夢現のよる

 血漿が効いて、三好雪子が人と話せるまで回復するには、半月の期間を要した。
 今はもう街にクリスマスのイルミネーションが華やぐ頃だ。

「なぁんだ……天国じゃないのね」

「……そんなにガッカリした顔しないでください」

 はじめて目覚めた雪子に、青木は苦笑する。

「してないわよ……こんな早くに会いにいったら、叱られちゃうわよ」

 誰に?とも訊かずに、青木は頷いた。

「三好先生って、鈴木さんの彼女さん……なんですよね」

 まだ朦朧としている雪子は、頷く代わりに目を閉じる。

「気づくのが遅れて失礼しました。MRIの画と髪型が違っててわからなくて……あ、でも今の方が素敵だと思いますよ」

 そこまで話したところで、雪子の安らかな寝息が聞こえてくる。
 最後まで話を続けた青木の「ヘルメットみたいでかっこよくて」という部分が聞かれなかったのは、お互いに幸いだったといえる。


 その数時間後。

 再び雪子が目を開けた時には、今度は薪が見舞いに来ていた。

「私……ハダカに自信あったんだけどな……」

「はぁ、何の話ですか」

 ホントは青木の話だとわかっているのだが、しらばっくれて薪が訊く。

「ガン無視されたのがどーしても納得いかなくて、さっき本人に訊いてみたのよ。どーせアンタのは若い子にしか反応しないんでしょう?って。そしたらあのコ、なんて答えたと思う?」

「……」

 薪はあからさまに困った顔をしつつも、雪子の話に聞き入ってしまう。困惑も大きいが、内容自体は非常に気になって尚更困るのだ。

「“ていうか俺、薪さんにしかそういう反応できなくなってるんです”だって。ソレどういうこと?つよし君、アナタたちデキてんの?」

 平静を装う薪の顔から血の気が引いていく。
 焦って言い訳を探す薪の動揺ぶりを愉しむように噛み締めながら雪子が微笑んだ。

「なーんか、腹立つのを飛び越えて萌えちゃったわ。好みの男同士が想いあって乳繰り合うって、想像以上に美味しいっていうか……うん、BLの推しカプ的な新境地かも♡」と。
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