カフェを出てからも足早に歩く。
ザワザワと嫌なモノが胸を締め付ける。

「友達じゃねぇだろ」

さっき言われた言葉が頭をぐるぐる回る。
あの人の言ってる事は多分、正しい。
友達の病気や余命を知って態度が変わってしまうのは確かに本当の友達じゃないのかも知れない。
でも、いざ友達にそんな事を告げられて今までと変わらずに接する事なんて出来るの？
どれだけ大好きで大切な友達でも、知られたくないって思うのは間違ってるの？
大好きで大切だからこそ、知られたくない、
そう思うのは自分勝手なの？
あの人の言う事は奇麗事だ。

「…お前、死ぬの？」

初対面の相手に聞く事じゃないよ。
だけど、

…少し、嬉しかった。
変な話だけど、家族以外に私の病気や余命を知られて、
私の死をただ純粋な疑問で聞いてくれて、
何だか少し、心が軽くなった気がした。
それが何だか少し、嬉しかったんだ
あんなにはっきりと言ってくれる人、
多分他にいない。

「…あの人の言う通りだ」

家族だからこそ話せない事、たくさんあるんだ。
一君にはお兄ちゃんの話を聞いてもらっているから、私まで甘えられない。
だから、全部自分で受け止めて自分の中で消化するしかない。
だけど、たまに凄く凄くツラくて悲しくて、
怖くて、
誰かに寄り掛かりたくなる。
話を聞いてもらいたくなる。
誰かに、隣にいてほしい。
家族以外の、誰かに。
誰でもいい訳じゃない。
大好きで大切って思える、誰かに。

「…私だって、誰かに話したいよ…！」

ぽつりと溢れた言葉と一緒に
頬に涙が流れたのが分かった。


「おいっ！！」

！！？

そんな中急に後ろから腕を掴まれて呼び止められた。
驚いて振り替えると、
そこにはさっきの男の子が息を切らして立っていた。