2069 father's day
“来たときよりも美しく”
どんなことがあろうとも、こいつがそれを実践する男だというのは、週末デート後の自宅に一人残されたときの僕が肌身で知っていた。
「明日の朝は残りのスープでリゾットを作りましょう」
「よし。ならもう今夜はこのまま部屋に戻るか」
「あ、、はい」
僕の一声で今夜の片付けは中断。
少しだけ肌寒さを感じていたのを仕草で気づいた青木は、窯の蓋を閉じて頷き、僕の二の腕を擦るように支えて、寄り添うようにロッジへと連れ帰る。
「薪さん、先にシャワーをどうぞ」
「いや、いい。汗臭いお前が先に入ってこい!」
こいつの汗の匂いが嫌いなんじゃない。労ってやったつもりだった。
その気遣いに対して…………この仕打ちはないだろう!?
「おい、お前!」
タオルを腰に巻いて風呂場から出てきた僕は一直線にベッドへと突進する。
「勝手に洗濯しただろ!着替えが一つも……」
シュラフを覗き込む僕の背後では、二人が着ていた全ての服が洗濯され、干されて爽やかに揺れている。
「う~ん、まきさん、お着替えもってこなかったんですか?」
「っ、だっていつもお前が……」
泊まりのデートの着替えを青木に持ってこさせるのが当然になってる状況自体が特殊な件はすっかり棚に上げ、僕はシュラフの中で眠りこける大男を思い切り睨み付ける。
「もってきてますよ。リュックの背中側の内ポケット……二重になってて……外側の大きめのファスナーをあけると……ぱんつとか……」
寝ながらしゃべってるから、ムニャムニャと返事がききとりにくくて苛つく。
「ああもういい!お前のを寄越せっ」
「んあっ?ちょっ……待っ……」
室内の明かりは落ちているが、月の明るい夜だ。
「まきさん、落ち着いてください」
シュラフを剥いだ体の上に跨がってTシャツを引っ張る僕をのせたまま、寝ぼけながら上体を起こした大男。
向き合った僕はぎくりと固まった。
寝ぼけてるのは顔つきだけ、爛々と発情した雄の目つきに圧倒された僕の腰から、はらりとタオルが落ちる。
「あなた、俺を誘ってるんですか?」
「は?ちが……」
「そんなにお美しくて、いい匂いさせて、俺にどうしろと?」
僕の手が掴んでいたTシャツごと青木からほどけた勢いで身体が後ろに離れ……ると思いきや、両腕にがっしりと拐われるように抱き締められた勢いで腰が浮く。薄明かりの視界が反転して、見開いたままの僕の目は、大男の肌の熱と体の重さに閉じ込められ押し潰されていきながら、天井とにらめっこだ。
「服はいくらでもお貸しします。ただその前に……」
「ん……ふ………」
切実な形相で近づいた顔に胸をきゅんと締めつけられながら、唇を塞がれ、熱い舌が割り込んでくる。
「あなたを味わいたい」
「ば……かっ、よせ……っ……」
大事に愛でるように全身を撫で回す掌に唆され、僕の肢体は甘酸っぱく身震いしながら、身体を浮かして青木にしがみついている。
「いい、ですよね?」
「ダメ……だっ」
首筋を伝う濡れた唇に訊かれるこたえの真逆の反応をことごとく返す身体に、煽られる青木のキスがまんべんなく降り注ぐ。
荒い息を漏らす唇が僕の平らな胸を撫で突起を弄びはじめ、後ろに回って滑り降りる手指が臀部を包んで、窄まりを優しく押し上げて這入ってくる。
「っ…………あっ」
どうしてこうも僕はこいつに甘くなるのだろう。
「まきさん……」
「そ、なとこで喋るなっ」
指一本でも侵入を許せば、僕の身体はもう、そこを通る青木の膨大な質量を思い出して融け始めてる。
「ぁ……シュラフ……っ」
「大丈夫。丸洗いできます」
「あ、おきっ……あっ……」
「ほら、ちゃんと俺に掴まって」
羞恥さえ感じなくなるほど甘く、とろとろに、溶かされる。
翌朝早くから綺麗に庭を片付けた青木と、照れながら“おはよう”の挨拶を交わす時まで、僕は正常な意識を思い切り手放すのだ。
欲情に溺れ、あらゆる熱を発散し、深く眠りに沈んで、ふたたび真っ白な意識のなかからゆっくり浮かびあがるまでは。
どんなことがあろうとも、こいつがそれを実践する男だというのは、週末デート後の自宅に一人残されたときの僕が肌身で知っていた。
「明日の朝は残りのスープでリゾットを作りましょう」
「よし。ならもう今夜はこのまま部屋に戻るか」
「あ、、はい」
僕の一声で今夜の片付けは中断。
少しだけ肌寒さを感じていたのを仕草で気づいた青木は、窯の蓋を閉じて頷き、僕の二の腕を擦るように支えて、寄り添うようにロッジへと連れ帰る。
「薪さん、先にシャワーをどうぞ」
「いや、いい。汗臭いお前が先に入ってこい!」
こいつの汗の匂いが嫌いなんじゃない。労ってやったつもりだった。
その気遣いに対して…………この仕打ちはないだろう!?
「おい、お前!」
タオルを腰に巻いて風呂場から出てきた僕は一直線にベッドへと突進する。
「勝手に洗濯しただろ!着替えが一つも……」
シュラフを覗き込む僕の背後では、二人が着ていた全ての服が洗濯され、干されて爽やかに揺れている。
「う~ん、まきさん、お着替えもってこなかったんですか?」
「っ、だっていつもお前が……」
泊まりのデートの着替えを青木に持ってこさせるのが当然になってる状況自体が特殊な件はすっかり棚に上げ、僕はシュラフの中で眠りこける大男を思い切り睨み付ける。
「もってきてますよ。リュックの背中側の内ポケット……二重になってて……外側の大きめのファスナーをあけると……ぱんつとか……」
寝ながらしゃべってるから、ムニャムニャと返事がききとりにくくて苛つく。
「ああもういい!お前のを寄越せっ」
「んあっ?ちょっ……待っ……」
室内の明かりは落ちているが、月の明るい夜だ。
「まきさん、落ち着いてください」
シュラフを剥いだ体の上に跨がってTシャツを引っ張る僕をのせたまま、寝ぼけながら上体を起こした大男。
向き合った僕はぎくりと固まった。
寝ぼけてるのは顔つきだけ、爛々と発情した雄の目つきに圧倒された僕の腰から、はらりとタオルが落ちる。
「あなた、俺を誘ってるんですか?」
「は?ちが……」
「そんなにお美しくて、いい匂いさせて、俺にどうしろと?」
僕の手が掴んでいたTシャツごと青木からほどけた勢いで身体が後ろに離れ……ると思いきや、両腕にがっしりと拐われるように抱き締められた勢いで腰が浮く。薄明かりの視界が反転して、見開いたままの僕の目は、大男の肌の熱と体の重さに閉じ込められ押し潰されていきながら、天井とにらめっこだ。
「服はいくらでもお貸しします。ただその前に……」
「ん……ふ………」
切実な形相で近づいた顔に胸をきゅんと締めつけられながら、唇を塞がれ、熱い舌が割り込んでくる。
「あなたを味わいたい」
「ば……かっ、よせ……っ……」
大事に愛でるように全身を撫で回す掌に唆され、僕の肢体は甘酸っぱく身震いしながら、身体を浮かして青木にしがみついている。
「いい、ですよね?」
「ダメ……だっ」
首筋を伝う濡れた唇に訊かれるこたえの真逆の反応をことごとく返す身体に、煽られる青木のキスがまんべんなく降り注ぐ。
荒い息を漏らす唇が僕の平らな胸を撫で突起を弄びはじめ、後ろに回って滑り降りる手指が臀部を包んで、窄まりを優しく押し上げて這入ってくる。
「っ…………あっ」
どうしてこうも僕はこいつに甘くなるのだろう。
「まきさん……」
「そ、なとこで喋るなっ」
指一本でも侵入を許せば、僕の身体はもう、そこを通る青木の膨大な質量を思い出して融け始めてる。
「ぁ……シュラフ……っ」
「大丈夫。丸洗いできます」
「あ、おきっ……あっ……」
「ほら、ちゃんと俺に掴まって」
羞恥さえ感じなくなるほど甘く、とろとろに、溶かされる。
翌朝早くから綺麗に庭を片付けた青木と、照れながら“おはよう”の挨拶を交わす時まで、僕は正常な意識を思い切り手放すのだ。
欲情に溺れ、あらゆる熱を発散し、深く眠りに沈んで、ふたたび真っ白な意識のなかからゆっくり浮かびあがるまでは。
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