きもちいいこと
部屋の明かりが消えると、視覚以外が妙に冴えてくる。
互いを味わいあう口唇、荒らぐ息や、肌の熱。
大きな身体の重みとともに押しつけられる股間の硬い異物感まで、研ぎ澄まされた神経が克明に脳に伝えるから、掻き立てられる欲情に僕は身悶えするしかない。
青木が僕のカラダを求めてる?
それこそ都合良くユメでも見ているんじゃないだろうか。でもこれが現実で、流されてしまったら? それで元の自分に戻れなくなったら……?
不安定に心を揺らしたまま、身体は青木のされるがままだ。
「……あ……そこっ……よせっ」
「どうして?奥まで入りましたよ」
「まだじゅんび、してな……いからっ……」
「準備?」
妄想と現実は違う。青木の指を受け入れただけで全身が震え、上り詰めそうになった僕は、握った拳で口元を隠して首を何度も横に振る。
こうなることがわかっていながら、解しておくことすらできなかったのだ。この男に抱かれると想うと、風呂場で自分の指を入れただけで逝きそうになって……怖かった。
「……準備は俺がします。てか、させてください」
「よ……せっ、うごかすなっ」
“イ ク カ ラ”と喘ぎだけで伝えた唇の形を拾いあげた青木は、優しい顔で苦笑する。
「逝ったっていいですよ。そのためにするんですし」
あっけらかんと言ってのけ、奥まで入った長い中指に添えられ入ってきたのは人差し指か薬指か……腰を浮かし内側を畝らせて堪えながら、僕は涙目で青木を睨んだ。
「いくのはまだ……だっ。おまえ、仕方わからないだろっ」
「ええ、だから教えてください。どうしたら、あなたがきもちよく進められるのか」
「だめ……だっ、あっ……うごかすなっ」
「っ、じゃあどうすれば……」
「ほぐす……んだ」
「……え?えぇと……」
「おまえのが……ぼくのなかにちゃんと入るように」
「……!!」
首を掴まえるように両腕でしがみつき、耳元で煽情的な言葉を食らわせてやる。
面白いくらいわかりやすく動揺しながらも、僕の体内に潜っている指が言いつけに従い、僅かずつ侵入場所を拓こうとし始める。
「んっ……ゆっくり……拡げて……」
「こう、ですか?」
熱に上擦る青木の声。
くぐもった粘音に体内を捏ねられ、身体中の血が淫靡な快楽に沸き立つ。
「……はぁ……っ、もっと……ゆび……ふやし、て」
きもちいい、けどまだ……逝きたくない。
青木を受け入れながら、一緒に到達したい。初めからタイミングを図るのは難しいだろうが、僕の体内できもちよくなってるアオキを感じながら逝くのを、ずっと想い描いてた。けど現実はまだ遠い。
「……ぁあっ!」
「ああ、薪さんっ!!」
声を挙げたのは同時でも、達したのは僕だけ。
しかもまだ身体を結んでもない。ただ青木の指が、ヘンなところを圧した刺激で吐精してしまったのだ。
「……や……っ……まだイってるからっ……」
止まらない指。僕は続けざまに内側から襲い来る快楽の波から、逃れようと身を捩る。
「あ……すみません!」
青木も慌てて指を抜き、こともあろうに逝きかけてる僕のを手に掛け、優しく口内に含んだ。
「……ぁ……っ……」
熱い舌に包まれそのまま先端を撫で回されて、鈴口に残る精液を吸い取られ、意識まで快感に拐われそうになる。
間抜けに見えるこの男は無駄に呑み込みがよく、やらかした指でその 場所をしっかり覚え込んだに違いない。
こうして心だけじゃなくカラダまで青木に奪われていく怖さが、心地良さに塗り変わっていくのさえ止められなくて。
きもちいい……と気づくと、いつの間にかきれいに拭われた下腹に、青木が優しげなキスをいくつも落としてくれていた。
「すみません、俺がうまく準備して差し上げられずに……」
「謝るな。悪いのは僕だ」
仰向けの身体の至る所に降り注ぐ青木のキスを受け止めながら、自分の耐性のなさを恥じる僕は、両手で顔を覆ったままだ。
「お前は……辛くないのか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「でも、もう一度くらいは……」
「本当に大丈夫です。明日もいてくださるんでしょう?また準備から俺にさせてくださいね」
起き上がろうとする僕を制して、青木の身体が覆うようにのしかかってくるのがまた、文句なくきもちいい。
「薪さん?聞いてますか?自分で準備したら駄目ですよ」
「……ふふ、わかった……」
“大丈夫”の言葉はたぶん半分がいたわりの嘘で、あと半分が真実だろう。
青木の重みと肌の温もりに埋もれた僕の思考は、その何もかもを受け止めながら、安らかな眠りに引きずり込まれていく。
互いを味わいあう口唇、荒らぐ息や、肌の熱。
大きな身体の重みとともに押しつけられる股間の硬い異物感まで、研ぎ澄まされた神経が克明に脳に伝えるから、掻き立てられる欲情に僕は身悶えするしかない。
青木が僕のカラダを求めてる?
それこそ都合良くユメでも見ているんじゃないだろうか。でもこれが現実で、流されてしまったら? それで元の自分に戻れなくなったら……?
不安定に心を揺らしたまま、身体は青木のされるがままだ。
「……あ……そこっ……よせっ」
「どうして?奥まで入りましたよ」
「まだじゅんび、してな……いからっ……」
「準備?」
妄想と現実は違う。青木の指を受け入れただけで全身が震え、上り詰めそうになった僕は、握った拳で口元を隠して首を何度も横に振る。
こうなることがわかっていながら、解しておくことすらできなかったのだ。この男に抱かれると想うと、風呂場で自分の指を入れただけで逝きそうになって……怖かった。
「……準備は俺がします。てか、させてください」
「よ……せっ、うごかすなっ」
“イ ク カ ラ”と喘ぎだけで伝えた唇の形を拾いあげた青木は、優しい顔で苦笑する。
「逝ったっていいですよ。そのためにするんですし」
あっけらかんと言ってのけ、奥まで入った長い中指に添えられ入ってきたのは人差し指か薬指か……腰を浮かし内側を畝らせて堪えながら、僕は涙目で青木を睨んだ。
「いくのはまだ……だっ。おまえ、仕方わからないだろっ」
「ええ、だから教えてください。どうしたら、あなたがきもちよく進められるのか」
「だめ……だっ、あっ……うごかすなっ」
「っ、じゃあどうすれば……」
「ほぐす……んだ」
「……え?えぇと……」
「おまえのが……ぼくのなかにちゃんと入るように」
「……!!」
首を掴まえるように両腕でしがみつき、耳元で煽情的な言葉を食らわせてやる。
面白いくらいわかりやすく動揺しながらも、僕の体内に潜っている指が言いつけに従い、僅かずつ侵入場所を拓こうとし始める。
「んっ……ゆっくり……拡げて……」
「こう、ですか?」
熱に上擦る青木の声。
くぐもった粘音に体内を捏ねられ、身体中の血が淫靡な快楽に沸き立つ。
「……はぁ……っ、もっと……ゆび……ふやし、て」
きもちいい、けどまだ……逝きたくない。
青木を受け入れながら、一緒に到達したい。初めからタイミングを図るのは難しいだろうが、僕の体内できもちよくなってるアオキを感じながら逝くのを、ずっと想い描いてた。けど現実はまだ遠い。
「……ぁあっ!」
「ああ、薪さんっ!!」
声を挙げたのは同時でも、達したのは僕だけ。
しかもまだ身体を結んでもない。ただ青木の指が、ヘンなところを圧した刺激で吐精してしまったのだ。
「……や……っ……まだイってるからっ……」
止まらない指。僕は続けざまに内側から襲い来る快楽の波から、逃れようと身を捩る。
「あ……すみません!」
青木も慌てて指を抜き、こともあろうに逝きかけてる僕のを手に掛け、優しく口内に含んだ。
「……ぁ……っ……」
熱い舌に包まれそのまま先端を撫で回されて、鈴口に残る精液を吸い取られ、意識まで快感に拐われそうになる。
間抜けに見えるこの男は無駄に呑み込みがよく、やらかした指で
こうして心だけじゃなくカラダまで青木に奪われていく怖さが、心地良さに塗り変わっていくのさえ止められなくて。
きもちいい……と気づくと、いつの間にかきれいに拭われた下腹に、青木が優しげなキスをいくつも落としてくれていた。
「すみません、俺がうまく準備して差し上げられずに……」
「謝るな。悪いのは僕だ」
仰向けの身体の至る所に降り注ぐ青木のキスを受け止めながら、自分の耐性のなさを恥じる僕は、両手で顔を覆ったままだ。
「お前は……辛くないのか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「でも、もう一度くらいは……」
「本当に大丈夫です。明日もいてくださるんでしょう?また準備から俺にさせてくださいね」
起き上がろうとする僕を制して、青木の身体が覆うようにのしかかってくるのがまた、文句なくきもちいい。
「薪さん?聞いてますか?自分で準備したら駄目ですよ」
「……ふふ、わかった……」
“大丈夫”の言葉はたぶん半分がいたわりの嘘で、あと半分が真実だろう。
青木の重みと肌の温もりに埋もれた僕の思考は、その何もかもを受け止めながら、安らかな眠りに引きずり込まれていく。