よる博多→まよなか東京

 浴室から出た後の二人は、もはや言葉を必要としなかった。
 互いの身体をタオルで拭うのさえもどかしく、髪から滴る水滴がシーツに染みるのも構わずに、ベッドへと縺れ込んでいる。
 重なり合う唇から漏れる吐息が、火照った肌と競り合うように熱く絡み合う――

​「……っ、お前……アレを……」

 青木の肩に指を食い込ませながら、薪が掠れた声を押し出した。

「え……?」

「……用意、したんだろう……リュックの中だ」

​ 一瞬、青木の動きが止まった。そして、頭を抱えてがっくりとシーツに崩れ落ちる。

「……やっぱり、ご存じだったんですか」

「お前が、あまりに挙動不審だったから……あれじゃ捜査員として失格だぞ」

​ 切実な熱気の籠る室内に、ふと微かな苦笑が混じり、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。が、それは次に訪れる嵐の前触れに過ぎない。

 黙ってベッドを離れた青木は、リュックから“それ”を手に取り、迷いない瞳で真っ直ぐに戻ってくる。その姿はもう、ただひとりのつがいを欲して止まない雄と成り果てていた。

​「……あ……っ」

「もう……すぐにでも、挿れたいです」

​ ゼリーの冷たさが薪の熱を帯びた肌に触れる。解された場所を再び青木の指が深く、執拗に蹂躙し始めると、連動するように薪の屹立が反応を示して切ない蜜を滲ませた。

「薪さんのここも、こんなになって……。これって、挿れたいとかじゃ……ないですよね」

「……っ」
 青木の意地悪な問いに、薪は力なく首を横に振った。
 視界は涙に滲み、思考のすべては青木の指が与える刺激に塗りつぶされていく。

​「……じゃあ、俺がもっと……こうして可愛がってもいいですね」

​ 否定する余裕など、薪には欠片も残されていなかった。後ろを指で掻き回されたまま、熱を帯びた前を青木の口内に直接奪われる。対極にある二種の刺激が、薪の脊髄をこれ以上なく痺れさせた。

​「ダメ……だっ、無理っ……あ、あおき……っ!!」

​ 抗う術もなく薪はシーツを掴んで仰け反り、絶頂の白光の中でベッドに溶けるように崩れる。
 青木は一度、落ち着かせるために身体を離そうとした。だが、その腕と肩を、薪の手が縋りつくようにして離さない。

​「……待て。逃げるな」

​ まるで欠けた身体の一部を取り戻そうとするかのように、薪はふらふらと、捩じ登るようにして青木を跨いだ。
 上半身を起こした青木と、真正面から向き合う座位の形。薪の真っ白な胸板が、青木の視線の先で激しく上下している。

​「だいじょうぶ……お前の顔みてたら……すぐ……また……できるから」

​ 潤んだ瞳で青木の首に腕を回し、唇を重ねる。
 青木の口内で分かち合う自分自身の味に震えながら、薪は貪欲に舌を絡めた。

​(くっ……この人は、自分がどれほど無自覚で、恐ろしい誘惑をしているのか分かっているのか……!!)

​ 青木の理性が、完全に音を立てて砕け散る。その必死で、あまりに艶やかな誘いに対し、もう一秒たりとも堪えることなんてできなかった。

​「……挿れますよ、薪さん」

​ 薪の細い腰を大きな両手でしっかりと掴み、自身の怒張を押し当てる。そして、宥めるように優しく揺すりながら、じりじりと、その熱い身体の奥へと沈めていった。

​「……んぅ……っ、は……ぁっ!」

​「……だめだ、……最高すぎて、ほんとに、死ぬ……っ」

​ 深く、深く繋がっていく凄まじい快感と衝撃に二人の声が重なり合い、夜の静寂を激しく震わせる。

​「薪さん、顔見せて……」

​「も……いや、だ……っ……見る、な……っ」

​ くしゃくしゃになった顔を青木の肩に埋める薪を、青木は溢れだす愛おしさで包み込んだ。

​「あなたの顔を見て、落ち着きたいんです……お願いです」
​ 蕩けた顔を優しく引き寄せ、幾度も角度を変えて深く湿ったキスを落とす。繋がった場所からダイレクトに伝わる薪の震えが、青木の心拍を限界まで跳ね上げた。

​「っ……危な……っ、今、秒殺でいくとこだった……」

​「……お前……下品だぞ……」

​ 薪が恥ずかしさと熱に浮かされた顔で、青木の胸を弱々しい拳で叩く。

​「すみません」

​ 青木は真っ赤な顔で笑いながら、それでも結んだ身体を離そうとはしない。薪の背中を愛おしそうになぞりながら、少しずつ、奥の熱を抉りとるような深い抽送を刻み始めた。
7/8ページ