夢現のよる
そして、なんとか仕事を終えた夜。
「大丈夫ですか? 先生」
滅菌室のドアが開いて背の高い男が駆け込んでくる。
「体温が下がっているとモニター係が……」
直後に全裸の後ろ姿を見られた。
まあ……別に見られて減るもんじゃなし、こんなオバさんの体見たって若いこのコは嬉しくないだろう。
でも、落ち込んで見えたのは、そういうことじゃない。
「すいません、見てしまいました……出血斑」
ハッキリそう言われて、女のプライドが揺らぐ。
裸をガン無視で出血斑しか見てないとか、いくら何でも酷すぎる。
「この腕の内側……」
「触らないで!」
失礼な新人の手を振り払い、ロッカーへと向かう雪子が次の瞬間面食らう。
「ちょ、っと……本当に感染 るわよ!」
振り返り突き放そうとした手を掴まれて、いきなり壁ドンされたのだから。
「感染 してください」
「……え……?」
手首を掴む力と、接近した真摯な男の顔。名前も覚えてない新人に、はじめて鼓動が高鳴る。
「……なんて、ムリか……」
「……そりゃそうでしょ」
壁ドンで人をドキリとさせた意外とハンサムなその大男は、急に情けない顔で頭を抱えて床に膝をつき「薪さんを置いて俺が死ぬのはダメだ絶対殺される」とか、わけのわからないことをブツブツ呟いている。
「だいたい、あなたが感染 って何になるの?代わりに私が治るわけでもないんだし……」
雪子にはこのぶっとんだ新人が、何をしたいか全くわからない。
死の恐怖と戦う当人の気持ちなんてわかるわけないし助けることもできないのに、何をそんなに必死になって食い込んでくるのか……
「私が可哀想だなんて、余計なお世話だからね。これはしたくてしてることなの!出血斑が痛々しいったって服で隠せるレベルだし、爪だってネイルでもすれば……」
「……ネイル!?」
膝を折って頭を抱えていた男が、すっくと立ち上がる。
「そうだ……それだ!!さすが三好先生、ありがとうございます!!」
全く理解が追いつかない。が、高身長でスマートな男は、やはり雪子の好みなのだ。
輝いた顔でがっちり二の腕を掴まれて直視され、深々と頭を下げられれば、悪い気はしない。
「大丈夫ですか? 先生」
滅菌室のドアが開いて背の高い男が駆け込んでくる。
「体温が下がっているとモニター係が……」
直後に全裸の後ろ姿を見られた。
まあ……別に見られて減るもんじゃなし、こんなオバさんの体見たって若いこのコは嬉しくないだろう。
でも、落ち込んで見えたのは、そういうことじゃない。
「すいません、見てしまいました……出血斑」
ハッキリそう言われて、女のプライドが揺らぐ。
裸をガン無視で出血斑しか見てないとか、いくら何でも酷すぎる。
「この腕の内側……」
「触らないで!」
失礼な新人の手を振り払い、ロッカーへと向かう雪子が次の瞬間面食らう。
「ちょ、っと……本当に
振り返り突き放そうとした手を掴まれて、いきなり壁ドンされたのだから。
「
「……え……?」
手首を掴む力と、接近した真摯な男の顔。名前も覚えてない新人に、はじめて鼓動が高鳴る。
「……なんて、ムリか……」
「……そりゃそうでしょ」
壁ドンで人をドキリとさせた意外とハンサムなその大男は、急に情けない顔で頭を抱えて床に膝をつき「薪さんを置いて俺が死ぬのはダメだ絶対殺される」とか、わけのわからないことをブツブツ呟いている。
「だいたい、あなたが
雪子にはこのぶっとんだ新人が、何をしたいか全くわからない。
死の恐怖と戦う当人の気持ちなんてわかるわけないし助けることもできないのに、何をそんなに必死になって食い込んでくるのか……
「私が可哀想だなんて、余計なお世話だからね。これはしたくてしてることなの!出血斑が痛々しいったって服で隠せるレベルだし、爪だってネイルでもすれば……」
「……ネイル!?」
膝を折って頭を抱えていた男が、すっくと立ち上がる。
「そうだ……それだ!!さすが三好先生、ありがとうございます!!」
全く理解が追いつかない。が、高身長でスマートな男は、やはり雪子の好みなのだ。
輝いた顔でがっちり二の腕を掴まれて直視され、深々と頭を下げられれば、悪い気はしない。