vol.4 劇薬ペアリング
濃密な沈黙のなかで、画面越しに向き合う二人。
“今から薪さんの体の中を、俺と同じ甘さと熱で満たしてください”
その言葉だけで、薪の血流は甘やかな戦慄となって全身を巡りはじめる。
画面の中の青木は、まるでお預けの解除を待つ大型犬のように、情熱的な飢餓感を同居させた瞳で、じっとこちらを凝視していた。
「……薪さん。開けないんですか?」
促すような青木の低い声が、静まり返った薪の部屋に響く。
「うるさい……急かすな」
薪は、忌々しげな独り言を吐き捨て、うらはらな期待に震える指先で、漆黒の化粧箱の蓋を開ける。
整然と並ぶ琥珀色の粒。薪はそのひとつを、壊れ物を扱うようにそっと指先で挟んだ。
「見てください、薪さん。……俺も、今、同じのを」
青木も一粒を指で摘んで、カメラに寄せて見せる。
レンズを通した遠近感が狂い、液晶の表面で二人の指先が吸い寄せられるように重なった。
「……っ」
それは、現実には決して触れ合えない二人の、指先が溶け合うような「接触」の擬似体験。
薪の目に映るのは、自分を狂わせる濃厚な媚薬の一粒だ。
薄氷を履むような背徳感を味わいながら、たった一粒にみえる毒を、二人で分かち合う。
画面越しの指先が重なったその一点から、見えない電流のような熱が薪の指を伝って、脊髄を駆け抜けていく。
「……薪さん。どうぞ一緒に」
青木の上擦る声が、薪の逃げ道を断った。
誘われるまま、熱っぽい吐息を零して、薪の唇が薄く開く。
綺麗なかたちの唇の間に、ショコラが滑り込む。
青木の視線が自分の口元を執拗に追いかけ、咀嚼の微かな動きさえ逃さず観測しているのがわかる。
その視線の熱そのものが、まるで指先で直接粘膜を撫でられているような錯覚で、薪を陥れるのだ。
パキ、と繊細なチョコの殻が、奥歯で砕ける。
刹那、閉じ込められていた芳醇なウイスキーの奔流が、一気に薪の口内へ溢れ出した。
「ん……ぁ……」
予想していたはずなのに、それを遥かに超えるアルコールの熱に浸食されていく。
薪の喉が、琥珀色の液体を嚥下するために小さく、艶かしく波打つ。
それをじっくり見届けながら、青木もまた一粒を噛み砕き、深い息を吐き出した。
「……あま、いですね。薪さんの体の中にも今、俺と同じ甘い熱が流れてますか」
青木の掠れた声が、スピーカー通して薪の耳奥を震わせる。
チョコの甘みと、アルコールの焦燥。
二人の胸を満たす“同じ香り”。そのせいで画面越しでは届かないはずの互いの体温が、感覚のなかに甦ってきて、心身を撫で回すのが心地良い。
「……はぁ……」
薪の喉が、熱を逃がそうと小さく喘ぐ。
画面の中では、自分の思い通りに薪を陥落させたはずの青木が、勝ち誇った余裕すら忘れて、その艶やかな姿を食い入るように見つめている。
その剥き出しの飢餓感に、薪はひどく甘美な愉悦を覚えた。
「あおき」
薪は、わざとらしく湿った唇をゆっくりと開き、自身の指先に残ったチョコの痕跡を、視線を逸らさずに舐め取ってみせる。
「……っ、薪さん……!」
スピーカー越しに、青木が息を呑む音が聞こえる。
薪は潤んだ瞳で青木を射抜いて、挑発的に口角を上げた。
「……お前は僕にこれを流し込むだけで、満足なのか?」
薪はウイスキーのせいで少し掠れた、それでいて底知れぬ色香を孕んだ声で挑発する。
「ほら、もっと……チョコ を、僕にするように、隅々まで舐めてみろ。いつもみたいに、イかせるつもりで」
“今から薪さんの体の中を、俺と同じ甘さと熱で満たしてください”
その言葉だけで、薪の血流は甘やかな戦慄となって全身を巡りはじめる。
画面の中の青木は、まるでお預けの解除を待つ大型犬のように、情熱的な飢餓感を同居させた瞳で、じっとこちらを凝視していた。
「……薪さん。開けないんですか?」
促すような青木の低い声が、静まり返った薪の部屋に響く。
「うるさい……急かすな」
薪は、忌々しげな独り言を吐き捨て、うらはらな期待に震える指先で、漆黒の化粧箱の蓋を開ける。
整然と並ぶ琥珀色の粒。薪はそのひとつを、壊れ物を扱うようにそっと指先で挟んだ。
「見てください、薪さん。……俺も、今、同じのを」
青木も一粒を指で摘んで、カメラに寄せて見せる。
レンズを通した遠近感が狂い、液晶の表面で二人の指先が吸い寄せられるように重なった。
「……っ」
それは、現実には決して触れ合えない二人の、指先が溶け合うような「接触」の擬似体験。
薪の目に映るのは、自分を狂わせる濃厚な媚薬の一粒だ。
薄氷を履むような背徳感を味わいながら、たった一粒にみえる毒を、二人で分かち合う。
画面越しの指先が重なったその一点から、見えない電流のような熱が薪の指を伝って、脊髄を駆け抜けていく。
「……薪さん。どうぞ一緒に」
青木の上擦る声が、薪の逃げ道を断った。
誘われるまま、熱っぽい吐息を零して、薪の唇が薄く開く。
綺麗なかたちの唇の間に、ショコラが滑り込む。
青木の視線が自分の口元を執拗に追いかけ、咀嚼の微かな動きさえ逃さず観測しているのがわかる。
その視線の熱そのものが、まるで指先で直接粘膜を撫でられているような錯覚で、薪を陥れるのだ。
パキ、と繊細なチョコの殻が、奥歯で砕ける。
刹那、閉じ込められていた芳醇なウイスキーの奔流が、一気に薪の口内へ溢れ出した。
「ん……ぁ……」
予想していたはずなのに、それを遥かに超えるアルコールの熱に浸食されていく。
薪の喉が、琥珀色の液体を嚥下するために小さく、艶かしく波打つ。
それをじっくり見届けながら、青木もまた一粒を噛み砕き、深い息を吐き出した。
「……あま、いですね。薪さんの体の中にも今、俺と同じ甘い熱が流れてますか」
青木の掠れた声が、スピーカー通して薪の耳奥を震わせる。
チョコの甘みと、アルコールの焦燥。
二人の胸を満たす“同じ香り”。そのせいで画面越しでは届かないはずの互いの体温が、感覚のなかに甦ってきて、心身を撫で回すのが心地良い。
「……はぁ……」
薪の喉が、熱を逃がそうと小さく喘ぐ。
画面の中では、自分の思い通りに薪を陥落させたはずの青木が、勝ち誇った余裕すら忘れて、その艶やかな姿を食い入るように見つめている。
その剥き出しの飢餓感に、薪はひどく甘美な愉悦を覚えた。
「あおき」
薪は、わざとらしく湿った唇をゆっくりと開き、自身の指先に残ったチョコの痕跡を、視線を逸らさずに舐め取ってみせる。
「……っ、薪さん……!」
スピーカー越しに、青木が息を呑む音が聞こえる。
薪は潤んだ瞳で青木を射抜いて、挑発的に口角を上げた。
「……お前は僕にこれを流し込むだけで、満足なのか?」
薪はウイスキーのせいで少し掠れた、それでいて底知れぬ色香を孕んだ声で挑発する。
「ほら、もっと……