エスとエムのはなし
捜査一課合同特捜本部の看板が、ようやく下ろされた科学警察研究所・法医第九研究室。
事務引き継ぎや書類送致をすべて終えた夜の第九は、数時間前までの喧騒が嘘のように静まり返っている。
特にここ三日間に及ぶ不眠不休の捜査は過酷を極めた。
だが、捜査関係者が去り、静寂しか残っていないはずの所長室には、まだ二つの影が揺れている。
妖しく絡み合い、溶け合う息遣いも漏れてきていて――
「……はぁ、っ……あお、きっ……」
内側から鍵の掛けられた室内。
重厚なプレジデントデスクの上に腰を下ろした薪は、その前に立つ大男の腰を両脚で挟み込み、正面から縋り付くようにして喘いでいる。
三日間着替えられなかったシャツが無造作に押し上げられ、はだけた白い胸元が青木の荒い呼吸になぞられ震えている。下着ごと引き下げられたスラックスが片膝に引っ掛かり、恋人部下のいきり立ったモノを受け入れ繋がった場所が、露骨な結合を晒していた。
そして内側の熱い粘膜は、怒張した雄の性器の動きに合わせて激しく擦れ合い、これでもかというくらい淫らな音を響かせている。
二ヶ月、会えていなかった、遠距離の恋人。
特捜で再会しても、当然のように仕事漬けの日々。
任務を終えた途端にこうなってしまうのも、二人にとっては必然だった。
普段、関係者を凍りつかせるあの峻厳な科警研所長の面影はどこにもない。
深く貫かれたまま自分の肩に噛みついてきて、逃げ場のない快楽を必死に圧し殺すその姿は、淫らでありながらどこか清らかで、美の極致として青木を惑わせ、翻弄し続けていた。
「薪さん……声、聴かせてください」
「……できる、か……こんな……場所でっ……」
「でも、ここでこうしてるのは……あなたの命令ですよ」
青木の低い声に身を竦める薪の内側がきゅぅっと締め付けられる。数日間脱げなかった衣類と、ストレス直下独特の汗の匂い。それがかえって今この瞬間、互いの「生」を貪り合う恍惚を煽り立て、快感をさらに高めていた。
「……はぁッ……もう、手加減できないかも」
青木がデスクに手をつき、体重を乗せてさらなる奥を突き上げる。
そのたび薪の綺麗な指先が背中のシャツを掴んで至福の感覚に震えた。
愛する身体の内外がもたらす極上の心地よさに苦悶する青木の耳元で、薪は息も絶え絶えに、自らをさらに堕とす言葉を紡ぐ。
「ナカだけじゃ……足りない……見える場所に……お前の……印を、残せ……」
理性をかなぐり捨てた薪の懇願に、青木の瞳の奥で昏い熱が爆ぜそうに疼く。
「……いいんですか? 明日、困るのは薪さんですよ」
意地悪く、無慈悲な力強さでわざとゆっくり腰を揺すって弱い所を擦ると、薪は堪らず悲鳴を上げて、青木のシャツの背中を破らんばかりに引っ張った。
「かま……わないっ……僕が誰のものか……鏡を見るたび……思い知るように……はやく……っ!」
支配されることを悦ぶ、淫らな薪の“夜の顔”。
青木はそんな「愛しき主人」の望みに応えるべく、白く細い首筋の、最も目立つ場所に唇で狙いを定める。
吸い上げる棘の、刺すような甘い痛み。
消えないほど鮮やかな「印」を深く刻みつけられた自虐的な快楽に、薪は甘い声をあげて吐精した。
静寂の戻った室内に、二人の重い呼吸だけが響く。
我に返った青木が、薪の太腿やシャツに散った痕跡を見て、慌ててデスク上のティッシュに手を伸ばした。
「……すみません。少し、度が過ぎました」
申し訳なさそうに、労るような動きで薪の身体を拭う大きな手。
薪はデスクに身体を預けたまま、乱れた髪の間から、後片付けをする青木の動作を惚けた視線で追っていた。
青木は薪の着衣を整えると、放心した身体を抱きしめて支えながら、スマートフォンでタクシーを配車する。
「続きは……あなたの家で、いいですか?」
この上なく図々しい問いかけなのに、抗う気力もない薪は、とろけた表情のまま小さく頷いた。
「まずはお風呂に入りましょうね……今度はもっと、優しくしますから」
言いなりとはこのことだ。青木に抱きかかえられるようにして、薪は所長室を後にした。
事務引き継ぎや書類送致をすべて終えた夜の第九は、数時間前までの喧騒が嘘のように静まり返っている。
特にここ三日間に及ぶ不眠不休の捜査は過酷を極めた。
だが、捜査関係者が去り、静寂しか残っていないはずの所長室には、まだ二つの影が揺れている。
妖しく絡み合い、溶け合う息遣いも漏れてきていて――
「……はぁ、っ……あお、きっ……」
内側から鍵の掛けられた室内。
重厚なプレジデントデスクの上に腰を下ろした薪は、その前に立つ大男の腰を両脚で挟み込み、正面から縋り付くようにして喘いでいる。
三日間着替えられなかったシャツが無造作に押し上げられ、はだけた白い胸元が青木の荒い呼吸になぞられ震えている。下着ごと引き下げられたスラックスが片膝に引っ掛かり、恋人部下のいきり立ったモノを受け入れ繋がった場所が、露骨な結合を晒していた。
そして内側の熱い粘膜は、怒張した雄の性器の動きに合わせて激しく擦れ合い、これでもかというくらい淫らな音を響かせている。
二ヶ月、会えていなかった、遠距離の恋人。
特捜で再会しても、当然のように仕事漬けの日々。
任務を終えた途端にこうなってしまうのも、二人にとっては必然だった。
普段、関係者を凍りつかせるあの峻厳な科警研所長の面影はどこにもない。
深く貫かれたまま自分の肩に噛みついてきて、逃げ場のない快楽を必死に圧し殺すその姿は、淫らでありながらどこか清らかで、美の極致として青木を惑わせ、翻弄し続けていた。
「薪さん……声、聴かせてください」
「……できる、か……こんな……場所でっ……」
「でも、ここでこうしてるのは……あなたの命令ですよ」
青木の低い声に身を竦める薪の内側がきゅぅっと締め付けられる。数日間脱げなかった衣類と、ストレス直下独特の汗の匂い。それがかえって今この瞬間、互いの「生」を貪り合う恍惚を煽り立て、快感をさらに高めていた。
「……はぁッ……もう、手加減できないかも」
青木がデスクに手をつき、体重を乗せてさらなる奥を突き上げる。
そのたび薪の綺麗な指先が背中のシャツを掴んで至福の感覚に震えた。
愛する身体の内外がもたらす極上の心地よさに苦悶する青木の耳元で、薪は息も絶え絶えに、自らをさらに堕とす言葉を紡ぐ。
「ナカだけじゃ……足りない……見える場所に……お前の……印を、残せ……」
理性をかなぐり捨てた薪の懇願に、青木の瞳の奥で昏い熱が爆ぜそうに疼く。
「……いいんですか? 明日、困るのは薪さんですよ」
意地悪く、無慈悲な力強さでわざとゆっくり腰を揺すって弱い所を擦ると、薪は堪らず悲鳴を上げて、青木のシャツの背中を破らんばかりに引っ張った。
「かま……わないっ……僕が誰のものか……鏡を見るたび……思い知るように……はやく……っ!」
支配されることを悦ぶ、淫らな薪の“夜の顔”。
青木はそんな「愛しき主人」の望みに応えるべく、白く細い首筋の、最も目立つ場所に唇で狙いを定める。
吸い上げる棘の、刺すような甘い痛み。
消えないほど鮮やかな「印」を深く刻みつけられた自虐的な快楽に、薪は甘い声をあげて吐精した。
静寂の戻った室内に、二人の重い呼吸だけが響く。
我に返った青木が、薪の太腿やシャツに散った痕跡を見て、慌ててデスク上のティッシュに手を伸ばした。
「……すみません。少し、度が過ぎました」
申し訳なさそうに、労るような動きで薪の身体を拭う大きな手。
薪はデスクに身体を預けたまま、乱れた髪の間から、後片付けをする青木の動作を惚けた視線で追っていた。
青木は薪の着衣を整えると、放心した身体を抱きしめて支えながら、スマートフォンでタクシーを配車する。
「続きは……あなたの家で、いいですか?」
この上なく図々しい問いかけなのに、抗う気力もない薪は、とろけた表情のまま小さく頷いた。
「まずはお風呂に入りましょうね……今度はもっと、優しくしますから」
言いなりとはこのことだ。青木に抱きかかえられるようにして、薪は所長室を後にした。