きもちいいこと
「はいっ……た……」
「……ええ、ほとんど」
駄目だ、ほとんどじゃ。お前の全部が欲しい。
「……っ」
両脚で背中に抱きついて重力に身を任せると、角度がずれて僕の僅か奥にアオキが捩じ込まれた。
「く……っ、まきさ……」
青木の喉から絞り出る獣みたいな低い呻き声に甘酸っぱく擽られながら、しがみつく身体が上下し始めている。
「……っ……あっ……は……ぁっ」
僕を上下に動かしてるのは、腰を支える青木の両手だった。
僕の内側を占めるそのカタチは、潤滑剤の助けを借りつつ、悦いところを引っ掛けながら抽送を繰り返す。
「……んむっ……はぁ……クチュ」
僕は喘ぎ声を誤魔化すように青木の唇に齧り付き、容赦ない愛撫の逆襲を受けて脳を蕩かす。ナカから熱く溶ける下半身から、身体も崩れていきそうだった。
「……ん……ぁっ……も……ムリ」
「なら……俺が代わります」
「……ぃあ……っ」
奥にいるアオキを軸にして、身体が半回転する。
潜る角度が変わっても、律動の勢いは止まらないどころか激しくなって、バックで繋がる身体が前のめりにベッドへ倒れていく。
「っ……あお……きっ……」
「まきさん……」
背中から抱きすくめられ、突いて抉っての一心不乱な愛撫に溶ける僕の身体は、覆いかぶさる大男の重みに押し潰されシーツに沈む。
快楽に溺れるとは、こういうことなのか。
もうこのまま死んだっていい……いやだめだ……舞を置いて死んではいけない。
でもこんな痴態をさらした僕は、明日どんな顔で目覚めればいいのだろう。
思えば、引き金を引いたのは僕の方だ。
風呂場から引っ張ってきた青木が部屋の前で僕を追い越し、襖が開かれて。
招き入れた僕をベッドに優しく座らせて、向き合い跪く青木の顔つきがいつもと違うのは、眼鏡を外したせいじゃない。
パジャマのズボンに掛かる手を振り払おうとした手首を掴まれて、熱いキスの勢いに身体ごと倒されると同時に、着衣を奪われ開かれた脚の間に乗り上がられていた。
これが経験値の差なのだろうか。
捲られた上衣の下に躊躇いなく這う舌が、胸元の突起を掬い撫でつける。その感触に甘く震える僕の身体は臀裂を割る長い指の侵入を許し、あっけなく乱されていった。
青木も昨夜と態度が違い、僕が思わず達しても“可愛い”と微笑むだけで、体内で蠢く指を増やして甚振るのをやめない。
“いれろ”と強請ったのも僕だった。
にちゃ、ぐちゅと僕を捏ねる粘着音を身体の中の振動で聴く。ただとろけて快楽を受け続け、悦ぶだけの器と化した僕の身体。
汗だくのパジャマの上着が剥がれ互いの肌が密着すれば、否応なく感度が増して、アオキが動くたび、悲鳴に近い喘ぎが小さく零れ落ちる。
「……薪さん、スミマセン……俺、後戻りできないかも」
「し……なくていい……」
ここまでしといて急にそんな事を言うなんて、ちゃんちゃらおかしい。
裸の胸元を弄る手指、頭頂から降る荒い息。
奥だけを掻き混ぜる細かいストロークで僕の負担を最小限にとどめつつ、快楽を貪りながら青木は続けて訊いた。
「一緒が……いいんですよね……?」
加速する律動に脳を揺らされながら何度も頷くと、僕の張り詰めた性器が大きな手に包まれて扱かれ、ひとたまりもなく上り詰める。
と、同時にアオキの脈動と熱が僕の体内で爆ぜ、ある感情 に一気に呑まれた僕は動けない。
それは、ずっと感じることを恐れ、避けてきたしあわせ という感情――
「あの、さっきの話……」
「……ん」
「ちゃんと責任取っていただけるんですよね」
「……はあ?」
呆れすぎて話が頭に入ってこない。
“俺、もうあなたとしかできません。それにあなたを他の奴に奪われたくない”などと、勝手な言い分を並べ立ててくるお前 が本来なら僕 に対して責任を取るべきだろ!
「俺、頑張りますので、ずっと。俺と家族でいてください」
「……っ、いやだ」
僕は繋がれていた身体をほどいて、大男の下から這い出した。
「……こんなこと……二度とするもんか」
ベッドの隅でずり落ちていたブランケットの中に逃げ込んだ僕は、青木に丸めた背を向けて独り言のように呟く。
「でも、後戻りできなくていい、と仰いましたよね?」
ハア? そういうことだったのか?
さっさとコトを進めさせたくて急かしただけのつもりが、とんでもない言質を取られたものだ。
だいたい“責任を問う”のは抱かれた側であって、抱いた方じゃないと思う。
「……ええ、ほとんど」
駄目だ、ほとんどじゃ。お前の全部が欲しい。
「……っ」
両脚で背中に抱きついて重力に身を任せると、角度がずれて僕の僅か奥にアオキが捩じ込まれた。
「く……っ、まきさ……」
青木の喉から絞り出る獣みたいな低い呻き声に甘酸っぱく擽られながら、しがみつく身体が上下し始めている。
「……っ……あっ……は……ぁっ」
僕を上下に動かしてるのは、腰を支える青木の両手だった。
僕の内側を占めるそのカタチは、潤滑剤の助けを借りつつ、悦いところを引っ掛けながら抽送を繰り返す。
「……んむっ……はぁ……クチュ」
僕は喘ぎ声を誤魔化すように青木の唇に齧り付き、容赦ない愛撫の逆襲を受けて脳を蕩かす。ナカから熱く溶ける下半身から、身体も崩れていきそうだった。
「……ん……ぁっ……も……ムリ」
「なら……俺が代わります」
「……ぃあ……っ」
奥にいるアオキを軸にして、身体が半回転する。
潜る角度が変わっても、律動の勢いは止まらないどころか激しくなって、バックで繋がる身体が前のめりにベッドへ倒れていく。
「っ……あお……きっ……」
「まきさん……」
背中から抱きすくめられ、突いて抉っての一心不乱な愛撫に溶ける僕の身体は、覆いかぶさる大男の重みに押し潰されシーツに沈む。
快楽に溺れるとは、こういうことなのか。
もうこのまま死んだっていい……いやだめだ……舞を置いて死んではいけない。
でもこんな痴態をさらした僕は、明日どんな顔で目覚めればいいのだろう。
思えば、引き金を引いたのは僕の方だ。
風呂場から引っ張ってきた青木が部屋の前で僕を追い越し、襖が開かれて。
招き入れた僕をベッドに優しく座らせて、向き合い跪く青木の顔つきがいつもと違うのは、眼鏡を外したせいじゃない。
パジャマのズボンに掛かる手を振り払おうとした手首を掴まれて、熱いキスの勢いに身体ごと倒されると同時に、着衣を奪われ開かれた脚の間に乗り上がられていた。
これが経験値の差なのだろうか。
捲られた上衣の下に躊躇いなく這う舌が、胸元の突起を掬い撫でつける。その感触に甘く震える僕の身体は臀裂を割る長い指の侵入を許し、あっけなく乱されていった。
青木も昨夜と態度が違い、僕が思わず達しても“可愛い”と微笑むだけで、体内で蠢く指を増やして甚振るのをやめない。
“いれろ”と強請ったのも僕だった。
にちゃ、ぐちゅと僕を捏ねる粘着音を身体の中の振動で聴く。ただとろけて快楽を受け続け、悦ぶだけの器と化した僕の身体。
汗だくのパジャマの上着が剥がれ互いの肌が密着すれば、否応なく感度が増して、アオキが動くたび、悲鳴に近い喘ぎが小さく零れ落ちる。
「……薪さん、スミマセン……俺、後戻りできないかも」
「し……なくていい……」
ここまでしといて急にそんな事を言うなんて、ちゃんちゃらおかしい。
裸の胸元を弄る手指、頭頂から降る荒い息。
奥だけを掻き混ぜる細かいストロークで僕の負担を最小限にとどめつつ、快楽を貪りながら青木は続けて訊いた。
「一緒が……いいんですよね……?」
加速する律動に脳を揺らされながら何度も頷くと、僕の張り詰めた性器が大きな手に包まれて扱かれ、ひとたまりもなく上り詰める。
と、同時にアオキの脈動と熱が僕の体内で爆ぜ、
それは、ずっと感じることを恐れ、避けてきた
「あの、さっきの話……」
「……ん」
「ちゃんと責任取っていただけるんですよね」
「……はあ?」
呆れすぎて話が頭に入ってこない。
“俺、もうあなたとしかできません。それにあなたを他の奴に奪われたくない”などと、勝手な言い分を並べ立ててくる
「俺、頑張りますので、ずっと。俺と家族でいてください」
「……っ、いやだ」
僕は繋がれていた身体をほどいて、大男の下から這い出した。
「……こんなこと……二度とするもんか」
ベッドの隅でずり落ちていたブランケットの中に逃げ込んだ僕は、青木に丸めた背を向けて独り言のように呟く。
「でも、後戻りできなくていい、と仰いましたよね?」
ハア? そういうことだったのか?
さっさとコトを進めさせたくて急かしただけのつもりが、とんでもない言質を取られたものだ。
だいたい“責任を問う”のは抱かれた側であって、抱いた方じゃないと思う。