つれづれ

超我流「秘密」がたり3 ダ・◯ィンチの反響から思うこと⚠ネタバレ注意

2025/03/09 14:46
公式語りネタバレ
 ダ・◯ィンチにおいて、原作者である清水先生が、薪さんの青木への想いについて明確な言葉で「命より大事な愛」「一番好きな人」と語られました。これにより今まで推測だった部分が一気にリアルな色彩を帯びて、薪さんと青木の物語を息づかせたことを嬉しく、一層秘密に惹かれています。

 その一方で、対談のネタ元となる漫画のシーンで、薪さんが「鈴木も(自分に対して)そう思っていたのか」と、亡き友人を思い浮かべた点にまで解釈が拡大し、先生の語られた「薪さんから青木への想い」をそのまま鈴木に当てはめる反響があることに少なからず違和感を覚えたため、自分の思うところをしたためさせていただきます。

 正直私は、青木とは違う人であり、十年愛しあう恋人もいる鈴木に、先生が語られた薪さんの青木に対する「一番愛する人」の言葉を、そのまま当てはめるのはさすがに苦しいと思いました。
 なぜなら薪さんが向ける青木への想いは「外科室」エピソードでも表されていたように男女のものと変わらない恋情として表されているからです。
 先生はこの部分を対談で言語化はしないまでも、薪さんがあの「外科室」シーンを思い浮かべながら「お前が見ろ」と叫んでいる姿を作中に明記しています。

 薪さんが自分から青木への「命より大事な」想いの一片を、鈴木から自分への想いと繋げたのも事実ですが、中身は似て異なるものだと思います。
 こと切れた滝沢の頭を撃つ際薪さんは鈴木を思い浮かべてますが、当然滝沢と鈴木、それぞれへの想いや両者との関係性が全く違うのと同様です。

 作中の薪さんと鈴木の描写はあまり多くないですが、先生は鈴木の薪さんへの想いを、雪子さんを愛する気持ちと共存できる「友情」として描かれているのではないかと…… 友情は恋情より劣るものではないという大前提で、私は思うのです。

 例えて言うと、私は薪さんと鈴木の友情は、私は以下福永武彦氏の不朽の某小説作品の登場人物が織りなす「イデア」に似たものではないかと。
 何年か前にポストしましたが、それは以下のようなものです。

しかし僕は今でも、十代の終りごろに人の経験する友情、殆ど異性への愛と同じ情熱と苦悩とが、プラトニックであるだけに一層純粋な観念として体験される友情に、深い意義を覚えている。愛というものはすべてエゴの働きだが、このような友情は無償の行為というに等しい。この殆ど無意味とも思われる愛、相手が同性であるだけに一種の疚しさと心苦しさとを感じ、その愛の充足がどのようになされるのか、それさえもさだかではないような愛の中で、人は自分の魂の位置を測定する。
— 福永武彦「友情の中の愛」


 つまり、薪さんは鈴木と、雪子さんへの愛情とは全くぶつからない「無償の友情」を通わせていたのでないでしょうか。疚しさや心苦しさも込みで、若さゆえの様々な葛藤や希望を共有しながら成長し、薪さんの生き方や、第九という組織をともに築き上げてきた。
 先生は件の対談ではそこに言及してないですが、メロディ4月号特別編では触れられていると思います。

 私は、鈴木という人格者が、雪子さんを愛す傍らで、薪さんと簡単に順序がつくような同列の気持ちを向けていたとは思えないんです。
 あの時、薪さんを守るため「無償の行為」に走らせた鈴木の「友情」の尊さを大切に思っているからこそ、そう思っています。

 一方で、青木の薪さんへの想いは上記で言う「愛のエゴ」に近いと思います。
 鈴木と青木をよく知る雪子から「手繰り寄せたその手を今度は私の時のように離さないと誓えるの?」と尋ねられると、青木は即座にこう答えています。「あの人が今まで何を考えて、何に苦しんでいたのかわからないから、知りたい。薪さんの口から直接ききたい」と。
 自分のしたいことを強い気持ちで必死に伝え、だからこそ雪子の心を動かしたのだとも思います。
 
 そして現場に辿り着いた時、薪さんから拳銃を向けられ発砲されても、命がけで飛び込んでいく。
 「僕を撃て!」という薪さんの懇願もそっちのけで「好きです」「ご自分を許してあげてほしい」と、自分の思いだけを伝えるのに必死で。

 この一連の青木の描写は、先生が語られた、薪さんから青木への「命より大切な愛」は、原作11〜12巻で青木からのアンサーとして【両想い】として描かれている充足感を感じてしまいます。

 鈴木の「無償の友情」もまた、別次元で薪さんと双方向で、鈴木の中で雪子との両想いの愛情と対立することなく共存していてほしい。

 だからこそ私は秘密の深みや立体感が好きで、いろんな「一番」に守られている薪さんのことが、愛しく思えるのです。

※本見解はあくまで公式に関する私見で、二次創作を楽しむ各自の解釈に言及するものではありません

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