Device
「リセットは、した。おかしなことは……全くして、ない……が、それがどうかしたのか?」
いかがわしげな蜜に塗れて重なる二つの肉体のを棚に上げ、薪は精一杯の威厳を保って訊き返す。
いや、こちらもすみません。風呂に入ってて気づくのが遅れたんですが……と前置きして、今井は話しだした。
『装置のリセットを実行すると“緊急事態”が発動し、装置から180分間ストレッサー信号が放出されるのは、ご存知ですか?実は発動の通知が、一応被験者の俺のとこに届いていて……』
「ストレッサー?その作用は?」
「え、まさか知らずにリセットを……」と呆れながら、今井は説明書のページをタップして、かいつまんで読む。
放出されるストレッサーにより、直前までの同期と、その際与えられていた指令は全て取り消される。
そして、ストレッサー放出中の記憶は海馬に定着しないという一種の副作用も伴う、これを総じてリセットと呼ぶらしい。
つまりは自分が装置をリセットしてから今までの記憶は、酩酊して酔いが覚めれば忘れる状況に似た状態になるのだろう、と薪は理解する。
同期が外れた装置からは全方位的にストレッサーが放出されるらしいので、今一緒にいる自分の記憶も同じ末路を辿るに違いない―――
「……ぁうっ……何をっ……こら青木っ!」
考えごとをしてる隙に、首筋を甘く吸いナカで指を蠢かせてくる堪え性のない部下の頭をゲンコツで殴る。
『ああ、青木も一緒なんですね』
「……そうだ。僕の監視のもと、他から隔離している状態だ。このまま朝まで……見届けるから、も……大丈夫」
『……なら良かったです。実験は一時停止ってことで、装置は年明けまでそちらで預かって頂いていいですよね?』
「……ああ、っうん……」
『じゃ、おやすみなさい。よいお年を』
他人のプライベートに全く立ち入らない今井の高尚な姿勢に、今回は救われた。脱力した薪は、通話を終えた携帯を、ベッドから垂れ下がる手から床に滑り落とす。
そしてまた体内で見境なく蠢きだしている複数の指に拓かれる悦楽に震えながら、薪は安堵の息を深く吐いた。
良かった。
まだ引き返せる。
ふと、全身が弛緩し視界が温かく翳る。
体内を蕩かしていた指が引き抜かれ、開かれた脚の間に、熱に浮かされた大男の身体が割り込んできたからだ。
「薪さん……挿れますよ」
「ん……あ お き……」
発情した若い雄の容貌をこれ以上もなく愛惜しむ綺麗な笑顔。
見惚れる青木に、薪は伸ばした両腕で首筋に抱きついて、思い切り口づけた。
「……んむ……っチュッ……まきさ…………」
経験値は負けてるかもしれないが、齢を重ねた色香と募らせた情愛で圧倒すれば、勝ち目は十分にある。
「えっ……あの……っ、うあっ……」
瑞々しく汗ばむ肌の上を弾くようなリップ音でしっとりと撫で降ろしていきながら、ひるんだ大男をひっくり返して脚の間に入り込む。
そこで突入体勢をとる凶器をしっかり確保した薪は、熱を持て余す肌を悩ましげに擦りつけてゆっくり扱きながら、口唇と手指の愛撫で有り余る欲望を陥落へと導いていった―――
いかがわしげな蜜に塗れて重なる二つの肉体のを棚に上げ、薪は精一杯の威厳を保って訊き返す。
いや、こちらもすみません。風呂に入ってて気づくのが遅れたんですが……と前置きして、今井は話しだした。
『装置のリセットを実行すると“緊急事態”が発動し、装置から180分間ストレッサー信号が放出されるのは、ご存知ですか?実は発動の通知が、一応被験者の俺のとこに届いていて……』
「ストレッサー?その作用は?」
「え、まさか知らずにリセットを……」と呆れながら、今井は説明書のページをタップして、かいつまんで読む。
放出されるストレッサーにより、直前までの同期と、その際与えられていた指令は全て取り消される。
そして、ストレッサー放出中の記憶は海馬に定着しないという一種の副作用も伴う、これを総じてリセットと呼ぶらしい。
つまりは自分が装置をリセットしてから今までの記憶は、酩酊して酔いが覚めれば忘れる状況に似た状態になるのだろう、と薪は理解する。
同期が外れた装置からは全方位的にストレッサーが放出されるらしいので、今一緒にいる自分の記憶も同じ末路を辿るに違いない―――
「……ぁうっ……何をっ……こら青木っ!」
考えごとをしてる隙に、首筋を甘く吸いナカで指を蠢かせてくる堪え性のない部下の頭をゲンコツで殴る。
『ああ、青木も一緒なんですね』
「……そうだ。僕の監視のもと、他から隔離している状態だ。このまま朝まで……見届けるから、も……大丈夫」
『……なら良かったです。実験は一時停止ってことで、装置は年明けまでそちらで預かって頂いていいですよね?』
「……ああ、っうん……」
『じゃ、おやすみなさい。よいお年を』
他人のプライベートに全く立ち入らない今井の高尚な姿勢に、今回は救われた。脱力した薪は、通話を終えた携帯を、ベッドから垂れ下がる手から床に滑り落とす。
そしてまた体内で見境なく蠢きだしている複数の指に拓かれる悦楽に震えながら、薪は安堵の息を深く吐いた。
良かった。
まだ引き返せる。
ふと、全身が弛緩し視界が温かく翳る。
体内を蕩かしていた指が引き抜かれ、開かれた脚の間に、熱に浮かされた大男の身体が割り込んできたからだ。
「薪さん……挿れますよ」
「ん……あ お き……」
発情した若い雄の容貌をこれ以上もなく愛惜しむ綺麗な笑顔。
見惚れる青木に、薪は伸ばした両腕で首筋に抱きついて、思い切り口づけた。
「……んむ……っチュッ……まきさ…………」
経験値は負けてるかもしれないが、齢を重ねた色香と募らせた情愛で圧倒すれば、勝ち目は十分にある。
「えっ……あの……っ、うあっ……」
瑞々しく汗ばむ肌の上を弾くようなリップ音でしっとりと撫で降ろしていきながら、ひるんだ大男をひっくり返して脚の間に入り込む。
そこで突入体勢をとる凶器をしっかり確保した薪は、熱を持て余す肌を悩ましげに擦りつけてゆっくり扱きながら、口唇と手指の愛撫で有り余る欲望を陥落へと導いていった―――