きもちいいこと

 麗しく熟れてとろけた“食べ頃”の薪さんを腕の中に収めながら、自ら“お預け”を宣言してしまった俺。
 自分史上ダントツに昂らせた身体を持て余しながら、なぜ究極のやせ我慢を選んでしまったのか?

 理由は明確だ。

 俺は年下だし、薪さんが珍しく混乱している時こそ、包容力を発揮したかったから。
 溢れ出す感情や欲情に翻弄されて思い煩う薪さんは、その可憐な見た目も相俟って本物の少年のように見えて……守りたいのは本心だった。

 それに、こう言っちゃおこがましいのだが……薪さんからの愛情を一身に受け、幸せに溺れていたのも理由の一つだ。
 常人には考えすら及ばないスペックの脳内で、多様な角度や次元から膨大な情報を取得し処理しうる能力でもって、一瞬一秒休みなく、全身全霊で俺のことを隅々まで感じ取り、深く想いを寄せてくださる薪さん。
 そして、ふと気づいた。
 かなり前まで記憶を遡っても、俺は薪さんからそんな眼差しを向けられ、深い懐の中で甘やかされていたのではないかと。

 そこまで考えるのは、思い上がりも甚だしいかもしれない。
 でも今夜の営みだけ切り取ったって、薪さんは高スペックな脳を回し過ぎたうえに、極めて高感度な肌で俺の行為を感受しながら果てて、大変お疲れになっている。だから休ませてあげないと。

 まだ頼りないだろう俺に、全身を預けて眠ってくださる薪さんのすべてが愛おしくて堪らない。
 綺麗な額や長い睫毛の瞼に唇を押し当てると、煩悩も安らかな愛情に塗り変わっていく。
 そうしているうちに、俺も眠りについた。


 どのくらい時間が経ったのか、まるで感覚がない。

 ただ、きもちいいユメの中で、薪さんがセクシーな騎乗位で俺を受け入れ縦に揺れている……
 今までのユメなんて比較にならないほど、ずば抜けてリアルな感覚。
 狭くてキツくて、熱いナカの感触も生々しい。上下運動に加え、意思を持つような粘膜がすごく刺激的で、包まれたまま吸われたり撫で回されて……ああっ、そんなコトまで……アッ、無理だっ……逝く……ッ
 って…………エッ!?

 ウソ……だろ?
 灯りを落とした空間で、メガネもなく開いた目が慣れるまで数秒。
 上体を起こした俺の前……いや股間で、爆ぜたばかりの怒張を咥えた薪さんは、お可愛らしい目を丸くして、ごくんと喉を鳴らす。
 これは夢からさめたユメの中なのか?

「な、何をっ!吐き出して、早く……おなかこわしたらどうするんですかっ」

「うるさいな。舞が起きたらどうするんだ」

「ああっ、今ティッシュを……!」

 ずり下がった下着とズボンを秒で穿き直した俺は、薪さんの綺麗なお口から滴り落ちようとする白濁を拭おうとティッシュを差し出す。
 目前で、薄い舌が美味しそうにソレをぺろりと舐め取る仕草に理性を根こそぎを奪われて、俺はまた局部含めてカチコチに固まってしまう。

「〜っ、、、」

「何を慌ててるんだ、お前もさっき同じようなことを僕にしただろ」

「……全然違いますよっ」

 俺は逝った後のまきさんを、口内で愛撫しただけのこと。対して薪さんが俺にしたのは、完全に口内性交だ。

「ふふ、昨夜抜いたばかりなのに濃厚だな」

 そんな綺麗なお顔で、愉しげに笑っている場合じゃないでしょう。
 トンデモナイものを呑み込んだ口唇を拭うように口づけすれば、たちこめる青臭く苦い余韻に混乱状態になる。

 おそらく薪さんは眠る俺の“眠れない部分”を寝かしつけようと、綺麗なお口で逝かせてくださったに違いない。
 でも俺のカラダはまったくその厚意に反し、逆に煽られまくっているのだから。

「どうした、顔熱くないか?」

「いえ、その……」

 仰向けに横になった俺の上にちょこんと乗り上がり、顔を覗き込んでくる仔猫のような薪さん。
 他所行きの通常時でさえ俺はこの人に敵わないのに、二人きりで無垢な素顔の破壊力を前にしては、もはやまな板の上の鯉にしかなりえない。
 
「ご厚意には感謝しますが……今後は俺を宥めようだなんて、考えないでいただけますか?」

 俺の胸の上で手を組み顎を載せた薪さんは、上目遣いで瞬きしながら首を傾げる。

おまえ・・・がキツそうでもダメなのか?」

「ダメですってば!」

 薪さんの顎の下から離れ、そっと俺の下半身に伸びる手を、俺は慌てて強く握った。

「あなたはどうしたって俺を煽ることしかできないんです。収まるなんて無理ですから!今度こういうことしたら、本気で襲いますよ」

 狭いベッドの中、俺は薪さんを腕の中に引き寄せ一緒に半回転して組み敷く。
 少々乱暴な言い草に、殴られる覚悟もあったが、薪さんは大人しく俺の身体の重みの下にすっぽりはまって目を閉じてしまった。
 もう呆れて反論する気もないのだろう。
 俺の目は血走り、息は熱くて荒く、さっき薪さんに慰められたばかりの股間のソレが硬さを取り戻し薪さんを圧迫しているのだから。
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