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にぃに、と呼ばないで-後半戦-
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期待された晩ご飯後。
(ちなみにメニューは定番のカレー)
風呂を済ませ、後は寝るだけ。
もう日付が変わろうとしているのだが、姫は用意されている自分の部屋に帰る様子はない。
「姫?まだ寝なくていいのか?」
さっきから欠伸ばかりの姫の目は、もう半分くらい夢の中のようだ。
その目で、オレをじぃっと見つめて
「ここで寝る。いいでしょ、秀にぃに。」
「え・・・」
いや、それはちょっと・・・。
いくらわだかまりは解けたと言ってもそれは・・・。
「一人じゃ寂しいよ、秀にぃに・・・」
「困ったな・・・」
「秀にぃに、お願い・・・」
懇願するようにオレを見る姫。
まぁ、もう姫眠そうだし、オレが床で寝ればなにも問題はないか・・・
「ベッド、使っていいから、もうお休み」
姫の表情がぱあっと明るくなる。
いつもの、あの笑顔だ。
「ありがとう、秀にぃに!」
あれから二時間。
姫は規則正しく寝息を立てているようだ。
床に横になって、ぼんやりと天井を眺める。
姫のことを考えていた。
全く知らない土地へ一人で行って、言葉も通じなければ土地勘もない。
友達も、なかなか出来なかったのではないだろうか。
日本に友達がいない、という彼女。
まだ15歳の少女。
姫の笑顔が、頭をよぎる。
ーーーあんな風に笑えるまで、どのくらいかかったのだろうか。
「秀にぃに・・・」
自分を呼ぶ声で、目が覚めた。
しばらく考えているうち、眠っていたようだ。
窓から見える空が少し明るくなってきている。
ぼんやりとした意識の中、
「秀にぃにってば・・・」
また自分を呼ぶ声が聞こえる。
「姫・・・どうした?」
姫はベッドから出てオレの傍らに座っていた。
身体を起こして、姫の顔をのぞき込む。
姫の瞳は、不安そうに揺れていた。
「怖い夢みちゃった・・・」
よほど怖い夢だったのか、姫は震える手でオレの服の裾を引っ張った。
「秀にぃに、怖かった・・・」
言いながら、オレに抱きつく姫。
まるで小さな子供のようだ。
「大丈夫、夢だよ、大丈夫」
なだめるように震える姫の肩を優しく撫でた。
「秀にぃ・・・に・・・」
潤んだ瞳で、見つめられる。
姫の涙に、朝陽が反射して宝石のように輝いている。
昼間何度も見たあの笑顔は今、不安そうな表情に変わってしまって、まるで別人のよう。
なんだか胸が、ざわざわする。
自分の中の何かが、崩れてしまいそうだ。
いけない。
このままでは・・・
姫は変わらず不安そうな瞳でこちらを見ていた。
鼓動が、早くなるのが分かる。
いけない。
いけない・・・
先に動いたのは、姫だった。
オレの頬に、ちゅと軽い音を立てて口づける。
「秀にぃに・・・怖かったよ・・・」
耳元で、囁かれた。
ーーーー狐が、心の中で笑っている気がする。
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