リクエスト_短編
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5月のある日。珍しく数日間雨が続き、何日かぶりの太陽に恵まれたイタリア某所。
ギャングチーム、パッショーネの暗殺チームのアジトでは書類仕事に勤しむ2人の男がいた。
片や机に向かい書き物をする者、片やソファに座りローテーブルの上の山積みの書類を仕分ける者。
黙々と作業をする男達だったが、坊主頭が頭巾頭の様子をうかがいながら話しかけた。
「あの子のこと、そろそろちゃんとしたほうがいいぜ」
「…何の話だ」
「とぼけんなよリーダー。情報管理チームのあの子だよ」
「…」
話しかけたられた頭巾頭──リゾット・ネェロは押し黙った。
坊主頭──ホルマジオの話す情報管理チームのあの子とは、リゾットの想い人のナマエのことだ。
歳は離れているが、謙虚で真面目。
それでいて強く迫られると断れない所がありそんな彼女に対して庇護欲が掻き立てられたリゾットは
すぐにただの別チームの人間以上の感情を持つようになった。
しかし、血生臭い生業のせいか踏み込んだ関係に進めずにいた。
そんなリゾットのことを見てきたホルマジオ(正しくは暗殺チームのメンバーたちを代表したホルマジオ)は
彼女との仲を進めろと尻を叩いたのだった。
「しかし、」
「しかしも何もねーぜ」
リゾットの言葉を遮るように、ホルマジオはフンと鼻を鳴らして
ローテーブルに足を乗せ、ソファに深く座り込んだ。
「ソルベとジェラートのことがあったんだ。
仕事柄あの子は表立って危ない目にあうことは少ないだろうが…
何かあったときに後悔するようなことあっちゃいけねーぜ」
ホルマジオが口にしたのはボスに消された2人の仲間のことだった。
2人のこと、そして彼女のことを脳裏に浮かべ、リゾットは一つ頷いた。
「そうだな…すまない、ホルマジオ」
「なーに、リーダーの幸せを喜ばねえ奴はいねえよこのチームに」
そうかと口の端に笑みを浮かべてリゾットとホルマジオは再度書類仕事に勤しむのだった。
***
ナマエはいつもと同じように暗殺チームに向けた重要書類を届けに来ていた。
前任者に押し付けられたこの仕事も、今では日頃関わることが少ない他チームとの交流、
延いては想い人に会うことができる大切なものになっている。
そんなナマエの想い人、リゾットは重要書類とにらめっこをしている。
「現地の下調べが必要そうだな…。ナマエ、付き合ってくれないか」
「えっ、下調べですか…? お役に立てるか…他の方のほうが」
「いや、お前に頼みたい」
「わ、わかりました…」
断れない雰囲気に流され頷くナマエ。そんな2人のやりとりを見ていたホルマジオが横から口を挟む。
「リーダー、より自然に見せるために恋人を装ったらいいんじゃないか?」
「えっ」
ナマエに気づかれないように目配せをするリゾットとホルマジオ。
意図を察したリゾットはそうしようと頷いた。
急な話に戸惑いを隠せないナマエだったが、頼むと真っ直ぐに目を合わせて頼んでくるリゾットに
今更できないとは言えず、わかりましたと返事をしたのだった。
***
潜入日当日。
ナマエはいつもスーツで訪れているアジトに華やかなワンピース姿で訪れていることに違和感を覚えていた。
恐る恐る扉をノックするとピンク色の長髪の青年、メローネが出迎えた。
メローネはナマエをとっくり見つめると微笑んだ。
「驚いたナマエか、花の妖精かと思ったな」
「こ、こんにちはメローネさん、…ありがとうございます」
入ってと迎え入れられたアジトの中にはリゾットを除いたメンバーが勢ぞろいしていた。
全員が揃っていることはナマエが記憶している中では一度もなかったが何故か今日は揃い踏み、
尚且つメンバーたちは自らの装いを口々に称賛してきた。
「一段とかわいいな」
「決まっているね」
「いつものスーツ姿も魅力的だが、今日は一層魅力的だな」
「素敵だな、お嬢さん」
メンバーそれぞれにお礼を言いながらリゾットの姿を探すナマエ。
その様子にプロシュートが大声でリゾットを呼ぶ。
しばらくするとこちらに近づく足音と共にリゾットが現れた。
彼はいつもの頭巾姿ではなく、髪は整えられておりグレーのスーツに身を包んでいた。
「来てくれたか、今日はよろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
メンバーに見送られアジトを出た2人。
連れ立って歩いているさまは傍から見れば少し年の離れたカップルにしか見えない。
そんな中リゾットがおもむろに口を開く。
「アジトでは伝えそびれたが、その恰好とても素敵だ」
「あ…ありがとうございます、リゾットさんも…いつもの格好と雰囲気は違いますが、とても素敵です」
ナマエの言葉にそうか、気に入ってくれたなら嬉しいと小さく微笑むリゾットだった。
***
現場の下調べはあっという間に終了した。
現地を確認し、周りの施設、道行く人間の様子などを少し観察したリゾットはものの数分で
充分だと下見が終了してしまった。
ナマエが早いですねというと、雰囲気の確認をしたかっただけだからなと答えるリゾット。
「(目的が終わったなら…もう帰るのかな)」
「ナマエ、すまないがもう少し付き合ってくれるか?」
「はい、もちろんです」
早々に解散かと考えていたナマエだったが、意外にもリゾットはまだ行くところがあると、
ナマエをフィレンツェの街へ連れ出した。 リゾットに連れられ昼食をとり、アルノ川のクルーズ、
川沿いのジェラート店に赴き2人でジェラートに舌鼓を打つ。
まるでカップルのデートのようにエスコートをするリゾットに対してナマエはこれは仕事だと思いながらも
胸が高鳴る気持ちが抑えられずにいた。
「さて、少し歩くが付いてきてくれるか」
「もちろんです」
そう言ってナマエがリゾットに連れられてきたのはバルディーニ庭園だった。
「わぁ…!」
「以前に花が好きだと言っていただろう」
「え…おっ、覚えていたんですか?」
「あぁ」
知り合ってしばらくの頃、アジトで疲れていた様子のリゾットに
ナマエは自身のスタンド能力を使い、花を贈ったことがあった。
癒しになればと送った花だったがそのことをリゾットが覚えていると思っていなかったナマエは
驚きながらも再び心臓が早鐘を打つ感覚を覚えた。
2人で庭園を連れ立って歩き、花畑や噴水を眺めながら言葉を交わす。
花好きのナマエの口数がいつもより増えたことにリゾットも顔が緩む。
藤棚に差し掛かるとナマエの表情はさらに明るくなった。
「すごい…!庭園の藤棚が美しいとは聞いていましたが、これほど…!」
「確かに…これは見事だ…」
リゾットも思わず感嘆の声を漏らした。
棚からは花穂が下がり、紫からピンクまで色とりどりの藤の花が咲き誇っている。
香りや花の美しさを楽しみながら回廊を抜けるとフィレンツェの街並みを一望できる高台に着いた。
「フィレンツェが一望できると聞いていたが美しいな」
「きれいですね…」
言葉少なに景色を眺めているナマエ。彼女にリゾットはナマエと声をかける。
「少しの間、目を閉じてくれないか」
「? はい、こうですか」
言われたとおりに目を閉じたナマエ。
すると細いチェーンが絡むような音がした後、胸元に微かな重みを感じる。
もういいぞとリゾットが声をかけるとナマエは目を開いて重みが増えた胸元を確認する。
するとそこには見覚えのない青いアイリスの花のネックレスが付けられていた。
「これは…」
「ああ、やはりよく似合っている」
これがリゾットからの贈り物だと気づいたナマエは嬉しさと共に申し訳なさから、
こんな高価なもの受け取れないとリゾットに告げる。しかし彼も引き下がるつもりは毛頭なかった。
「受け取ってほしい日頃の礼に」
「でも、」
「いや、日頃の礼はただの言い訳だ」
リゾットの言葉に首をかしげるナマエ。そのままリゾットは続ける。
「ただ形あるものを君に贈りたかっただけだ」
「それって…ひゃっ!」
突然ナマエは目の前にいたリゾットに抱きしめられた。急なことに彼女は体を強張らせる。
そんな彼女の耳にリゾットは顔を寄せる。
「ナマエ、君のことが好きだ」
「えっ…」
「いつもアジトに来る時の君は”できる女”といった雰囲気で素敵だが、
今日の君の可愛らしい姿を見たときは思わず言葉を失った、」
「ま、待って…」
「アジトに君がいるときはずっと目で追ってしまう。
オレのことを思って花を贈ってくれたあの時から、心臓をつかまれているんだ」
「っ…そ、そんな…」
茹でだこのように顔に熱が上がっていくナマエ。
一方リゾットは彼女の耳が真っ赤になっていることに気分を良くし、更に自らの吐息がかかるように続ける。
「返事を聞かせてくれないか?その小鳥がさえずるような可愛らしい声で、君の気持ちが知りたい」
「…っ!」
吐息がかかる毎に体をビクつかせながらナマエはコクコクと頷く。
しかしリゾットはあくまで言葉が欲しいともう一度返事を請う。
言葉を聞くまで引く気がないリゾットの様子にナマエは漸くの想いで口を開いた。
「わ…私も、同じです…同じ、気持ちです…っ!」
「あぁ…ありがとう、満たされる様な気持ちだ」
リゾットは慈しむように目を細め、ナマエを優しく抱きしめなおすと愛しい彼女に口づけを落とすのだった。
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