2069 青誕 実りのとき

 翌朝……いやもう昼になっている、誕生日の当日。

 郷土で“だぶ”と呼ぶ、とろみのある具だくさんの汁ものを二人して口にすれば、鶏肉入りの慶事らしい味わいが深く火照った身体の内に染みわたる。

 暖房をきかせてはいるが、青木はTシャツともふもふのズボン。
 同じ上着は薪が全身に一枚身につけているという、なんとも艶めかしく悩ましい状況だ。

「お前、いくつになった?」

「えっ…と、31です」

 ハァ、と返るのは呆れたようなため息。
「まだ出会った時の僕の歳にもなってないのか」と言わんばかりの、呆れつつも愛しげな吐息だ。

「落ち着いたらあっちへ戻りましょうね。まだ有り余る年頃なので」

「ばか」

 食欲より性欲が勝るのは、どうやら若い青木だけではないらしい。


「あ……っ……あっ、あお……き……」

 戻った先のベッドが早速小刻みに縦に揺れている。

 座った姿勢で抱き合い結ばれながら、青木の頭の片隅にたわわにみのる小さな実が朧げに浮かぶ。

「……これ……年齢の問題なのか?」

「いえ、たぶん……あなたが好きすぎるせいです」

 繋がったまま体位を変えて、背後からもっと奥まで潜り込むと、甘い喘ぎとともに薪のナカがきゅんと蠢いた。

「あ……んっ……」

 気持ちいいまま繋がり方を変えられるようになったのは、お互いのカラダがお互いに馴染んで溶けて、最高潮を長く保てているからだ。


「まきさん……かわいい」

 力強く腰を動かし愛しい身体の奥の熱を抉りながら、青木は考える。
 枯らさない、と笑ってくれたあの人の手の中にいた鉢が、どこにも見当たらない。けど、どこかで生きているのだろう、と。
 そうじゃなきゃ、優しいこの人がこんなに幸せな顔をし続けられるはずがないのだ。


 夕方になり、ケーサツのお偉い御二方は、ようやく結合を解いた身体をソファに横たえつつも、まだ互いの肌に唇を這わせている。

 PiPiPi−−−

 鳴動したサイドテーブルの携帯を鷲掴みした薪が、身を捩って少しだけ離れた。
 電話から漏れてくる太い声は、青木にも聞き覚えがあった。
 そして業務連絡は数分であっけなく完了する。

「……ん……明日の朝……福岡発つ前に第三管区じむしょに岡部が寄って欲しいそうだ」

「はい、承知しました」

 振り向いた薪の唇はすぐに青木の唇の愛撫に溶かされる。
 誕生日の主役は、艶めかしく潤う肌の滑らかさを腕の中に覆い隠して独り占めできる特権を味わうべく、またソファの上できりがない情事が繰り広げられるのだ。

 さすがの岡部も、そこまで気を回した訳じゃないだろうが――
 翌日岡部の用を済ませに第三管区に立ち寄ったおかげで、青木は思いがけない再会に涙することになる。

 所長席の窓辺に飾られた小さな鉢植え。
 大切に育まれ、いっぱいの陽光を浴びつつにぎやかに実りの時を楽しむ小さな濃桃色の真珠たち。

 その再会は、まだソファで何度も抱き合った後の話だ。
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