俺とあなたの5.5日間
2- A- 1
「なんかお前どんよりしてないか」
「どうせ薪さんと離れるのが嫌すぎて、落ち込んで引きずってんだろ」
「まだ先のことなんだ。気を取り直せよ」
イジりともねぎらいともつかない言葉がメンバーから飛んでくるのは、俺が見るからに拗らせオーラを発してるせいだろう。
薪さんと離れるのが嫌すぎて、薪さんとの第九 での日常を手離したくなくて、ただ泣くだけだった二日前。
今の俺はその時とは180°変わり、そんな無邪気さとは対極の位置にいる。
憧れでしかなかったあの人を、手離すどころか、手に入れたがっているのだから――
「おはようございます、遅くなってすいません」
モニターを立ち上げた捜査席で先に装置を動かしていた山本さんが、横に座った俺をちらりと見て目を見張る。
「お早うございます。おやまあこれはまた……」
二度見ついでに、体ごとこっちに向けた山本さんが訝しげに訊ねてきた。
「どうされたんです?新卒二年目の24歳とは思えない年季の入った煩悩まみれの顔をしていますねぇ」
からかい半分の先輩たちとは違い、この人の言葉は痛いところに的確に突き刺さる。
ギクリと固まり、隣席を見おろすが目を合わせることができない俺。
一昨晩から俺が積み重ねてきた罪状を見透かされ言い当てられたような後ろめたさに身が竦んだのだ。
そうでなくても、今日の俺は駄目駄目だった。
寝不足と欲求不満が鬱積したフケ顔を揶揄られる一方で、思春期並の高感度センサーが薪さんを追跡しまくり、過剰なエネルギーを下半身に容赦なく送り込んでくる。
進めれば進めるほど証拠不足が明らかになっていく捜査に頭を抱える俺たちが居る捜査席は、室長席とは対角の場所のはずなのに。
薪さんのため息が聴こえる。
時には甘くほどけ、焦れったい熱に浮かされ官能的にこぼれて落ちる。
そして昼過ぎには、現れたSPや周囲にあからさまに苛つき始めた薪さんが「つまみ出せ」だなんて理不尽な命令をぶつけてくるのが可愛くて、俺は震えが止まらなかった。
せめて捜査が進展すれば気も紛れるのだが、それさえ堂々巡りで救いようがない。
集中できてないわけじゃない。
飢えた獣の五感が薪さんだけを捉えて離さないだけだ。
口元に添えた拳の下の唇からブツブツ零れる呟き。
視界の端で動く愛らしい横顔。
後頭部の丸みやサラサラの髪。
動作や呼吸に乗って漂ういい匂いに、昨夜包み込んで眠りながら揉みしだいたしなやかな身体の感触やキスの味が甦って、俺の全身に熱い血を巡らせる。
「あのぅ……午後の捜査の生産性、今のところゼロじゃないですかね」
「……そうですね。休憩でも取りましょうか」
俺は大きく息を吐いて立ち上がり、残り少なくなっていた共用のコーヒーメーカーを洗ってきてセットし直す。
「出来上がったら、先に飲んどいてください」
「と言いますと? どこかへ行かれるんでしょうか?」
「ええ、ゴフン……ちょっと、トイレへ……」
不自然な咳払いをしながら山本さんを残してその場を離れる俺。
職場のトイレを利用するなんて不謹慎だが、この先落ち着いて業務を進める為にはここで抜く しかない、とハラをくくったのだ。
トイレのドアを開けると幸い誰もいない。
今のうちに、と一直線個室に入ろうとした瞬間、タッチの差で小柄な影が俺を追い抜き、一緒に入ってきてドアと鍵が閉まる。
その影 はちょうど27センチくらい俺より背が低い――
「ま、薪さ……」
「動くな、静かにしろ」
「……っ、何を……」
ドアに凭れた俺のベルトを薪さんの手が器用に外し、ファスナーを下ろしたズボンを下着ごとずり下げる。
勢い余って飛び出した俺の竿がその綺麗な手に掴まれる絶景。直ぐ様それを隠すように小さな頭が股間に埋ずもれる。
「……っ」
先走りに塗れた先端が熱く滑らかな口内に包みこまれる極上のきもちよさに、俺は戦慄して震え上がった。
「……うッ……はぁ……」
真摯で切実な感情が伝わる舌の動きが、オレの悦いところを丁寧に這うのが悦すぎて。
「だめで……す、えすぴーが……」
「ん……ふ」
チュパ、っと濡れた唇が離れ、鈴口に薪さんの声が吹きかかれば、意識が飛びそうになる。
「気にするな。入ってくるなと言いつけてある」
「で、も……ほかのどなたかが……」
「そんなに長く持たないだろ、早くいけ」
「ぅアッ……!」
小さな唇がまたオレに吸い付き、薄く繊細な舌が凶悪なカタチを美味しそうに撫で回しながら、喉奥まで咥え込んでくる。
気持ちよくて、美しくて、まるで自分の淫らな願望を詰め込んだ夢の中にいるような心地のまま、身体の奥底から急激に噴き出した花火が、打ち上がって盛大に爆ぜる。
当然、愛しく尊いあの人の口内で、だ。
「ん……ゴク……ゴクン……けほっ」
真っ白な頭の中。
柔らかい唇が先っぽの精液まで丁寧に吸いつくし、可愛らしい舌がその周りを舐め取りながら離れていく。
「あの……これを……」
離れた手に、俺は下がったままのズボンから手探りで取り出ししたハンカチを握らせた。
「あなたも……ぜんぶ拭かないと……」
薪さんはぷいっと顔を逸らしてハンカチを握りしめ、俺の手を振り払って個室から出ていってしまう。
何も考えられないし、しばらく動けそうにない。
どのみち、こんな状況で一緒にも出られない。
茫然自失のさなかで、俺はただ、薪さんを汚したオレの痕跡が誰にも気づかれないことを願った。
情欲に塗れた薪さんなんて、片鱗さえ誰にも見せたくない。
絶対に俺だけの“秘密”にしたかったから。
「なんかお前どんよりしてないか」
「どうせ薪さんと離れるのが嫌すぎて、落ち込んで引きずってんだろ」
「まだ先のことなんだ。気を取り直せよ」
イジりともねぎらいともつかない言葉がメンバーから飛んでくるのは、俺が見るからに拗らせオーラを発してるせいだろう。
薪さんと離れるのが嫌すぎて、薪さんとの
今の俺はその時とは180°変わり、そんな無邪気さとは対極の位置にいる。
憧れでしかなかったあの人を、手離すどころか、手に入れたがっているのだから――
「おはようございます、遅くなってすいません」
モニターを立ち上げた捜査席で先に装置を動かしていた山本さんが、横に座った俺をちらりと見て目を見張る。
「お早うございます。おやまあこれはまた……」
二度見ついでに、体ごとこっちに向けた山本さんが訝しげに訊ねてきた。
「どうされたんです?新卒二年目の24歳とは思えない年季の入った煩悩まみれの顔をしていますねぇ」
からかい半分の先輩たちとは違い、この人の言葉は痛いところに的確に突き刺さる。
ギクリと固まり、隣席を見おろすが目を合わせることができない俺。
一昨晩から俺が積み重ねてきた罪状を見透かされ言い当てられたような後ろめたさに身が竦んだのだ。
そうでなくても、今日の俺は駄目駄目だった。
寝不足と欲求不満が鬱積したフケ顔を揶揄られる一方で、思春期並の高感度センサーが薪さんを追跡しまくり、過剰なエネルギーを下半身に容赦なく送り込んでくる。
進めれば進めるほど証拠不足が明らかになっていく捜査に頭を抱える俺たちが居る捜査席は、室長席とは対角の場所のはずなのに。
薪さんのため息が聴こえる。
時には甘くほどけ、焦れったい熱に浮かされ官能的にこぼれて落ちる。
そして昼過ぎには、現れたSPや周囲にあからさまに苛つき始めた薪さんが「つまみ出せ」だなんて理不尽な命令をぶつけてくるのが可愛くて、俺は震えが止まらなかった。
せめて捜査が進展すれば気も紛れるのだが、それさえ堂々巡りで救いようがない。
集中できてないわけじゃない。
飢えた獣の五感が薪さんだけを捉えて離さないだけだ。
口元に添えた拳の下の唇からブツブツ零れる呟き。
視界の端で動く愛らしい横顔。
後頭部の丸みやサラサラの髪。
動作や呼吸に乗って漂ういい匂いに、昨夜包み込んで眠りながら揉みしだいたしなやかな身体の感触やキスの味が甦って、俺の全身に熱い血を巡らせる。
「あのぅ……午後の捜査の生産性、今のところゼロじゃないですかね」
「……そうですね。休憩でも取りましょうか」
俺は大きく息を吐いて立ち上がり、残り少なくなっていた共用のコーヒーメーカーを洗ってきてセットし直す。
「出来上がったら、先に飲んどいてください」
「と言いますと? どこかへ行かれるんでしょうか?」
「ええ、ゴフン……ちょっと、トイレへ……」
不自然な咳払いをしながら山本さんを残してその場を離れる俺。
職場のトイレを利用するなんて不謹慎だが、この先落ち着いて業務を進める為にはここで
トイレのドアを開けると幸い誰もいない。
今のうちに、と一直線個室に入ろうとした瞬間、タッチの差で小柄な影が俺を追い抜き、一緒に入ってきてドアと鍵が閉まる。
「ま、薪さ……」
「動くな、静かにしろ」
「……っ、何を……」
ドアに凭れた俺のベルトを薪さんの手が器用に外し、ファスナーを下ろしたズボンを下着ごとずり下げる。
勢い余って飛び出した俺の竿がその綺麗な手に掴まれる絶景。直ぐ様それを隠すように小さな頭が股間に埋ずもれる。
「……っ」
先走りに塗れた先端が熱く滑らかな口内に包みこまれる極上のきもちよさに、俺は戦慄して震え上がった。
「……うッ……はぁ……」
真摯で切実な感情が伝わる舌の動きが、オレの悦いところを丁寧に這うのが悦すぎて。
「だめで……す、えすぴーが……」
「ん……ふ」
チュパ、っと濡れた唇が離れ、鈴口に薪さんの声が吹きかかれば、意識が飛びそうになる。
「気にするな。入ってくるなと言いつけてある」
「で、も……ほかのどなたかが……」
「そんなに長く持たないだろ、早くいけ」
「ぅアッ……!」
小さな唇がまたオレに吸い付き、薄く繊細な舌が凶悪なカタチを美味しそうに撫で回しながら、喉奥まで咥え込んでくる。
気持ちよくて、美しくて、まるで自分の淫らな願望を詰め込んだ夢の中にいるような心地のまま、身体の奥底から急激に噴き出した花火が、打ち上がって盛大に爆ぜる。
当然、愛しく尊いあの人の口内で、だ。
「ん……ゴク……ゴクン……けほっ」
真っ白な頭の中。
柔らかい唇が先っぽの精液まで丁寧に吸いつくし、可愛らしい舌がその周りを舐め取りながら離れていく。
「あの……これを……」
離れた手に、俺は下がったままのズボンから手探りで取り出ししたハンカチを握らせた。
「あなたも……ぜんぶ拭かないと……」
薪さんはぷいっと顔を逸らしてハンカチを握りしめ、俺の手を振り払って個室から出ていってしまう。
何も考えられないし、しばらく動けそうにない。
どのみち、こんな状況で一緒にも出られない。
茫然自失のさなかで、俺はただ、薪さんを汚したオレの痕跡が誰にも気づかれないことを願った。
情欲に塗れた薪さんなんて、片鱗さえ誰にも見せたくない。
絶対に俺だけの“秘密”にしたかったから。