俺とあなたの5.5日間
5 - A
ヤバい。
薪さんが視え過ぎて、興奮が尋常じゃない昼間のセックス。
元々お綺麗な薪さんの、欲情した瞳の色、上気した肌、尖った乳首の淡桃色などよ視覚的効果の洪水に、俺の心身は極限まで掻き立てられ溺れていく。
「……きれい……です……すごく……」
「っ……」
「きれい」という言葉は訝しげな視線で跳ね返すくせに、愛撫には過敏すぎる反応で悦がる。
陶器みたいに滑らかな性器から滴る蜜の艶めかしさに垂涎しながらも、俺はあえてそこを避けて太腿に舌を這わせた。が、濡れそぼる後ろの蕾が誘うようにひくつくのが気になって、怒張した股間は限界寸前だった。
「は……やくっ……あっ……」
「だめですよ……スローにしないと……」
「……さわ……るのも? だめなのか?」
視覚的刺激に唆られてがっつき過ぎないよう、なるたけソフトに遠回りし続けてるのに、そんな潤んだ上目遣いで惹き寄せてくるのは反則以外の何ものでもない!
「さ、さわってますよ、いろいろ……」
「そうじゃない……ここ……だ……っ」
薪さんが爆ぜそうな屹立に俺の手を持っていく。
堪え性の無い俺の指が先端をくるりとなぞると、しなやかな全身が仰け反って震えあがった。
「……ぁあ……ん……むり……だっ、もっ……」
なんて可愛いらしい声と反応。
こんなに欲しがらせて、焦らしまくって……これじゃ優しくするつもりがむしろ虐げてるんじゃないか、と本気の葛藤に苛まれる俺。
「薪さん……じゃあ、どうして欲しいんですか?」
「……おく……つい……て」
脚の間から顔を上げた俺に、薪さんはどストレートな慾望を口走りながら抱きついてくる。
「ぼくを……めちゃくちゃに……しろっ」
耳元を擽る熱っぽい指令。
優しさとは、なんなのか。
薪さんを大事にするには、どうすればいい?
とろとろでぐちゃぐちゃの薪さんの熱い身体を貫きながら「幸せですか?」と訊ねると、頷きながら艶めかしく身体を揺らして「あッ……ぅうん」と嬌声みたいな肯定が返ってくる。
薪さんを幸せにしたいのに、いつも俺の方がぶっちぎりで幸せを極めてしまう。
こんなんじゃダメだと思うのに、今はこんなふうにしかできない。
「俺ちょっとだけ家戻りますね。私服とか週明けの仕事の着替え取ってすぐ戻るんで……」
「ん……」
「車、お借りします」
なんなら昨夜よりディープに交わってしまい、ようやく落ち着いた午後3時。
寝室を掃除して整え直し、二回目の洗濯機を回してシャツとスラックスに着替えた俺は、二人でいちゃいちゃとシャワーを浴びた余韻に浸りながらソファで涼む薪さんを見届けながら、キーを借りて部屋を出ようとする。
「……あ! ダメだ。待てっ」
不意に薪さんがソファから立ちあがり、ふらつく足で飛んでくるから、俺は驚いて抱きとめる。
「保険が……」
「え?」
そして、その数分後には結局……薪さんに車の運転をさせていた。
彼氏らしく優しく大事にしたいのに、世話をかけっ放しな自分がもどかしくて、落ち込む。
俺が足りないせいだ。
薪さんの私用車の“自動車保険の年齢条件”が2ランクも違うから。
薪さんはすでに35歳だし、年齢条件は更新前だとしても26歳補償だろうから、どう足掻いても無理だ、乗れない。
「何を落ち込んでる?」
俺の“年齢条件”の話を聞いて、薪さんは目をパチクリさせて、それから苦笑した。
「2ランクも違うとは……気が遠くなるな。でも年齢条件は赤の他人には適用されない。そうじゃなく、この車は僕しか補償されないんだ。他人が勝手に乗れば補償どころか負担が倍増するしくみで……」
「…………」
「……何青ざめてる? 限定は本当だが補償の話は冗談だ」
いやいや、薪さんが言うとシャレにならないから怖い。顔を引き攣らせたままの俺を横目に、運転する車は俺の自宅に到着する。
俺は部屋にすっ飛んで行って、スーツケースに思いつくだけの必需品を詰め込み薪さんの車へと戻った。
薪さんのあの自宅で一人きりの夜を過ごさせることなんてもうできない。本能的にそう感じている俺は、すっかり自分の生活の軸足を薪さん宅に移す気でいた。
薪さんに対する気持ちに明確な“名前”がついてから、まだたったの5.5日。
それでも俺の世界は一変した。
薪さんと離れることを考えられなくなったのだ。
たとえ何年か後に第九メンバーが全国に散ったとしても、俺は仕事以外の時間を共に過ごしに、薪さんの元へ必ず帰るだろう。
「あれ、お待たせしちゃいました?」
車を出て待っている薪さんが仁王立ちでこっちを見ているから、俺は思わず低姿勢になる。
そんな俺には目もくれず、後にしたワンルームマンションを凝視しながら、拳を当てた薪さんの口元が、何やらブツブツと呟いている。
「向こうの狙いが僕だとすれば……付き合っているお前とその周辺が危なくなるのは確実だ。この際お前と一緒に棲んだ方が好都合かもしれないな」
「え……っと、はい。俺もあなたと一緒にいたいです」
「よし、では早速守りを固めよう」
「はい、俺も全力で薪さんをお守りします」
浅はかな俺はこの時何一つ噛み合ってなく、薪さんが何を頭に思い浮かべていたのか知らないばかりか想像さえついていなかった。
これは俺や俺の家族にとって、とてつもなく重大な判断だったのだ。
この時俺の荷物を積みこみ二人で乗り込んだ薪さんの私用車は、契約条件を変更し俺も運転できるようになったものの、翌月早々に爆破され木っ端微塵になる。
そしてさらにその翌月には、恵比寿の姉夫婦宅が何者かの襲撃を受けたのだ。
犯人は逃走し、警察関係者に負傷者を出したものの、4月以来薪さんが極秘(俺にも内緒!)の厳重警戒を続けていたことで、姉家族三人の尊い命が守られた。
という、薪さんの偉大さを俺が改めて思い知った重大事件は……また別の話としよう。
ヤバい。
薪さんが視え過ぎて、興奮が尋常じゃない昼間のセックス。
元々お綺麗な薪さんの、欲情した瞳の色、上気した肌、尖った乳首の淡桃色などよ視覚的効果の洪水に、俺の心身は極限まで掻き立てられ溺れていく。
「……きれい……です……すごく……」
「っ……」
「きれい」という言葉は訝しげな視線で跳ね返すくせに、愛撫には過敏すぎる反応で悦がる。
陶器みたいに滑らかな性器から滴る蜜の艶めかしさに垂涎しながらも、俺はあえてそこを避けて太腿に舌を這わせた。が、濡れそぼる後ろの蕾が誘うようにひくつくのが気になって、怒張した股間は限界寸前だった。
「は……やくっ……あっ……」
「だめですよ……スローにしないと……」
「……さわ……るのも? だめなのか?」
視覚的刺激に唆られてがっつき過ぎないよう、なるたけソフトに遠回りし続けてるのに、そんな潤んだ上目遣いで惹き寄せてくるのは反則以外の何ものでもない!
「さ、さわってますよ、いろいろ……」
「そうじゃない……ここ……だ……っ」
薪さんが爆ぜそうな屹立に俺の手を持っていく。
堪え性の無い俺の指が先端をくるりとなぞると、しなやかな全身が仰け反って震えあがった。
「……ぁあ……ん……むり……だっ、もっ……」
なんて可愛いらしい声と反応。
こんなに欲しがらせて、焦らしまくって……これじゃ優しくするつもりがむしろ虐げてるんじゃないか、と本気の葛藤に苛まれる俺。
「薪さん……じゃあ、どうして欲しいんですか?」
「……おく……つい……て」
脚の間から顔を上げた俺に、薪さんはどストレートな慾望を口走りながら抱きついてくる。
「ぼくを……めちゃくちゃに……しろっ」
耳元を擽る熱っぽい指令。
優しさとは、なんなのか。
薪さんを大事にするには、どうすればいい?
とろとろでぐちゃぐちゃの薪さんの熱い身体を貫きながら「幸せですか?」と訊ねると、頷きながら艶めかしく身体を揺らして「あッ……ぅうん」と嬌声みたいな肯定が返ってくる。
薪さんを幸せにしたいのに、いつも俺の方がぶっちぎりで幸せを極めてしまう。
こんなんじゃダメだと思うのに、今はこんなふうにしかできない。
「俺ちょっとだけ家戻りますね。私服とか週明けの仕事の着替え取ってすぐ戻るんで……」
「ん……」
「車、お借りします」
なんなら昨夜よりディープに交わってしまい、ようやく落ち着いた午後3時。
寝室を掃除して整え直し、二回目の洗濯機を回してシャツとスラックスに着替えた俺は、二人でいちゃいちゃとシャワーを浴びた余韻に浸りながらソファで涼む薪さんを見届けながら、キーを借りて部屋を出ようとする。
「……あ! ダメだ。待てっ」
不意に薪さんがソファから立ちあがり、ふらつく足で飛んでくるから、俺は驚いて抱きとめる。
「保険が……」
「え?」
そして、その数分後には結局……薪さんに車の運転をさせていた。
彼氏らしく優しく大事にしたいのに、世話をかけっ放しな自分がもどかしくて、落ち込む。
俺が足りないせいだ。
薪さんの私用車の“自動車保険の年齢条件”が2ランクも違うから。
薪さんはすでに35歳だし、年齢条件は更新前だとしても26歳補償だろうから、どう足掻いても無理だ、乗れない。
「何を落ち込んでる?」
俺の“年齢条件”の話を聞いて、薪さんは目をパチクリさせて、それから苦笑した。
「2ランクも違うとは……気が遠くなるな。でも年齢条件は赤の他人には適用されない。そうじゃなく、この車は僕しか補償されないんだ。他人が勝手に乗れば補償どころか負担が倍増するしくみで……」
「…………」
「……何青ざめてる? 限定は本当だが補償の話は冗談だ」
いやいや、薪さんが言うとシャレにならないから怖い。顔を引き攣らせたままの俺を横目に、運転する車は俺の自宅に到着する。
俺は部屋にすっ飛んで行って、スーツケースに思いつくだけの必需品を詰め込み薪さんの車へと戻った。
薪さんのあの自宅で一人きりの夜を過ごさせることなんてもうできない。本能的にそう感じている俺は、すっかり自分の生活の軸足を薪さん宅に移す気でいた。
薪さんに対する気持ちに明確な“名前”がついてから、まだたったの5.5日。
それでも俺の世界は一変した。
薪さんと離れることを考えられなくなったのだ。
たとえ何年か後に第九メンバーが全国に散ったとしても、俺は仕事以外の時間を共に過ごしに、薪さんの元へ必ず帰るだろう。
「あれ、お待たせしちゃいました?」
車を出て待っている薪さんが仁王立ちでこっちを見ているから、俺は思わず低姿勢になる。
そんな俺には目もくれず、後にしたワンルームマンションを凝視しながら、拳を当てた薪さんの口元が、何やらブツブツと呟いている。
「向こうの狙いが僕だとすれば……付き合っているお前とその周辺が危なくなるのは確実だ。この際お前と一緒に棲んだ方が好都合かもしれないな」
「え……っと、はい。俺もあなたと一緒にいたいです」
「よし、では早速守りを固めよう」
「はい、俺も全力で薪さんをお守りします」
浅はかな俺はこの時何一つ噛み合ってなく、薪さんが何を頭に思い浮かべていたのか知らないばかりか想像さえついていなかった。
これは俺や俺の家族にとって、とてつもなく重大な判断だったのだ。
この時俺の荷物を積みこみ二人で乗り込んだ薪さんの私用車は、契約条件を変更し俺も運転できるようになったものの、翌月早々に爆破され木っ端微塵になる。
そしてさらにその翌月には、恵比寿の姉夫婦宅が何者かの襲撃を受けたのだ。
犯人は逃走し、警察関係者に負傷者を出したものの、4月以来薪さんが極秘(俺にも内緒!)の厳重警戒を続けていたことで、姉家族三人の尊い命が守られた。
という、薪さんの偉大さを俺が改めて思い知った重大事件は……また別の話としよう。
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