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「ただいま」
「おかえり、遅かったわね」
いつもより遅い帰宅にお母さんは少し心配そうな顔をしてそう言ってきた。
「ごめん、ちょっと友達と話してたら遅くなっちゃった」
「そう、ご飯は?」
「あ、ごめんあんまりお腹空いてなくて…」
せっかく作ってくれたのに申し訳ないな、とは思うけど今は食べられそうにない。
何だか胸も何もかも、苦しい。
「体調でも悪いの?大丈夫?」
「ううん、大丈夫。
ちょっと疲れただけ。
先にお風呂いい?」
「いいけど…。何だか顔が赤いわよ?
本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!
じゃあ、私お風呂いくね」
そう言ってリビングを出ようとした時、飾ってある写真立てが目に入った。
お母さんが飾ってある何個かの写真立てには、私とお兄ちゃんの写真が飾られている。
「…お母さん」
「なに?」
「お兄ちゃんってこの時間何してるのかな?」
「若利?そうねぇ、ご飯は終わってるだろうからお風呂か、それか部屋で自由に過ごしているんじゃないかしら?」
「そっか」
「どうしたの?柚奈が若利の事聞いてくるなんて珍しいわね?」
「…うん、ちょっと」
それだけ言って、リビングを出て部屋へ続く階段を上がる。
部屋に入ると同時に全身の力が抜けて床に座り込む。
…あまりに色々あって頭の中がパンクしそうだ。
蛍が私の話を真剣に聞いてくれて嬉しかった。
お兄ちゃんの事、真剣に考えてくれて嬉しかった。
…英に会って、
あまりに突然でどうしたらいいのか分からなかった。
戸惑いが大きくて、思わず英の手を振り払った。
だけど英は、
会えて良かった、諦めない、
そう言った。
その言葉は凄く驚いたけど、久しぶりに私の頭を撫でてくれた英の手は、
つきあっていた頃と同じで、凄く優しくて暖かかった。
それが余計に苦しかった。
蛍が、私の事好きだって言ってくれて。
凄く嬉しかったのに、凄く苦しくなった。
英の事をまだ心のどこかで忘れていない自分がいるから。
その現実が、
蛍の気持ちにすぐに答えられない自分が、
嫌で嫌で。
「…最低だな、私」
真っ暗で静かな部屋に私の声は酷く響いて。
…私は、蛍の事をどう思ってる?
好き?
それは、友達として?
それとも異性として?
英よりも?
ぐるぐる、頭の中を駆けめぐる。
今答えは出ないのに。
身体にも腕にも、蛍の暖かさが残ってる。
蛍の心臓の音も。
蛍に抱きしめられて、びっくりしたけれど嬉しかった。
蛍の優しさや暖かさが、嬉しかった。
すぐに蛍を受け入れないクセに、
蛍を抱きしめてしまった。
胸が痛くて痛くて、呼吸が上手く出来ない。
泣きそうだ。
だけど、泣いちゃダメだ。
私に泣く資格なんてないんだから。
蛍の事も、英の事も
私は傷つけている。
電気も付けずに真っ暗な部屋で座り込んだまま動けずにいると、鞄の中からスマホの着信が響いた。
鞄からスマホを取り出して画面も見ずにそのまま出る。
「…もしもし」
「柚奈か?」
「え…?」
耳に聞こえてきた声に心臓がドクンと大きな音を立てた。
この声…
「お兄ちゃん…?」
「久しぶりだな、柚奈」
何でお兄ちゃんが…?
驚きやら戸惑いやらで何も言えずにいる私にお兄ちゃんはゆっくり話してくれる。
「さっき母さんから連絡があってな。
柚奈が俺の事を聞いてきたと。
それが何だか嬉しくて、久しぶりに柚奈と話したいと思って電話したんだ」
お母さんが…。
ほんの少し、話しただけ。
それも当たり障りのない事。
なのにお母さん、気にしてお兄ちゃんに伝えてくれたんだ。
(「本当は牛島さんの事今でも好きなんじゃないの…?」)
蛍が言った言葉を思い出す。
…ずっと嫌いって思ってた。
お兄ちゃんの事も、バレーも、
大嫌いって。
だけど、本当はそうじゃない。
嫌いなのは、そんな風にしか思えない自分自身。
蛍と話して、それが分かった。
「元気か?風邪ひいてないか?
学校はどうだ?」
「お兄ちゃん、心配性の父親みたいだよ?」
「そうか?
しかし離れて暮らす妹を心配しない兄はいないだろう?」
当たり前の様にそう話すお兄ちゃんに涙が込み上げてくる。
「…お兄ちゃん」
「何だ?」
「…今度、いつ帰ってくる?」
「そうだな、インターハイ前に一度帰ろうとは思っているが…」
「そっか、
…早く会いたいな」
自然と口に出ていた言葉。
こんな風にお兄ちゃんと素直に話が出来るなんて、何年ぶりだろう。
「分かった。今週末に一度帰ろう」
「え!?
いや、お兄ちゃん部活あるでしょ?
インターハイ前の大切な時じゃん!
それにテストだって…」
「大事な妹が会いたいといってくれているんだ。今から帰ってもいい位だ」
…ああ、そうだ。
お兄ちゃんは昔から私の事を
大事な妹、
そう言ってくれていた。
…どうして忘れていたんだろ。
お兄ちゃんはこんなにも私の事を思ってくれていたのに。
口数は多くないし不器用だけど、大事な事はちゃんと伝えてくれていたのに。
「…うん、待ってるね」
「ああ」
「お兄ちゃんと話したい事、いっぱいあるの」
「そうか、それは楽しみだな」
「だからお兄ちゃん、お父さんみたいだって!」
自然と笑って話していた。
…蛍の事も、英の事も
まだ何も決められていないし、どうしたらいいのかも分からない。
だけど、お兄ちゃんと話してたら何だか心が落ち着いた。
ありがとう、お兄ちゃん。
私、ちゃんとするから。
ちゃんと考えて、悩んで、
答え出すから。
だから、
今度帰ってきた時は、
私の話、聞いてね。
久しぶりに、
甘えもいいかな?
ねぇ、お兄ちゃん。
「おかえり、遅かったわね」
いつもより遅い帰宅にお母さんは少し心配そうな顔をしてそう言ってきた。
「ごめん、ちょっと友達と話してたら遅くなっちゃった」
「そう、ご飯は?」
「あ、ごめんあんまりお腹空いてなくて…」
せっかく作ってくれたのに申し訳ないな、とは思うけど今は食べられそうにない。
何だか胸も何もかも、苦しい。
「体調でも悪いの?大丈夫?」
「ううん、大丈夫。
ちょっと疲れただけ。
先にお風呂いい?」
「いいけど…。何だか顔が赤いわよ?
本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!
じゃあ、私お風呂いくね」
そう言ってリビングを出ようとした時、飾ってある写真立てが目に入った。
お母さんが飾ってある何個かの写真立てには、私とお兄ちゃんの写真が飾られている。
「…お母さん」
「なに?」
「お兄ちゃんってこの時間何してるのかな?」
「若利?そうねぇ、ご飯は終わってるだろうからお風呂か、それか部屋で自由に過ごしているんじゃないかしら?」
「そっか」
「どうしたの?柚奈が若利の事聞いてくるなんて珍しいわね?」
「…うん、ちょっと」
それだけ言って、リビングを出て部屋へ続く階段を上がる。
部屋に入ると同時に全身の力が抜けて床に座り込む。
…あまりに色々あって頭の中がパンクしそうだ。
蛍が私の話を真剣に聞いてくれて嬉しかった。
お兄ちゃんの事、真剣に考えてくれて嬉しかった。
…英に会って、
あまりに突然でどうしたらいいのか分からなかった。
戸惑いが大きくて、思わず英の手を振り払った。
だけど英は、
会えて良かった、諦めない、
そう言った。
その言葉は凄く驚いたけど、久しぶりに私の頭を撫でてくれた英の手は、
つきあっていた頃と同じで、凄く優しくて暖かかった。
それが余計に苦しかった。
蛍が、私の事好きだって言ってくれて。
凄く嬉しかったのに、凄く苦しくなった。
英の事をまだ心のどこかで忘れていない自分がいるから。
その現実が、
蛍の気持ちにすぐに答えられない自分が、
嫌で嫌で。
「…最低だな、私」
真っ暗で静かな部屋に私の声は酷く響いて。
…私は、蛍の事をどう思ってる?
好き?
それは、友達として?
それとも異性として?
英よりも?
ぐるぐる、頭の中を駆けめぐる。
今答えは出ないのに。
身体にも腕にも、蛍の暖かさが残ってる。
蛍の心臓の音も。
蛍に抱きしめられて、びっくりしたけれど嬉しかった。
蛍の優しさや暖かさが、嬉しかった。
すぐに蛍を受け入れないクセに、
蛍を抱きしめてしまった。
胸が痛くて痛くて、呼吸が上手く出来ない。
泣きそうだ。
だけど、泣いちゃダメだ。
私に泣く資格なんてないんだから。
蛍の事も、英の事も
私は傷つけている。
電気も付けずに真っ暗な部屋で座り込んだまま動けずにいると、鞄の中からスマホの着信が響いた。
鞄からスマホを取り出して画面も見ずにそのまま出る。
「…もしもし」
「柚奈か?」
「え…?」
耳に聞こえてきた声に心臓がドクンと大きな音を立てた。
この声…
「お兄ちゃん…?」
「久しぶりだな、柚奈」
何でお兄ちゃんが…?
驚きやら戸惑いやらで何も言えずにいる私にお兄ちゃんはゆっくり話してくれる。
「さっき母さんから連絡があってな。
柚奈が俺の事を聞いてきたと。
それが何だか嬉しくて、久しぶりに柚奈と話したいと思って電話したんだ」
お母さんが…。
ほんの少し、話しただけ。
それも当たり障りのない事。
なのにお母さん、気にしてお兄ちゃんに伝えてくれたんだ。
(「本当は牛島さんの事今でも好きなんじゃないの…?」)
蛍が言った言葉を思い出す。
…ずっと嫌いって思ってた。
お兄ちゃんの事も、バレーも、
大嫌いって。
だけど、本当はそうじゃない。
嫌いなのは、そんな風にしか思えない自分自身。
蛍と話して、それが分かった。
「元気か?風邪ひいてないか?
学校はどうだ?」
「お兄ちゃん、心配性の父親みたいだよ?」
「そうか?
しかし離れて暮らす妹を心配しない兄はいないだろう?」
当たり前の様にそう話すお兄ちゃんに涙が込み上げてくる。
「…お兄ちゃん」
「何だ?」
「…今度、いつ帰ってくる?」
「そうだな、インターハイ前に一度帰ろうとは思っているが…」
「そっか、
…早く会いたいな」
自然と口に出ていた言葉。
こんな風にお兄ちゃんと素直に話が出来るなんて、何年ぶりだろう。
「分かった。今週末に一度帰ろう」
「え!?
いや、お兄ちゃん部活あるでしょ?
インターハイ前の大切な時じゃん!
それにテストだって…」
「大事な妹が会いたいといってくれているんだ。今から帰ってもいい位だ」
…ああ、そうだ。
お兄ちゃんは昔から私の事を
大事な妹、
そう言ってくれていた。
…どうして忘れていたんだろ。
お兄ちゃんはこんなにも私の事を思ってくれていたのに。
口数は多くないし不器用だけど、大事な事はちゃんと伝えてくれていたのに。
「…うん、待ってるね」
「ああ」
「お兄ちゃんと話したい事、いっぱいあるの」
「そうか、それは楽しみだな」
「だからお兄ちゃん、お父さんみたいだって!」
自然と笑って話していた。
…蛍の事も、英の事も
まだ何も決められていないし、どうしたらいいのかも分からない。
だけど、お兄ちゃんと話してたら何だか心が落ち着いた。
ありがとう、お兄ちゃん。
私、ちゃんとするから。
ちゃんと考えて、悩んで、
答え出すから。
だから、
今度帰ってきた時は、
私の話、聞いてね。
久しぶりに、
甘えもいいかな?
ねぇ、お兄ちゃん。