2070 薪誕 家族ぐらし

 午後の柔らかな陽光に照らされた冬の並木道。
 青木と薪、それぞれの手に両手を預けた舞が弾む足取りで向かっているのは「花とゆめ動物公園」だ。

 今日は1月26日、薪の誕生日の前々日。

​ 左右の手から伝わる確かな体温が、舞の心をさらに浮き立たせる。
 ときおり二人の腕を同時に大きく揺らすと、支柱の高さがまるで違うブランコみたいで。それは誰が見ても幸福な「家族」のシルエットをかたちどっていた。

 舞の手を引いていない方の薬指に宿る輝きを意識するたび、青木はこそばゆいような、誇らしいような心地に浮き足立ってしまう。
 昨年、30歳の自分の誕生日に薪へ贈ったペアリング。薪の方は落ち着いたものだ。至極当然という顔で、その指輪を嵌めた手を舞と繋いでいる。 
 家族の風景に美しく溶け込むその人を見つめる青木の胸の奥に、甘酸っぱい熱が込み上げた。

「ほら、やっぱり指輪してきて正解でしょ? コーちゃんとマキちゃん、本当のパパとママみたいだよ」

 薪とお揃いのパーカーにダウンベストを重ねた舞が、胸を張って機嫌よく言う。

「これでコーちゃんが、マキちゃんのお父さんに見えることは絶対ナイから、ねっ」

 思わず青木は苦笑した。
 薪と舞がお揃いコーデで出かけると聞いた当初、「俺が子供二人連れのシングルファザーとかに見えるんじゃないですか!?」と渋ったのは自分だ。
 そこですかさず舞が「コーちゃんはマキちゃんとお揃いの指輪があるから大丈夫だよ!」と正論で切り返したため、二人は絶句。

 今まで一緒にいる時には照れ臭くて嵌めたことがなかった指輪を、今日、はじめて二人でつけるという、記念すべき日(?)を迎えたのだった。
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