2069薪誕 SCENT

「……ん……ふぁ………っ」

 襲いくる快楽から逃れようと反転する身体も、内側を捉えられたままでは、角度が変わり攻め口が変わるだけだ。湿った音を響かせ奥で蠢く指に腰が浮いていき、猫の姿勢で預けた薪の下半身は、もう自分のものじゃないみたいにぐずぐずに蕩けていた。

 指と舌で熱心に性感帯を探りあてる忠犬の熱い愛撫が、屹立した淫らな形の隅々までも丁寧になぞるから、薪は肌のあらゆるところを濡らして、逝くのを必死で堪えるしかない。

「よく……我慢できましたね」

 Sっ気を煽られた青木の熱い息が耳元を擽る。蕩けた狭い孔からローションと体液に塗れた指がまとめて引き抜かれ、大きな両手が薪の震える腰をしっかりと支え直した。

 来る……と、薪は息を呑む。

 腰を掴む手と、狭い窄まりを押し分けてくぷりと沈む青木の熱い先端。二つの肉体を繋ぐのがそこだけだから、否が応にも感覚が集中して物欲しげな震えが止まらない。

「っあ……」
 
「焦らされるの、好きですか?」

「くっ……!」

 そんなことより早く、とばかりに薪が後ろ手に青木の手首を掴んだ。
 焦れったげに震える腰が可愛くて、青木はわざとゆっくり挿入の過程を愉しんでいる。
美しさ、尊厳と瑞々しさの象徴のような白い身体を貫いていく瞬間の、背徳感に似た至福。
 互いの顔も視えない交接部だけで伝え合う、異常なまでの興奮と快感。
 “簡単に逝ってたまるか”と忍耐の塊のストロークをはじめれば、愛しいひとの中で擦れ合う甘い刺激に、一気に理性が溶け落ちていく。


「まきさん、こっち……向いて」

「ん……っはぁ……」

 深く突いたまま身体の向きを変えながら起こした身体が、対面座位の姿勢で抱きついてくる。
 乱れた髪の隙間から揺れるように覗く愛らしい瞳を見つめて接吻しながら、狭い襞肛の絡みつくようなうねりと、焼けるような熱に塗れて青木は何度も突き上げた。

 月曜も警察庁で仕事だから、薪の部屋には今日明日、二晩滞在できる。
 薪の誕生日に日付が変わるのは明日の晩だから、前夜はゆっくり穏やかに愛を交わそうとしていたのに。いつも捨て身でぶつかってくる薪にかかれば、自分の理性なんて跡形も無い。

 汗だくで上り詰めた身体を繋げたまま、首元にかじりついて喘ぎ声を噛み殺している薪を抱きしめていると、おこがましいけれど、愛されている実感しか湧いてこない。
 だからつい注ぎ込んでしまうのだ。全身全霊を薪の中へと。
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