僕の可愛い忠犬一行

「薪さんお帰りなさい」
「ん……」

ただいまの言葉はキスに奪われる。

忠犬はお出迎えが上手だ。
何をしていても笑顔で玄関先に飛んでくるし、ブンブン振ってる尻尾(が薪には見える)は癒しでしかない。
そして止めどない熱烈な歓迎ぶりも――

「……ぁふ…………クチュ……」

だめだ。もう深まりそう。

「待て。着替えてくる」
「そうですね。夕食は済まされましたか?少し買い物して軽いもの作ってますので、もしよければご一緒に……」

忠犬はマテも忠実に守る。
名残惜しく離した唇は、桜海老とそら豆の炊き込みご飯と香り野菜の和風スープとかの話をしながら、着替える薪の一挙一動を見守り続ける。

「何だ?そこで待つ必要はないんだぞ」
「ハッ、すみません」

ちらりと振り返ると、青木の真っ直ぐな視線にがっちり捕らえられ思考が停止する。

「あなたが綺麗すぎて見惚れてました」

「……うん、もういい」

なんだか話すだけ無駄な気がしてきた。
会話が会話の意味をなさず、ヘンな気分を無闇に触発するだけだ。

そして着替えが終わればマテも自然解除。

「食事か風呂、どちらが先がいいですか?」
「ん……」

尋ねる先からキスを再開している堪え性のなさを叱れない、甘々な自分も結局、ダメな飼い主だった。
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