2067 薪誕ss 特捜と特別な夜の特権
今、俺が食べたいのは、薪さんだけ。
それは口説き文句でもなんでもなく、明らかに心と体が求めてる答えだ。
本当の 食事といえば、今日の昼に二日連続の麻婆茄子弁当を食べて以来何も口にしていない。にも関わらず、空腹より薪さんへの渇望がぶっちぎりで先走る。
ガキ臭い発想と揶揄られようと、俺にとって愛する人の誕生日を共に過ごす特権は、セックスだ。特別な夜を一つに結ばれたまま越えて、休日の朝がくる。そしてまた目覚めの薪さんを味わって……もう、三食薪さんがいい!
タクシーで帰宅後、即刻ウルトラファインバブルのシャワーで、いつもより丁寧に体を洗う俺。
性能のいいツールでいくら洗ったとて姿形が美化されるわけでもないけれど、自らを“プレゼント”と申し出た手前、磨き上げるのは礼儀だ。
そんなこといいから早く出て来い、という誰かの苛立つ声が聴こえてくるような気もしつつ――
なるたけ急いで上がってきたが、やはり薪さんはソファーに横たわり眠っていた。
精神が追い詰められてない限り、寝るのは得意な人だ。起きてる時はどんなにカリスマで、怖い人だか知ってるけど、同時に優しくて、擽ったがりで、どれだけ幸せに臆病なひとかも知っている。
俺は天使のように幼い寝顔を、緩みきった顔でしばらく見つめた。
目の中に入れても痛くない、大切な可愛い人。
それでいて、慾望に任せめくるめく淫らな行為に溺れて沈んでも、一点の穢れもない気高き人。
俺はずっと前から、この人と最期までいたいと決めていた。
もう、こうなる前からずっと。
差し伸べた手を何度振り払われてもびくともしなかったのは、今思えば俺の中でそれが決定事項だったからだろう。
飼われたその日から犬が主人を慕い、一生従い尽くすように、気づけば当たり前に添い遂げると決めていた。
それは穏やかで揺るぎない家族愛でもあり、激しい熱情と肉欲にうねる大波でもあって――
「遅かったな」
頬にかかる髪をそっと撫で上げる指にぴくりと反応して目を開けた薪さんは、とろんと瞳孔が大きく仔猫みたいに見上げてくる。
「疲れてるのか」
「いえ……恥ずかしいほど元気です」
「……」
ニュアンスが伝わったのか真っ赤になる薪さんは、もうくしゃくしゃに抱きしめて撫で、頬ずりして内も外も舐め回したいくらい可愛い。
「体冷やしますよ、ベッドへ行きましょう」
シャツ、ズボン、靴下……と点々と落としながらベッドの上で二回り小さな身体に覆いかぶさり、独占欲まるだしのキスで埋め尽くす。
「おい、待てっ……」
“誕生日プレゼント”に余裕なく待ったをかける人。色恋にかけては歳の差が開いた実感なんて全くない。
若々しく清らかな見た目同様この人は、経験の浅い俺が容易く手綱を握れるほど、このテの駆け引きには無垢だから。
「どうして……あなたももうこんなに……」
「だってお前の味……っ」
「もういいですよ。俺に抜く暇なんてないのは、あなたが一番ご存知でしょう?」
俺の心と体は常に薪さん一色。東京に行きたがりの室長だと周囲から認定済みだ。
特捜もMRIだけならわざわざ上京しなくてもいいのに呼ばれて飛んでいくのは、薪さんと岡部さんと俺、三人が一箇所に集えば、他のこと含めて間違いなくその何倍もの捜査が回せるからだ。
そうすれば、あの手この手で困難を乗り越えた後、極上の愉しみにも手堅くありつけるというものだ。
今の俺たちが特別な夜の特権を存分に行使できているように。
「だめ……だっ、ぼくもシャワーをっ」
「いい匂い……流さなくていいです」
「あっ、よせ……っそこ…、あっ……」
明かりを気にする余裕もなく、蠢く指を奥まで呑み込む指を、後ろから視線でも愛でる。
「すみません、もう……こっちから行きますね」
堪らなくなった俺は、腹ばう姿勢の綺麗な身体の腰を両手で支え、熱の滾る先端を薪さんのナカに押し込む。
「……ぁっ」
好い声。ぐずぐずに蕩けて喰い締めてくる入り口。支える両手にしっとり滲む滑らかな肌の火照り。性懲りもなく俺はまた罠に嵌まる。
甘い加虐心に任せ、愛しい身体が俺のカタチに染まって逝くのを五感でじっくり味わいながら、位置や角度を変えつつ隅々まで虐めて。
抱きしめてるつもりで、抱きしめられている。
弄んでるつもりの無垢な肌に溺れて、我を失い一滴残らず絞り取られていく。
明かりのついたままの室内で、達して、眠って、また繋がりあい、貪り溶け合って……薪さんの清らかな魔性に、肌の境界も日付の区切り目もわからないまま惑わされ、ふらふらのまま福岡へ飛び立つのだと思う。
こうしてますます離れられなくなっていくといい。
とにかく、来年も十年後も、何十年後も、あなたとこうしていたいです。
それは口説き文句でもなんでもなく、明らかに心と体が求めてる答えだ。
ガキ臭い発想と揶揄られようと、俺にとって愛する人の誕生日を共に過ごす特権は、セックスだ。特別な夜を一つに結ばれたまま越えて、休日の朝がくる。そしてまた目覚めの薪さんを味わって……もう、三食薪さんがいい!
タクシーで帰宅後、即刻ウルトラファインバブルのシャワーで、いつもより丁寧に体を洗う俺。
性能のいいツールでいくら洗ったとて姿形が美化されるわけでもないけれど、自らを“プレゼント”と申し出た手前、磨き上げるのは礼儀だ。
そんなこといいから早く出て来い、という誰かの苛立つ声が聴こえてくるような気もしつつ――
なるたけ急いで上がってきたが、やはり薪さんはソファーに横たわり眠っていた。
精神が追い詰められてない限り、寝るのは得意な人だ。起きてる時はどんなにカリスマで、怖い人だか知ってるけど、同時に優しくて、擽ったがりで、どれだけ幸せに臆病なひとかも知っている。
俺は天使のように幼い寝顔を、緩みきった顔でしばらく見つめた。
目の中に入れても痛くない、大切な可愛い人。
それでいて、慾望に任せめくるめく淫らな行為に溺れて沈んでも、一点の穢れもない気高き人。
俺はずっと前から、この人と最期までいたいと決めていた。
もう、こうなる前からずっと。
差し伸べた手を何度振り払われてもびくともしなかったのは、今思えば俺の中でそれが決定事項だったからだろう。
飼われたその日から犬が主人を慕い、一生従い尽くすように、気づけば当たり前に添い遂げると決めていた。
それは穏やかで揺るぎない家族愛でもあり、激しい熱情と肉欲にうねる大波でもあって――
「遅かったな」
頬にかかる髪をそっと撫で上げる指にぴくりと反応して目を開けた薪さんは、とろんと瞳孔が大きく仔猫みたいに見上げてくる。
「疲れてるのか」
「いえ……恥ずかしいほど元気です」
「……」
ニュアンスが伝わったのか真っ赤になる薪さんは、もうくしゃくしゃに抱きしめて撫で、頬ずりして内も外も舐め回したいくらい可愛い。
「体冷やしますよ、ベッドへ行きましょう」
シャツ、ズボン、靴下……と点々と落としながらベッドの上で二回り小さな身体に覆いかぶさり、独占欲まるだしのキスで埋め尽くす。
「おい、待てっ……」
“誕生日プレゼント”に余裕なく待ったをかける人。色恋にかけては歳の差が開いた実感なんて全くない。
若々しく清らかな見た目同様この人は、経験の浅い俺が容易く手綱を握れるほど、このテの駆け引きには無垢だから。
「どうして……あなたももうこんなに……」
「だってお前の味……っ」
「もういいですよ。俺に抜く暇なんてないのは、あなたが一番ご存知でしょう?」
俺の心と体は常に薪さん一色。東京に行きたがりの室長だと周囲から認定済みだ。
特捜もMRIだけならわざわざ上京しなくてもいいのに呼ばれて飛んでいくのは、薪さんと岡部さんと俺、三人が一箇所に集えば、他のこと含めて間違いなくその何倍もの捜査が回せるからだ。
そうすれば、あの手この手で困難を乗り越えた後、極上の愉しみにも手堅くありつけるというものだ。
今の俺たちが特別な夜の特権を存分に行使できているように。
「だめ……だっ、ぼくもシャワーをっ」
「いい匂い……流さなくていいです」
「あっ、よせ……っそこ…、あっ……」
明かりを気にする余裕もなく、蠢く指を奥まで呑み込む指を、後ろから視線でも愛でる。
「すみません、もう……こっちから行きますね」
堪らなくなった俺は、腹ばう姿勢の綺麗な身体の腰を両手で支え、熱の滾る先端を薪さんのナカに押し込む。
「……ぁっ」
好い声。ぐずぐずに蕩けて喰い締めてくる入り口。支える両手にしっとり滲む滑らかな肌の火照り。性懲りもなく俺はまた罠に嵌まる。
甘い加虐心に任せ、愛しい身体が俺のカタチに染まって逝くのを五感でじっくり味わいながら、位置や角度を変えつつ隅々まで虐めて。
抱きしめてるつもりで、抱きしめられている。
弄んでるつもりの無垢な肌に溺れて、我を失い一滴残らず絞り取られていく。
明かりのついたままの室内で、達して、眠って、また繋がりあい、貪り溶け合って……薪さんの清らかな魔性に、肌の境界も日付の区切り目もわからないまま惑わされ、ふらふらのまま福岡へ飛び立つのだと思う。
こうしてますます離れられなくなっていくといい。
とにかく、来年も十年後も、何十年後も、あなたとこうしていたいです。