きもちいいこと
俺のベッドに横たわる薪さんは、照れを隠した少し固い面持ちで目を閉じ、身を任せてくれている。
その気高い人のパジャマに手を掛け、性急にボタンをはずしていくのは俺の手だ。
もちろんユメでもなんでもない。
薪さんがそれを許し、委ねてくれている。
昨夜の淫らささえ跡形もなく消えている無垢な肌に、俺はぞくぞくと心身を沸き立たせながら、そっと舌を這わせていく――
「……っ、読んだぞ」
エ?なにを……と訊く前に、場違いな言葉が吐息とともに続けて零れる。
「ほうこく……しょ」
報告書? ああ、たぶんそれは俺がつい三時間ほど前、オンラインで説明も差し上げた件だろう。
それがどうかしたんですか?と訊ねたくても、可愛らしく尖る胸元から唇が離れなくて、返事ができない。
視線だけ上に向けると、紅潮した頬で首を左右に振る薪さんの潤んだ目と目が合った。
裸眼で捉えても、その可愛さは抜群の破壊力で、俺の肉欲はさらに炎上する羽目になる。
「お前の同行……ひつようなかったな……」
薪さんの言葉の語尾が甘い吐息でほどけるのは、敏感に尖る乳首を俺の舌が弄ぶから。
舌の動きに合わせて浮く細腰を掴まえながら、熱に浮かされた頭で上司の言葉を振り返る。
たしかに、今朝の捜査で得たものは白石自身の働きに違いない。でも早期解決に繋がるその先の展開を含め、俺が同行したのは不要ではない。
「わ……すれてた」
ひっきりなしの愛撫に溺れてひらく唇の隙間から、まだ次々に零れる“情事とは無関係”な言葉。
「特捜のたび……室長が中央に呼び出される第八管区は……ほかよりメンバーが自立してるんだった……」
「ええ、おかげさまで」
俺は薪さんに覆い被さって、まだ何か呟こうとする綺麗な唇を、自分の唇で封じた。
ああそうか、なんとなくわかってきたぞ。
薪さんは自分が幸せを感じはじめると、無意識に自虐めいた余所事を口走るのだ。
「……や……めっ……」
「何がお嫌なんです?」
「あっ……」
「やめるので教えてください」
「ちがっ……おまえ……っ」
「俺は……滅茶苦茶きもちいいです。あなたをこうして味わうだけで……」
仕事では完全無欠な薪さんの心身は、ベッドでは弱点しかなくなる。
唇から顎、首筋から肩先へと口づけで撫で下ろす肌は粟立って震え、ひとつひとつ感じて、受け止めてもらえる幸せがとめどなく俺の中に積もってく。
「あ……っ」
勢いづいた俺の手が薪さんの下着ごとズボンを下ろし、屹立した性器を包んで動かした。
すると遅れて脇腹を伝い降りる口づけがそこに辿り着く前に、手の内で上り詰め散ってしまう。
逝ったあとの仕草だって堪らなく可愛い。
がっくり落とした肩で息をしながら、涙目で言うのだ。
だからこんなの嫌なんだ、と。
「何がお嫌なんですか?」
「僕ばかりいかされて、お前を取り残して……」
「大丈夫で……すっ……ウッ」
緩んでた俺の顔が固まり“取り残されてなんかない”と云いかけた言葉は、喉の奥で呻き声に変わる。
薪さんの綺麗な指が、俺のパジャマの下で熱く硬直しているソコを掴んだからだ。
色恋で擦れてるようには見えないが、照準を定めたら何であれ必ず仕留めるのが薪さんだ。
「ちょ、あの、まきさ……」
「どこ で逝きたいかはお前が決めろ」
「うあ……っ」
乗り上がっていた身体が瞬く間にひっくり返され、ぼやけた天井が視界に飛び込む。同時に“今夜こそ優しくしよう”としていたひそかな決心も、いとも簡単に覆されていた。
「ん……むっ……チュ……」
俺の腿の上に蹲って乗っかる薪さんは、ひん剥いた俺の怒張を手にかけ、小さなお口いっぱいに含んでる。
「……く……っ」
高級フレンチでも味わうかのような繊細な舌づかいに弄り回されながら、俺は甘酸っぱい感情に胸を痛め、本能の疼きに悶え苦しんだ。
あの綺麗な指と唇が、唾液に塗れ俺の先走りと混ざる淫らな音。ダイレクトな感触に想像も加わる超絶なきもちよさに暴発寸前になる。
反面、清らかで美しい人を穢してるようないたたまれなさも膨れ上がり……そんな俺の体の反応と苦い感情をご存知の上で、この人は行為に勤しんでいるのだ。
それなら俺はその煽りに乗せられたっていいんじゃないか。
「薪さん……ほら……」
冷静さを失った俺は上半身を起こして、右手で薪さんのサラサラの髪を撫で下ろし頬を包んだ。
「こっちへ……」
濡れた口唇を拭いもせずに、ちゅぷ…と音を立てて俺の凶器から可愛らしく惚けた顔を上げる。
「ここ……乗って」
「ん……」
珍しく言われるがまま、薪さんはとろけた上目遣いで俺を捉えながら、凶器の上に狙いを定めて跨がった。
「俺……やっぱりここで逝きたいです」
美尻を掴まえた両手の指を、割れ目から次々と薪さんのナカに潜らせる。
悩ましげな熱を帯びて締め付けてくるそこから早々に指を引き抜き、代わりに自分の怒張で圧し拓いていく。
駄目だ。悩ましい熱にきつく絡め取られていく禁断の感触。
こうなったら戻れない。
いくとこまでいきたいし、行き着いてもまた欲しくなる。
たとえようのない快感と、溢れてやまない愛情に押し流されながら、俺はただただ薪さんも同じであってほしいと、夢中で突き上げる。
まきさん、きもちいいですか?
俺やっぱ、すごくきもちいいです。
あなたのナカで幸せを存分に感じてます。
だからこうしているあいだだけでも、一緒に流されてくださいーー
余裕ない俺の言葉は声じゃなく律動にしかならない。
夢中で突いてる間に、上にいた薪さんの身体はいつのまにかシーツを背に、俺の腕の中にすっぽり埋もれていて。
愛しい人の体内で到達した後の、縺れる二つの脈動を、交接部に集中した全神経で心地良く貪っていた。
その気高い人のパジャマに手を掛け、性急にボタンをはずしていくのは俺の手だ。
もちろんユメでもなんでもない。
薪さんがそれを許し、委ねてくれている。
昨夜の淫らささえ跡形もなく消えている無垢な肌に、俺はぞくぞくと心身を沸き立たせながら、そっと舌を這わせていく――
「……っ、読んだぞ」
エ?なにを……と訊く前に、場違いな言葉が吐息とともに続けて零れる。
「ほうこく……しょ」
報告書? ああ、たぶんそれは俺がつい三時間ほど前、オンラインで説明も差し上げた件だろう。
それがどうかしたんですか?と訊ねたくても、可愛らしく尖る胸元から唇が離れなくて、返事ができない。
視線だけ上に向けると、紅潮した頬で首を左右に振る薪さんの潤んだ目と目が合った。
裸眼で捉えても、その可愛さは抜群の破壊力で、俺の肉欲はさらに炎上する羽目になる。
「お前の同行……ひつようなかったな……」
薪さんの言葉の語尾が甘い吐息でほどけるのは、敏感に尖る乳首を俺の舌が弄ぶから。
舌の動きに合わせて浮く細腰を掴まえながら、熱に浮かされた頭で上司の言葉を振り返る。
たしかに、今朝の捜査で得たものは白石自身の働きに違いない。でも早期解決に繋がるその先の展開を含め、俺が同行したのは不要ではない。
「わ……すれてた」
ひっきりなしの愛撫に溺れてひらく唇の隙間から、まだ次々に零れる“情事とは無関係”な言葉。
「特捜のたび……室長が中央に呼び出される第八管区は……ほかよりメンバーが自立してるんだった……」
「ええ、おかげさまで」
俺は薪さんに覆い被さって、まだ何か呟こうとする綺麗な唇を、自分の唇で封じた。
ああそうか、なんとなくわかってきたぞ。
薪さんは自分が幸せを感じはじめると、無意識に自虐めいた余所事を口走るのだ。
「……や……めっ……」
「何がお嫌なんです?」
「あっ……」
「やめるので教えてください」
「ちがっ……おまえ……っ」
「俺は……滅茶苦茶きもちいいです。あなたをこうして味わうだけで……」
仕事では完全無欠な薪さんの心身は、ベッドでは弱点しかなくなる。
唇から顎、首筋から肩先へと口づけで撫で下ろす肌は粟立って震え、ひとつひとつ感じて、受け止めてもらえる幸せがとめどなく俺の中に積もってく。
「あ……っ」
勢いづいた俺の手が薪さんの下着ごとズボンを下ろし、屹立した性器を包んで動かした。
すると遅れて脇腹を伝い降りる口づけがそこに辿り着く前に、手の内で上り詰め散ってしまう。
逝ったあとの仕草だって堪らなく可愛い。
がっくり落とした肩で息をしながら、涙目で言うのだ。
だからこんなの嫌なんだ、と。
「何がお嫌なんですか?」
「僕ばかりいかされて、お前を取り残して……」
「大丈夫で……すっ……ウッ」
緩んでた俺の顔が固まり“取り残されてなんかない”と云いかけた言葉は、喉の奥で呻き声に変わる。
薪さんの綺麗な指が、俺のパジャマの下で熱く硬直しているソコを掴んだからだ。
色恋で擦れてるようには見えないが、照準を定めたら何であれ必ず仕留めるのが薪さんだ。
「ちょ、あの、まきさ……」
「
「うあ……っ」
乗り上がっていた身体が瞬く間にひっくり返され、ぼやけた天井が視界に飛び込む。同時に“今夜こそ優しくしよう”としていたひそかな決心も、いとも簡単に覆されていた。
「ん……むっ……チュ……」
俺の腿の上に蹲って乗っかる薪さんは、ひん剥いた俺の怒張を手にかけ、小さなお口いっぱいに含んでる。
「……く……っ」
高級フレンチでも味わうかのような繊細な舌づかいに弄り回されながら、俺は甘酸っぱい感情に胸を痛め、本能の疼きに悶え苦しんだ。
あの綺麗な指と唇が、唾液に塗れ俺の先走りと混ざる淫らな音。ダイレクトな感触に想像も加わる超絶なきもちよさに暴発寸前になる。
反面、清らかで美しい人を穢してるようないたたまれなさも膨れ上がり……そんな俺の体の反応と苦い感情をご存知の上で、この人は行為に勤しんでいるのだ。
それなら俺はその煽りに乗せられたっていいんじゃないか。
「薪さん……ほら……」
冷静さを失った俺は上半身を起こして、右手で薪さんのサラサラの髪を撫で下ろし頬を包んだ。
「こっちへ……」
濡れた口唇を拭いもせずに、ちゅぷ…と音を立てて俺の凶器から可愛らしく惚けた顔を上げる。
「ここ……乗って」
「ん……」
珍しく言われるがまま、薪さんはとろけた上目遣いで俺を捉えながら、凶器の上に狙いを定めて跨がった。
「俺……やっぱりここで逝きたいです」
美尻を掴まえた両手の指を、割れ目から次々と薪さんのナカに潜らせる。
悩ましげな熱を帯びて締め付けてくるそこから早々に指を引き抜き、代わりに自分の怒張で圧し拓いていく。
駄目だ。悩ましい熱にきつく絡め取られていく禁断の感触。
こうなったら戻れない。
いくとこまでいきたいし、行き着いてもまた欲しくなる。
たとえようのない快感と、溢れてやまない愛情に押し流されながら、俺はただただ薪さんも同じであってほしいと、夢中で突き上げる。
まきさん、きもちいいですか?
俺やっぱ、すごくきもちいいです。
あなたのナカで幸せを存分に感じてます。
だからこうしているあいだだけでも、一緒に流されてくださいーー
余裕ない俺の言葉は声じゃなく律動にしかならない。
夢中で突いてる間に、上にいた薪さんの身体はいつのまにかシーツを背に、俺の腕の中にすっぽり埋もれていて。
愛しい人の体内で到達した後の、縺れる二つの脈動を、交接部に集中した全神経で心地良く貪っていた。