは分からないけれど、私は決着シーンへ背を向ける。
「サッカーやるんだ!!やると決めたら絶対、やるんだぁー!!!!!」
松風の覚悟の籠った叫びが耳に届き、ふと振り返ってしまう。
目に入ったのは松風から立ち昇るオーラ。
「あれは...!」
身に覚えのある現象に思わず釘付けになってしまう。
ボールを体全身で、なんとか受け止めようとする松風、
できるはずがない、そんなわけない、確信していた。
だが、その思いとは裏腹に、松風はボールを弾き飛ばし、その足元へと収めて見せた。
「と...とった!!」
「何だと...?!」
「どうして...!?」
私も京介も目の前で起きた現象が信じられず、思わず声が漏れる。
騒めき立つグラウンド、きっとギャラリーも私達と同じ気持ちなのだろう。
部の存続が掛かったはずのサッカー部の面々ですら、半ば諦めと共にあったはずだ。
「あいつ...」
「取りました...天馬君取りましたよ...!!ボールを取ったって事は、天馬君の勝ちね!!」
ヒヤヒヤとこの勝負を見ていたであろう音無から声がかかる。
「これでサッカーができる...!」
ただ嬉しそうに笑顔を見せる松風が、とても眩しく、そして羨ましく思えた。
けれどそんな明るい気持ちよりも胸に沸く苛立ちと、今も病室にいるであろう彼を思う気持ちがグチャグチャになって、私の心を締め付ける。
「サッカーサッカー言わないでよ...!何にも知らない癖に...!!」
いつの間にか足元に転がって来ていたボールを、勢い任せに、締め付けられた心をどうにかしたいその一心で思いっきり蹴りつける。
「ちょっと!約束が違うわよ...!」
引き留める音無の声は、私には届いていなかった。
ボールはその勢いのまま、私の気持ちをぶつけるかのように松風へと真っすぐ飛んでいく。
しかしそこへ突然もう一つサッカーボールが飛んでくる。
そのボールは私の蹴ったボールへ正確なコントロールでぶつかると、軌道を松風から見事逸らしてしまった。
「えっ...!?」
何が起こったか分からず、茫然としていると、グラウンドの外から声が聞こえる。
「お前たち!サッカー部の神聖なグラウンドで何を騒いでいる!!」
「神童くん...!」
「あの人は...」
ようやくのお目当ての登場に、京介がニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「やっと現れたか」
遅れてやってきた今回の大本命へと私も睨みつけるような視線を送る。
そんな私の態度など全く意に介さず、少年は芯の通った声でこちらへ宣言する。
「俺は!雷門中キャプテン、神童拓人!そして、ここにいるのが、雷門イレブンだ!!」
勢ぞろいする11人の少年、
グラウンドに相対するのは吹き始めたそよ風と吹き荒れた煽風達。
彼らが出会ったのは運命か、必然か。
唐突に雷門中を巻き込んで渦巻くのは、革命への兆しか、はたまた...。