俺とあなたの5.5日間

0.5-A R18

 あっ……

 薪さんのナカにオレが入ってる……?
 って、どうやって? てかキモチ良すぎてヤバい。一体どうなって……うぁ……っ!
 理性どころか全部がぶっ飛ぶほどの壮絶膨大な快感……


「……え……」

 開こうとした瞼の重みの感覚とともに、眠りから覚めたのだと悟る。
 卑猥な夢から脱け出てがっかりするオチかと思いきや……裸眼の視界に実物の薪さんをみとめた俺は激しく驚いて上体を起こす。
 上体しか起きなかったのは、下半身が動かせないからだ。

 なんてことなんだ……これは??

 滑らかな髪がさらさらと俺の内股を掠めて揺れている。
 ぼやけた視界でもその距離と感覚でまざまざと分かる。伏せた長い睫毛。通った鼻筋。そして形の良い唇と綺麗な指に包まれているのは……猛り狂って爆発寸前の、オ レ――!?

「まきさ……ダメです……ウッ……!!」

 ゴクンと薪さんの細い喉が鳴る。
 その小さな頭部を引き剥がそうとする俺の脳の指令も、下半身には全く届かず大爆発を起こしたのだ。

「あゎわ……ま、きさ……」

 味わったことのない至高の快感にうち震え脈動とともに放出される俺の熱い精液は、たちまち繊細な唇と舌に絡め取られて、薪さんの中に消えていく。

 お、俺はなんて事して、いやさせて・・・るんだ!?

 毎日の時間と労力のほぼすべてを捜査につぎ込み、同じものをずっと追い続けた一年半。
 離れる未来を想像しただけで涙が止まらなくなるほど大切な人なのに、プライベートでは寂しい子どものような顔を知ったばかりで。
 その次に直面したのが、まさか俺の股間で淫靡な行為に耽る艶めかしいオトナの顔だなんて。

「ケホ……ッ」

「……な、何してるんです!早く吐き出さないとっ」

「いい、全部飲んだ」

 受け皿代わりに出した俺の手を掴み、薪さんは頑なに首を横に振る。
 
「それより、もう……苦しくないか?」

「……」

 俺は言葉を失った。こっちを見上げて近づいてくる薪さんの、熱っぽく潤んだ瞳と夢見心地な表情が可愛すぎるから。

「……ええっ、いいですそれ!やりますから自分でっ」

 憧れの人に“後始末”をさせてるのに気づいた俺は、慌ててティッシュを引き出した手を自分の股間にやりながら体を逸らす。
 実は始末なんて必要ないのだ。
 薪さんの繊細な口唇や手指の感触の余韻を味わいながらズボンのファスナーを上げ、幸せに惚けるだけだ。
 そしてふと、足元でごそごそ動く衣擦れの音に振り向いた俺は、驚きのあまり二度見する。
 薪さんがしれっとチノパンを上げたのを見てしまったからだ。


「不快じゃ……なかったか?」

「いえ、まさか……」

 ベッドの上の使い終えたティッシュを集める綺麗な指が摘むのは、すべて俺の残骸なのか、もしかして薪さんのも?……と余計な邪推が思考を惑わす。

「……でも俺こういうの、初めてで……なんかすごく……」

「はじめて?」

 間の抜けた鈍い返事が不安を煽ったのか、薪さんが頼りなく俺の言葉を繰り返しながら見上げてくるのが堪らなくて思わず掻き抱いた。
 初めてなのはオーラルセックスだけじゃない。
 こんなにも……カラダと心が制御不能にまで燃え盛り、誰かを“好きだ!”と訴え続けてるのだって、まさに今までにない状態なのだ。

「心配するな。もう二度とこんなことはしない」

「えっ、そんな……」

 浮かれた頭をハンマーで殴られたような衝撃に、俺は目を白黒させながら腕の中の薪さんの顔を覗き込む。

「お前は全く悪くないんだ。寝てる間に僕に襲われただけなんだから」

「いえ!これは同意の上でしかない行為です!イくときはしっかり起きてましたのでっ!!」

 クスッ、とまるで綺麗な花が綻んだような笑みが腕の中で零れた。
 そして、綺麗な手が伸びてきて俺の頬に優しく触れる。

「いいや、お前は襲われたんだ」

「違います」

「……違わない!」

「違うんです!!俺はあなたが好……」

 開いた口に極上の酒を注ぎ込まれたって、ここまで骨抜きにはならないだろう。 
 薪さんは“上司にキスされる違和感”を教えるつもりで、俺の唇を唇で塞いだに違いない。が、全くの逆効果だった。

「……こうまでされて、僕を好きと…」

 柔らかくて香り高い唇がいちど離れて訊き、また引き戻されるように俺の下唇にふわりと吸いつく。
 うっとりとそれを迎え入れ薪さんの唇を包み込む俺の唇は、溶け崩れそうに甘美な味に酔う。と同時に、狭い口内に潜り込んだ舌がさっき自分が放った欲望の苦みを探り当て、獣性もムクムクと頭をもたげつつある。

「ええ。好きです……めちゃくちゃ……」

 もうあなたの中に今すぐ入りたいくらい――
 湧き起こる欲情に任せて揉みくちゃに抱きしめた薪さんの身体をベッドに押し倒して、シャツを捲り上げその下の肌をまさぐる。

 手のひらに伝わる火照ったざわめきや、股間に滑らせるとわかる明確な“手応え”で、薪さんも俺を求めてるのがわかった。

 俺のカラダも痛いくらいに薪さんを求めて直下勃っていたけれど、今これ以上進んではいけないことくらいわきまえている。

 このまま肉欲だけを一時的に満たしたって、薪さんの心を壊してしまうからだ。
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