俺とあなたの5.5日間

3- M - 1

「薪さん……こっち向いて……」

 くしゃくしゃのシーツにしがみつき顔を埋め、腰だけ上げる姿勢で快楽に耐えていた僕は、仰向けにされた身体を力なくベッドに預けている。

「指いれますね……」

 抗うことも忘れ、優しい声にうっとり目を閉じた。

 青木の口唇や舌で散々絆され色んな体液で混ぜ捏ねられた僕の肛穴は、侵入してくる長い指をびくりと強く食い締め、奥まで導いていく。

「はぁ……いい反応……もう一本いきますよ……」

 青木の声が上擦ってるのが可愛い。
 ぐずぐずと濡れそぼる入口になった僕のソコは、滑り込んでくるもう一本の指もきつく呑み込み、善がるように纏わりつく。
 青木は裸眼の顔を近づけて僕の反応を慎重に伺いながら、根元まで潜った指で、自分の入る場所を丁寧に撫で拓いていく。

「きれいです」

 さっきまでは、すぐにでも入りたそうに僕を急かして煽り立てていた唇が、額や鼻筋……頬や唇、顔じゅうを、愛しげになぞりながら焦らすように囁いてくるのが小憎らしい。

「っ……はぁ……」

 もどかしさのあまり、唇どうしが重なったのを捕まえ夢中で舌を絡めれば、自分が吐き出した精液の味と匂いが青木の口内から僕に戻ってきて、頭がおかしくなりそうだった。

「……あ……ぁっ……も……っと……あおきっ……」

 どうしてこんなに気持ちいいんだろう?
 どうしてこんなに、二回りも三回りもデカいこの男が、可愛くて仕方ないんだろう?
 くしゃくしゃになった意識のなかに青木の声が淫靡に忍びこんでくる。

「薪さん……こんなにたくさん指が入って……俺も、もういいですよね?」

「……あ……んっ……」

 ナカを蠢いていた三本の指が一気に引き抜かれる甘い摩擦に、思わず零れる嬌声。

 脚を大きく開かれると、指とは比較にならない質量の熱い肉棒が、蕩けた入口を押し広げて這入ってくる。

「……う……っ」

「す、みません……痛いですよね」

 あまりの激痛に竦んだ身体を抱きしめる青木の腕が、僕の上体を持ち上げて起こした。

「こうしましょう……少しずつ……オレの上に腰を落として……」

 いつの間に用意したのか、避妊具が装着されゼリー塗れのアオキがそそり勃っているのが真下に見える。

「……あっ……はぁ……っ」

「くっ……力抜いて……」

 少しずつ僕のナカに受け入れていくにつれ、青木が喋らなくなる。
 じりじりと腰を落としていき、根元まで繋がった体勢で、二人は切ない息を吐き、強く抱き合った。

 僕の体内すべてが青木に占有されたような満たされた感覚は、物理的な容量もさることながら気持ちの面も大きいのだろう。

「動かし…ますね」

 大きな手が僕の腰を掴んで上下に揺らすと、 擦られて思わず声が上がるほどきもち悦くて、もっと味わいたいのにすぐに上り詰めていく。

「あ……ッ」

 目の前でフラッシュが焚かれたみたいに脳内が真っ白になる。

 抱き合ったままベッドに倒れ込み、青木の重みを幸福に味わいながら、遠ざかっていた意識が自然にまた寄せてくる。
 戻るにつれ、青木の熱が吐き出されている脈動が内襞の摩擦とともに生々しく伝わり、いかにも獣の雄みたいな荒い鼓動と吐息にまみれた僕は、あまりの恍惚感に口角を緩める。

「すみません……もう少しだけ……」 

 もう少し……の意味がわからなかった僕は、アオキの装着具が取り替えられ、新しく準備万端になったモノがまたこっちに狙いを定めてるのに気づいてギョッとする。

 ああ、でも、キモチいい――

 僕のカラダもまだ熱いままで、アオキの侵入を悦び、切なく締め上げて絞り取ろうと腰が揺れる。

 本当に堪え性のないセックスだ。どちらかがすぐ上り詰めて果て、また我慢できずに求めて交わって。
 4回目の交接で、後ろから突かれながらふと目に入ったヘッドボードの時計のデジタル表示を見て、我ながら呆れた。

 3時間後には出勤だ。
 こんな状態じゃ、二人とも寝る間もないだろう。
 それどころか――

「ばか、犬みたいに舐めるな」

「だって、薪さん……美味しいですもん」

「……っ……ぁ……そ、いうことしてると……ほらみろ、復活早すぎだ」

「アッ、薪さん……ヤメテ」

 何度も欲望を吐いたのに飽きたらないアオキを宥めるには、口も使わないと僕の身体がもたない。
 そんな交わりを繰り返しているうちに朝が来た。


 疲労感をものともしない満たされた体を熱いシャワーで洗い流す。

「はい……ええ、それでお願いします。ご両親の許可は取れてるので。〇〇署△交番で合流、ということで、お待ちしてます」

 スラックスを履きシャツを身に着けながら、寝室の電話の声を聴いていると……だんだん髪の毛が逆立ってくる。

「何でっ、お前が出てるんだっっ!!それは僕の携帯だぞっ!!」

「いや、岡部さんだったので……」

「そうじゃないお前が僕のに出たら僕とお前が……」

「朝一番で一緒に神奈川県T市に行く途中だと伝えたんです」

 ふーん。つまり僕と青木が一緒にいると分かっても二人で現場に向かっているから不自然ではない、と?
 岡部の送迎を勝手に断って?

「……お前、僕に報告してないことあるだろ」

 深い息をと何度も吐いて震えと動悸を落ち着けながら僕は訊く。

「ええ、でもそれを今から……」

「もういい。お前なんかよりこっちの方がよほど使える」

 僕は取り戻した携帯でざっと情報漏えいの書き込みを確認した後、ベッドの青木を刺々しく見下ろした。

「で? 残念ながらここに都合よく書かれてる仮説は成立しない。僕の覚えてる限り事件の現場でA少年が携帯を操作している視線や手の動きはなかったからな」

「違うんです!大事なのは写ってるか写ってないかの問題じゃなく“証拠”が残ってる可能性のある携帯が、今現在交番に拾得物として“保管されている”という事で……」

 僕はポカンとした顔で乱れたベッドを占領している半裸の大男を見つめ、それから堪えきれない笑いを噛み殺す。

「クックッ、つまりこれは、携帯に写真が残ってると本気で考えているバカな捜査員の情報を、そのまま晒してくれたというわけか」

「ええ、だから行くんです。急ぎましょう!薪さん」

「いや、急がなくていい」

 飛び起きて出かける支度を始める部下を横目に、僕は愉しげに呟いた。

「お前にしては随分いやらしい方法を考えついたものだな、面白い」
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