忍たま_短編
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「あれ…」
初めに違和感が出たのは喉だった。
くのいち教室4年の善法寺稲美は朝の自主鍛錬中、咳払いをしながら首を傾げた。
イガイガとした不快感、彼女はその状態に覚えがあった。
「(風邪、かなぁ…)」
7歳までの間、彼女は季節の変わり目毎に風邪を拗らせては寝込んでいた。
なかなか下がらない熱に止まらない咳。
症状が治まっても大事をとって部屋の中で安静にしていなさいと家に籠ることが多かった。
そのお陰で家事や本を読んでの勉強は苦なくできるようになったが、
引き換えに7歳までの外遊びの記憶はほぼ無いに等しかった。
「(まあ酷くなりそうだったら医務室に行けばいいかな)」
軽く考えながら授業を受けていた稲美だったが、
症状を自覚したせいかすべての授業が終わる頃には、目に見えて不調の度合いが上がっていた。
「稲美さん顔色悪いよ、大丈夫?」
「あんまり…。医務室に行って薬貰ってくる…」
くのいち教室の友達からも口々に顔色が悪い、大丈夫か、ふらついていると言われる始末。
友人一同も彼女の幼少期については承知しており、1年の頃から不調の気配を察すると
皆で結託し休ませにかかる一枚岩っぷりを発揮していた。
友人たちに付き添われ医務室に行くと丁度、校医の新野洋一先生が薬を煎じていた。
失礼します、と稲美が入室すると新野先生は一目で具合が悪そうですねと声をかけてきた。
「どんな症状ですか?」
「喉に違和感があるのと、体が怠いです。…あと頭痛も少し…。」
新野先生は風邪のひきはじめですねと言うと、棚から薬を取り出し
湯呑の中で白湯と溶かして差し出した。
「ひとまずこの薬で様子を見てください」
「ありがとうございます、いただきます」
湯呑の中身を一気に飲み干すと、苦味・酸味・少々の辛味が口の中いっぱいに広がった。
稲美は小さい頃も似たような味わいの薬を飲んでいた事を思い出した。
「(この味苦手だったな…)」
「医務室で休んでいきますか?」
「いえ、部屋で休みます」
誰かに移したら悪いのでと稲美が言うと何かあったら遠慮なく来てくださいねと新野先生は釘を刺した。
「お大事に」
「お世話になりました、失礼します」
医務室からくのいち長屋までの帰り道の間、すれ違うくのいち教室の面々からは
お大事に、ゆっくり休んでと口々に心配された。
女子間だと話のまわりも早いため学年を問わず声をかけられる。
稲美はありがたいような申し訳ないような気持ちになった。
部屋に戻ると友人たちが布団を敷いて待っていた。
申し訳ないと思っている間にあれよあれよと忍び装束を脱がされ、寝間着に着替えさせられた。
「ちゃんと休むんだよ~」
「あとでお粥持ってきますね」
「ひとまず寝て!」
「みんなありがとう…とりあえず寝るね」
おやすみ~と障子が静かに閉められる。
同じクラスの友人たちは稲美の1つ年下になるが、皆しっかりしており良い意味で遠慮なく接してくれる。
そんな彼女たちを稲美はとても好いており、全員が全員くのいちになれなくても
よいお嫁さんになれるだろうとつい微笑ましく思ってしまう。
「(…しっかり寝て治さないと)」
まだ逢魔が時も過ぎていないこの時間に布団に入るのはどこか罪悪感があるが、
体を休める為には寝るのが一番だと自分に言い聞かせ、彼女は早々に眠りに落ちた。
***
「食満、善法寺どこにいるか知らない?」
「伊作か? 今日はこの前の実習の補習だと言っていたが…」
5年は組 食満留三郎を呼び止めたのは同学年のくのいち教室の生徒、龍子だった。
彼女は大変男勝りな上、実力もなかなかのもので忍たまの上級生にも一目置かれる生徒だ。
留三郎が伊作は不在であることを伝えるとまいったな、と彼女らしくない困った顔をした。
「伊作に何か用だったのか?」
「いや…稲が熱を出したんだ」
「なんだって?!」
龍子が言うには、稲美は昨日から軽い発熱があり、
今朝部屋と廊下の間で倒れている所を隣室の生徒が見つけたらしい。
「それで、稲は大丈夫なのか…?」
「朝一で新野先生に見てもらった。当然だが、今日は休むと」
「そうか…」
大事なさそうな雰囲気にほっと胸をなでおろす留三郎。対して龍子はフッと笑った。
「そういえば、ようやく付き合い始めたんだって? バレない様に見舞うのはいいが…病人は襲うなよ」
「なっ、何言ってんだバカ!!!」
噛みつくように吠えた留三郎を見て、カラカラと笑いながらじゃあと龍子は去っていった。
***
「そういうわけで、善法寺はいないらしい」
「龍ちゃん…私、別に兄上がいないとだめ…ってわけじゃないよ?」
昼休み、龍子は稲美の見舞いに来ていた。
数刻前に留三郎に聞いた伊作の話をすると
起き上がって聞いていた稲美は少々苦しげだが、困ったような笑顔を見せた。
そんな彼女に龍子はそうか?と続けた。
「いつも体調不良の時は探しに行っていたじゃないか」
「…まあ月のものの時はそうだけど…、ウッ、ゲホッゲホ…」
喋りながら咽る稲美に大丈夫かと龍子が背中を摩る。しばらくすると咳は落ち着いた。
「ごめんね、ありがと…」
「これぐらい何とでもないさ。ただ…あんまり長居をすると稲の体の方に障るね」
何かあったら呼ぶんだよと言い残し、龍子は早々に部屋を後にした。
部屋にまた1人となった稲美は布団の中でぼんやりとしながら龍子の話を反芻していた。
「(兄上…いないのか…)」
幼い頃、自分は寝込み、伊作は外へということはままあった。
今回だって同じことだろうと気持ちを切り替えようとするが、
外からは遊んでいる下級生たちの元気な声が聞こえてくる。
その声は昔、自分1人だけ思うように遊べず床に臥せていた事を更に思い出させた。
「……さみしい…」
口から思わず零れた言葉に稲美自身驚きつつ、治らないことにはどうしようもないと
彼女はだるい体に活を入れ、布団をかぶりなおしたのだった。
***
稲美の意識が覚醒したのは真夜中だった。
頭痛と熱のせいか軽い浮遊感はあるが、何とか起き上がれる程度に回復していた。
立ち上がりずっと行けていなかった厠へ向かう。壁伝いに歩き、何とか用を足して部屋に戻る頃には
回復した体力を全て使い切ってしまったかのようにふらふらになっていた。
再び眠ろうと布団をかぶるが、日中のほとんどを眠って過ごしたためか
眼が冴えてしまい、中々寝付くことができない。
「(眠れない…、いつもならすぐ眠れるのに…)」
何とかして寝返りを打つが、眠気はやってこない。
眠れないとどうしても人は余計なことを考えてしまう。稲美は昼にも増して人恋しく感じていた。
「(いつもはこんな事にはならないのに…)」
何故こんなにも寂しいと感じるのだろうか、
自分の心が大層弱くなった気がして情けないような悔しいような気持ちになる。
段々と少しの風邪で寝込むような自分では
これから何をやっても上手くいかないのではと思考が落ち込んでいく。
様々な感情が彼女の中で渦を巻き、じわじわと目に涙が溜まっていく。
嗚咽が出始めると彼女は唇を嚙み、声が漏れないように頭から布団をかぶった。
「う゛~~~…」
その時だった。
ストンと上から何かが降りてきたような音がした。声が漏れて他の部屋の生徒が様子を見に来たのだろうか。
「(でも…それなら部屋の戸を開けるよね…)」
何が起こったのかと稲美が布団を少しずらすと布団を覗き込んでいる者と目があった。
そこには見知っているが、ここにいてはいけない者がいた。
「とめ…?」
「よう…って、泣いてるのか…?! そんなに辛いのかっ?」
部屋にいたのは恋仲の留三郎だった。
布団から覗く稲美が泣いていることに気が付くと彼は見るからに狼狽え始めた。
そんな留三郎に落ち着いてと声をかけ、稲美は涙を拭う。
「体はそれなりに…それより、なんで留がここに…?」
「稲が寝込んでるって聞いてな、昼に来てやれなくてすまん」
日中、龍子から話を聞き見舞いに来ようとしていた留三郎だったが、
委員会で大掛かりな外壁の修補が入ってしまい放課後の時間はすべて委員会に取られてしまっていた。
何とか修補を終わらせることはできたが、稲美の事ばかりが頭をよぎる。
いてもたってもいられず留三郎はくのいち長屋に忍び込んだのであった。
「明日、とも思ったがどうしても気になってな…」
「普通の風邪だよ? 心配しすぎだよ」
「稲が病弱な話はずっと伊作から聞いていたからな。…それに、大っぴらに心配できる立場になったんだ。
夜中でも朝方でもどこにいても駆け付けたいに決まってる」
恋仲になってからというもの、留三郎からの好意の示され方が増えたと思っている稲美。
実際に稲美が昼寝をしていると起きる頃には留三郎が隣で眠っていたり、
二人きりの時は僅かな時間でも手をつないでいたりと共に過ごす時間は以前より増えていた。
その好意の示され方に恋愛偏差値下の下の稲美は嬉しいと思いながらも恥ずかしさのあまり
どうにかなるのではないのだろうかと思うこともしばしばだった。
今の留三郎の言葉にも彼女は上手く返すことができず、赤面しながら小さい声で
ありがとうとだけ返事をするので精一杯だった。
「夕食は食べたのか? 薬は?」
「夕食は…お粥を作ってもらったけどあまり食べてなくて…。薬も飲めてない」
「わかった、少し待ってろ」
留三郎は彼女の枕元にある食べかけのお粥と、手を付けられていない薬を手にすると、
お粥の鍋を部屋にあった薬を調合するときに使用する小さい火鉢にかける。
お粥が温まると今度は湯を沸かし始めた。お粥が呑水に分けられると留三郎は稲美に向き合う。
「さあ、温まったからしっかり食べよう」
「ありがとう…って留?」
呑水を受け取ろうと稲美は起き上がり手を伸ばしたがその手はかわされてしまった。
彼女が首をかしげると、留三郎は少量のお粥を匙で掬い
少し冷ますとそのまま口を開けろとばかりに差し出した。所謂、”あーん”である。
「じ、自分で食べられるよ」
「ダメだ。病人なんだからしっかり看護されろ」
「でもっ、「いいから、ほら」…もう…」
差し出された匙を少々恨みがましく見ながらも彼女は口を開いた。
開かれた口に匙が入ると温かいお粥が口の中に流し込まれた。
「…うん、美味しい」
「よかったな」
稲美が嚥下したことを確認すると留三郎から再度匙が差し出される。
食べきるまで終わりそうにないことを察して稲美は大人しく”あーん”を受け入れて食事をすることにした。
やがて鍋が空になると、続けて火鉢にかけていたお湯で白湯を作り薬とともに差し出してきた。
「薬を飲まないと治るものも治らないぞ」
「うん…」
覚悟を決め、一気に薬を飲み干す稲美。昨日も飲んだがやはり独特の味は好きになれないと思った。
「ふぅ…ごちそうさまでした」
「よく食べきれたな。…他にも何かやってほしいこと、あるか?」
なんでもするぞと前のめりな留三郎。稲美はやってほしいこと…と呟く。
「汗、拭きたい」
「汗」
「風邪をひいたとき、いつも兄上が汗を冷やすと体に障るからって…、
それにお風呂入れてないし、気持ち悪い…」
「そ、そうだよな…少し待っていてくれ」
龍子の言葉が頭をよぎりながら、稲美の主張も尤もだと体を拭く準備をする留三郎。
桶にぬるま湯を準備し、手拭いを浸してきつく絞ると彼女へと手渡した。
「これで大丈夫か?」
「うん、ありがとう…」
留三郎が後ろを向くと、稲美は体を拭き始めた。
しかし、あれ?や、うん?などと、どうにも進みがよくないことが後ろを向いている留三郎でも
察せられるほど遅々としたものだった。堪らず留三郎が口を開く。
「稲、背中拭いてやるから手ぬぐい貸してくれないか?」
「え…」
「早く拭いてしまった方がいいだろう?」
「そう…だね、ありがとう留」
お願いします。と後ろから差し出された手ぬぐいを受け取り、稲美が背中を向けた気配を察して振り返る。
留三郎が振り返った先には上半身をはだけさせ、長い髪の毛を気怠げに前へと流して座る恋仲の姿があった。
思わず生唾を飲み込むが、いかんと頭を一振りし留三郎は稲美の汗を拭い始めた。
「力、強くないか?」
「うん…大丈夫」
「(……これはおれの方が大丈夫じゃない…!)」
汗でしっとりとした髪の毛と汗ばんだ項の視界、
更には病人と汗と彼女自身の匂いが混ざった嗅覚への多段攻撃は思春期の留三郎には刺激が強い。
「(稲は病人、稲は病人、稲は病人、稲は病人、稲は病人、稲は病人、稲は病人)」
何とかして首から背中、腰までの汗を拭うと留三郎は手ぬぐいを一度洗い再度稲美に差し出した。
「すまん、前はやってくれ」
「ごめんね、やらせちゃって」
「いや、思っていたよりその…刺激が強くてな…」
刺激とは何だろうかと首を傾げた稲美だったが一つ思い当たったようでハッとすると首だけで振り向いた。
「やっぱり汗臭かった?! ごめんね、留三郎っ」
「~~っ、違う!汗臭くなんてない!そもそも稲の汗の匂いを不快に感じたことはない!
…って!いや!こんなことを言いたいわけではなくて、つまりだな…!」
稲美の勘違いも、彼女が今にも体ごと振り向きそうな現状も、自らの本心駄々洩れの失言も、
一度すべてを落ち着かせるために留三郎は目の前の稲美を抱きしめた。
突然のことに大人しくなる稲美。大人しくなった彼女に胸をなでおろし、
万が一にも彼女の身体が視界に入らない様に目を瞑りながら留三郎は口を開いた。
「自分のすぐ手の届く所で、恋仲が、肌を晒している。…この状況が”刺激”だと言ったんだ…」
「…あ、」
ようやく現状に気が付いた稲美が声を漏らす。その様子にもう少しだけ腕の力を強めて留三郎が続ける。
「弱っているところを如何こうしたくはない、だから…」
「うん…ごめんなさい、勘違いして」
「いや、おれもすまん…。…寝間着も新しくした方がいいな、替えはあるか?」
押し入れにと稲美が言うと留三郎は体を離し、押し入れを開ける。その間に稲美は汗を拭う。
「新しい寝間着後ろに置いておくぞ」
「ありがとう」
身体を拭い、寝間着も着替えた稲美。
再度礼を言おうと留三郎の方を振り向くとなんと新しい布団が敷かれていた。
「布団…新しく敷いててくれたの…?」
「ああ、布団にも汗が染みたんじゃないかと思ってな」
「何から何まで…申し訳ない…」
言葉の通り、申し訳なさそうな稲美に対して、気にするなと笑顔を見せる留三郎。
稲美は新しい布団に入ると人心地ついたように息を漏らした。
「…それで、なんで泣いてたんだ?」
「覚えてたの…?」
恥ずかしそうに布団を引き上げる稲美にもちろんと言いたげにうなずく留三郎。
「昔の事を思い出して…。
こんなことでいいのかな、これからきちんとやっていけるのかなって思っていたら…その…勝手に…」
「そうか…」
「でも、もう大丈夫。留が来てくれたから、もう寂しくない」
そう言ってはにかむ稲美にドッと心拍数が上がる留三郎。
稲美が留三郎と恋仲になってから感じていた変化と同じように、留三郎も稲美の変化を感じ取っていた。
第一に今まではあまり見せていなかった弱みを見せてもらえるようになったと感じていた。
今回のような体調不良や、実技の授業での少しドジな失敗を恥ずかしそうに話してくれるようになった。
更に彼女自身、弱みを見せ始めたことにあまり自覚的ではないようで、
その点が留三郎の庇護欲を高める一端となっていた。
「ねえ留、手握ってもいい?」
「ん?ああ、いいぞ」
稲美が布団から控えめに出した手を留三郎がしっかりと握る。
日々鉄双節棍を扱う留三郎の手は皮膚が厚く、タコがある。
稲美の手も町娘と比べると鎖鎌を扱う分タコやささくれはあるが、
それと比べても男女の差がはっきりと感じられる。
「手、あったかい…眠れそう」
「このまま握ってていいから、ゆっくり休んでくれ」
「ありがと…」
手から流れ込んでくる異なる体温が心地よかったのか、
稲美は目を閉じると間もなく規則的な呼吸で眠り始めた。
「(眠ったか…)」
留三郎は恋仲の寝顔を見ながら緊張の糸を少し緩めた。
部屋に来て一番に見たのが泣き顔だったため、余程具合が悪いのかと心臓が凍りつくような心地だった。
「(食事もできたし、顔色もそんなに悪くはなさそうだ)」
目の前で眠る彼女は息苦しそうな様もなく穏やかな寝息を立てている。
そんな彼女を見ているうちに留三郎の瞼も重くなってきた。
「(手は…離さないでいたい…)」
数少ない彼女からのおねだりである手を離すことが惜しい留三郎。
しばらく繋いだ手を見つめ、もう片方の腕を枕にするように寝転がる。
「(朝早くに戻れば…大丈夫だろう…)」
寝転がると本格的に瞼が落ちてきた。
最後に眠る彼女の横顔をしっかりと焼き付けて、留三郎も眠りについた。
***
パチリと、稲美はいつも通り朝の鍛錬を行う時間に目を覚ました。
頭痛も倦怠感も感じられず、格段に体の調子が良いことがわかった。
「ん…?って!」
すぐ横を見るとすやすやと眠る留三郎の姿があった。
「(手、繋いだままだ…)」
繋いだ手をそのままに眠っている彼へ嬉しいような擽ったいような気持ちになる稲美。
彼女は少し上体を起こし、彼の頬に口づける。
「…ありがとう、留」
小さい声で感謝を伝えると彼女はもう少し眠ろうと、再度枕へ頭を預けたのだった。
***
数日たった放課後。
すっかり全快となった稲美と任務から帰還した伊作は留三郎とともに熱を出したことを話していた。
「えっ、熱が出たの? 大丈夫だった?」
寝込みがちだった幼少期をよく知る伊作は、稲美の額へ流れるように手を当てて熱を測っている。
そんな伊作に、稲美はもう全快ですと苦笑いをした。
「くのいち教室の友達に助けてもらいました。それに、夜は留がいてくれたので大丈夫でした」
「そうだったの? ありがとう留三郎」
「恋仲だからな、当然だ」
驚いた様子の伊作に、留三郎も腕を組み少々得意げに笑う。
更に仲が深まったような2人を見た伊作は、少々考え込むと
妹には聞こえない様に留三郎へちょっと、と耳打ちをする。
「2人の事だからぼくが言うことじゃないかもしれないけど…、
学生のうちは避妊だけはしっかりした方がいいよ…」
「ひっっ…! 伊作!違うぞ!"そういうこと"は一切ない!!!」
「うわっびっくりした、どうしたの?」
何か誤解を受けていることだけはわかる留三郎が目を白黒させながら声を上げ、
その声に驚きどうかしたのかと問う稲美。
そんな稲美にさらに慌てながら、何でもないと深掘りだけはされないように有耶無耶にしようとする留三郎と、
あれっ?違うの?と伊作は首を傾げるのだった。
