☆一線〜悪魔の贈り物
この甘過ぎるときめきは、一体何なのだろう。
お互いにもう隅々まで、もっと奥までも触れ合って、すべてをたしかめあった身体なのに。
“捕食じゃなく、気持ちだけで触れている”
そう思うとキスだけで胸が高鳴って、とろけそうな熱に耐えきれずに、二人の唇が離れる。
「……あ、の……」
「……?」
両手を組むように畳に貼り付け組み敷いていた身体の熱と重みから解放された薪は、抱き起こされながら青木を睨みつけた。
「俺、現れていきなりこんなこと始めて、失礼ですよね? せめてお義父さんにご挨拶を……」
「だから澤村さんは親じゃないって言ってるだろ」
非常に面倒臭い状況だ。
こちらの複雑な事情を何も知らない癖して妙に律儀なこの男。しかもド近視の癖に今日は眼鏡もないときている。
「これで気が済んだか?」
自分が夢の中で会った“薪と瓜二つのサワムラさん”とは似ても似つかぬ遺影に仏壇で手を合わせた後、今度は別室で「父と母だ」と教えられたフォトフレームの小さな写真に恭しく合掌。
その後青木は神妙な面持ちで、ベッドの薪に振り返って頷いた。
まともに説明されたわけじゃないし、何も解っちゃいない。
ただ、連れてこられたこの場所が当時の薪の部屋というのが、刺激強めである。布団などちゃんと揃っているあたり、ここを長年放置していたわけではなさそうだった。
「もう、大丈夫です……続きを……」
シングルベッドにちょこんと腰掛ける薪の隣に大きな身体を凭せ掛け、余裕なく手を握った。
こんな時、今までどうやって漕ぎ着けて いたのだろう。
わからない。
だって全然違うのだ。相手は憧れの元上司、超絶好みの美人がこっちを向いてくれてるうえに、火照らせたカラダを結びたがってるなんて状況、夢ですら見たことがない。
「きょうは……」
滑らかな頬を撫で降ろすキスを止めて、青木は薪から零れる言葉に耳を傾ける。
「日本では月曜だ、知ってるな」
「ええ、それは勿論」
「……岡部に伝えた。お前を一日療養させると」
オカベ、にさえカチンときた。妖艶に濡れたこの唇から他の男の名前を聞きたくない一心で、独り占めするように唇で塞ぐ。
「……ん、あお、きっ……」
この人は今日にでもさっさとNYに戻るつもりだろう。今を逃せば深まる機を逃す。
そう察した強迫観念も手伝って、薪の肌から服を剥がしてがっつき始める青木。そのイキオイに心地よく流されながら、薪は自分の胸元をむさぼる頭を両腕に収め、うっとりと身を任せている。
「あ……っ」
大きな手が腰を撫で下ろして、濡れた屹立に触れ、長い指を挿し入れて後ろの蕾を蕩かしはじめた。
やけにゆっくりと感じる指の動きに、続きが待ち切れないほど甘く、切ない電流が末端まで疾る。
いま何をされているのか、この先何が待ってるのか、ぜんぶわかるのに、早く欲しくて堪らなくて、薪は大きく身を捩る。
「……っ……はや……く」
「……だめです……もう少し解さないと」
「……ぃから……っ」
涙目に負けて、怒張する自身を薪のナカに捩じ込んでいく。
意地っ張りなこの人がこんなにねだり上手だとは知らなかった。
可愛くて、愛しくて、つい無理強いみたいに慾ってしまいそうで、こわくなる。
「どうして……ここでしようと?」
すぐ先に逝ってしまった小さな身体を、繋がったままで両手両脚で大切に背後から抱きしめ、囁くように訊いてみる。
かえってきたのは意外な答えだった。
「見せたかったんだ」
「えっ……だ、誰に」
抱かれる薪がビクリと固まった。
自分のナカの青木が硬度を増したから。
「バカ。意識しすぎだ」
「だ、って、見せ……るってあなた……」
おかしいか? とばかりに見上げてくる丸い瞳に思わず頬が緩む。
「あの人はたぶんこういうのを 知らないから」
青木の頬に触れる指に惹き寄せられるように唇が触れ、そのまま唇どうしが重なった。
「……はぁ……っ、」
抱きしめる腕に導かれて軽い身体が半回転し、向き合ってひとつのまま、熱いナカが擦れて上下に揺れ始める。
「知れば……あのひとは……悪魔じゃなくなるかもしれない」
澤村さんが人を愛することができないようには見えない。
ただ、欠けているなにかを埋められないまま亡くなったのだとしたら。その人と今でもどこかで繋がってるほかでもない薪が、未だ与えることをあきらめていないのなら――
薪さん。これってもしかして“親孝行”というのではないでしょうか。
そう思ったけど言わない。
余裕なくて、言えない。
散々交わった、療養日。
薪に付き添われた青木は、夕方澤村の下駄を拝借して二日ぶりに自宅へ戻った。
矯正視力と普通の食欲を取り戻した青木と、薪が残りの時間をどのように過ごし、薪の帰米後どんな関係になったのかは、また多分甘めの……別の話だ。
お互いにもう隅々まで、もっと奥までも触れ合って、すべてをたしかめあった身体なのに。
“捕食じゃなく、気持ちだけで触れている”
そう思うとキスだけで胸が高鳴って、とろけそうな熱に耐えきれずに、二人の唇が離れる。
「……あ、の……」
「……?」
両手を組むように畳に貼り付け組み敷いていた身体の熱と重みから解放された薪は、抱き起こされながら青木を睨みつけた。
「俺、現れていきなりこんなこと始めて、失礼ですよね? せめてお義父さんにご挨拶を……」
「だから澤村さんは親じゃないって言ってるだろ」
非常に面倒臭い状況だ。
こちらの複雑な事情を何も知らない癖して妙に律儀なこの男。しかもド近視の癖に今日は眼鏡もないときている。
「これで気が済んだか?」
自分が夢の中で会った“薪と瓜二つのサワムラさん”とは似ても似つかぬ遺影に仏壇で手を合わせた後、今度は別室で「父と母だ」と教えられたフォトフレームの小さな写真に恭しく合掌。
その後青木は神妙な面持ちで、ベッドの薪に振り返って頷いた。
まともに説明されたわけじゃないし、何も解っちゃいない。
ただ、連れてこられたこの場所が当時の薪の部屋というのが、刺激強めである。布団などちゃんと揃っているあたり、ここを長年放置していたわけではなさそうだった。
「もう、大丈夫です……続きを……」
シングルベッドにちょこんと腰掛ける薪の隣に大きな身体を凭せ掛け、余裕なく手を握った。
こんな時、今までどうやって
わからない。
だって全然違うのだ。相手は憧れの元上司、超絶好みの美人がこっちを向いてくれてるうえに、火照らせたカラダを結びたがってるなんて状況、夢ですら見たことがない。
「きょうは……」
滑らかな頬を撫で降ろすキスを止めて、青木は薪から零れる言葉に耳を傾ける。
「日本では月曜だ、知ってるな」
「ええ、それは勿論」
「……岡部に伝えた。お前を一日療養させると」
オカベ、にさえカチンときた。妖艶に濡れたこの唇から他の男の名前を聞きたくない一心で、独り占めするように唇で塞ぐ。
「……ん、あお、きっ……」
この人は今日にでもさっさとNYに戻るつもりだろう。今を逃せば深まる機を逃す。
そう察した強迫観念も手伝って、薪の肌から服を剥がしてがっつき始める青木。そのイキオイに心地よく流されながら、薪は自分の胸元をむさぼる頭を両腕に収め、うっとりと身を任せている。
「あ……っ」
大きな手が腰を撫で下ろして、濡れた屹立に触れ、長い指を挿し入れて後ろの蕾を蕩かしはじめた。
やけにゆっくりと感じる指の動きに、続きが待ち切れないほど甘く、切ない電流が末端まで疾る。
いま何をされているのか、この先何が待ってるのか、ぜんぶわかるのに、早く欲しくて堪らなくて、薪は大きく身を捩る。
「……っ……はや……く」
「……だめです……もう少し解さないと」
「……ぃから……っ」
涙目に負けて、怒張する自身を薪のナカに捩じ込んでいく。
意地っ張りなこの人がこんなにねだり上手だとは知らなかった。
可愛くて、愛しくて、つい無理強いみたいに慾ってしまいそうで、こわくなる。
「どうして……ここでしようと?」
すぐ先に逝ってしまった小さな身体を、繋がったままで両手両脚で大切に背後から抱きしめ、囁くように訊いてみる。
かえってきたのは意外な答えだった。
「見せたかったんだ」
「えっ……だ、誰に」
抱かれる薪がビクリと固まった。
自分のナカの青木が硬度を増したから。
「バカ。意識しすぎだ」
「だ、って、見せ……るってあなた……」
おかしいか? とばかりに見上げてくる丸い瞳に思わず頬が緩む。
「あの人はたぶん
青木の頬に触れる指に惹き寄せられるように唇が触れ、そのまま唇どうしが重なった。
「……はぁ……っ、」
抱きしめる腕に導かれて軽い身体が半回転し、向き合ってひとつのまま、熱いナカが擦れて上下に揺れ始める。
「知れば……あのひとは……悪魔じゃなくなるかもしれない」
澤村さんが人を愛することができないようには見えない。
ただ、欠けているなにかを埋められないまま亡くなったのだとしたら。その人と今でもどこかで繋がってるほかでもない薪が、未だ与えることをあきらめていないのなら――
薪さん。これってもしかして“親孝行”というのではないでしょうか。
そう思ったけど言わない。
余裕なくて、言えない。
散々交わった、療養日。
薪に付き添われた青木は、夕方澤村の下駄を拝借して二日ぶりに自宅へ戻った。
矯正視力と普通の食欲を取り戻した青木と、薪が残りの時間をどのように過ごし、薪の帰米後どんな関係になったのかは、また多分甘めの……別の話だ。
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