｢38℃…か…｣

この頭痛とダルさは、やはり熱があるからだったか…。

｢しばらく横になっていた方がよさそうだね｣

柔らかく優しい笑みをうがべてこちらを見る彼は、私の幼なじみの南野秀一くん。

言いながら彼は椅子にかけてあったカーディガンを私に着せてくれた。
ここは私の家、私の部屋。
時刻は午後３時を少し過ぎたところ。
穏やかな日差しが、春の訪れを知らせている。
けれど、熱のせいか私は少し寒気がしていた。

｢ありがとう。カーディガン、とっちゃってゴメンね。｣

午後になり、暖かくなってきたため、秀一は着ていたカーディガンを脱いで椅子にかけていた。
それを、私に着せてくれたのだ。

｢いいよ。暖かくして、少し休んだ方がいい。
まだ寒いなら窓も閉めようか？｣
｢ううん、もう大丈夫だよ。ありがとう。
少し寝ちゃうかもしれない…せっかく秀くんが遊びに来てくれたのに…｣

私はもぞもぞと布団に潜りながら｢ゴメンね｣と小さく謝った。

｢俺がいたらゆっくり眠れないかな｣

ベッドに潜り込んで頭だけ出す私の傍に腰掛けながら秀くんは首をかしげた。
いつもの優しい瞳で見つめられてドキリとしてしまう。

平常心…と心に言い聞かせ

｢秀くんがいいなら居てくれると嬉しいな。
今日は家に誰も居ないし、寂しい…｣

我ながら情けないことを言う。病気の人間は大概寂しがり屋になるもの…よね？

｢わかった、じゃあ本でも読んでるよ。
ゆっくりお休み。｣

優しく頭をポンポンされてしまった…。

こういう類の事を、秀一は自然と出来てしまうので恐ろしい。