Main story II
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『待って…待って、かっちゃん…!』
暗闇の中、幼い少女は1人の少年の背中を追いかけている。少年は振り向く事なくまた歩いていった。
『ううっ……まってよぉ……』
躓き泣いていると、自分の手は高校一年生の物となっていた。そして見上げると、爆豪がヴィラン達に連れ去られるところだった。
『勝己!!勝己!!!』
声をあげるもその場にいる緑谷や爆豪には声が届いていない。
なつはまた暗闇に堕ちていった。
─────
『!!』
目の前には消灯された部屋の天井。消毒液の匂いが鼻を刺激する事から、病院に居るのだと悟った。
そうだ…私はあの後意識を失って…先生や、みんなは…?……勝己は…?あれからどのくらい経った…?あんな事件、きっと何かニュースでやってる筈…
『っ…!』
身体はだるさと頭痛、そして目眩がする。頭と両腕には包帯が巻かれていた。
なつが痛みをこらえ、外を見ると緑谷と轟、切島、飯田、八百万がみえる。
『みんな…こんな夜中に……』
なつは点滴を引きずりながら、必死に足を動かした。
─────
なつが病院の外に出たとき、飯田は緑谷のほおをグーで殴っていた。
飯田「俺だって悔しいさ!心配さ!当然だ!!俺は学級委員長だ。クラスメイトを心配するんだ!!
爆豪君だけじゃない!君の怪我をみて、床に伏せる兄の姿を重ねた!君たちが暴走した挙句、兄のように取り返しのつかない事態になったら……!!僕の心配は、どうでもいいっていうのか!!」
飯田は苦しそうに緑谷の肩に手を置いた。
飯田「僕の気持ちは、どうでもいいというのか…」
緑谷「飯田君…」
轟「飯田…」
飯田「ハッ…」
冷静な轟の声に飯田はそちらを見た。
轟「俺たちだって、何も正面切ってカチ込む気なんざねえよ。」
飯田「え?」
轟「戦闘なしで助け出す。」
切島「要は隠密活動!それが俺ら卵にできる、ルールにギリ触れねえ戦い方だろ!」
『ねぇ…勝己が、どうか…したの……?無事…だよ、ね…?』
皆が振り向くと、痛々しい姿のなつが目を泳がせながら立っていた。
緑谷「あ…」
八百万「なつ…さん……」
飯田「なつ君、目が覚めたのか!体の具合は…」
『ねぇ…カチ込むって……なに?』
デク君、私に勝己が狙われてるって言わなかったのは…私が必ず動くって分かってたからだよね…?勝己の事、私の代わりに守ってくれたんだよね…?ねぇ、目を逸らさないでよ…皆んなだって、そんな苦しそうな顔しないでよ……そんなのまるで……まるで勝己が……
轟「爆豪が攫われた。」
『は……はは……そ、そんな冗談笑えないよ、焦凍……勝己が、攫われたなんて…そんな事……』
静まり返ったそれは、肯定を意する。
『そっか……じゃあ、守らなくちゃ……私が、勝己を……』
轟「なつは行くな。」
『なんで…?私は足手纏い…?』
緑谷「違うよっ…なつちゃんは…」
『分かってるよ!!ヴィランの目的の一つが私であったように、せっかく助けられた私が行くとダメなことくらい………それに、怪我のせいで今は白眼もまともに使えない…………何の役にも立たないことくらい……』
緑谷「くっ…」
八百万「そんな…」
『分かってる、分かってるよ……けど……大好きな人が……勝己が危険な時に……何も出来ないなんて、やだよ!!』
なつが声を振り絞って言うと、足元がふらつき八百万はそれを支えた。
轟「……」
切島「なつ、お前……」
飯田「なつ君……」
八百万「……私が、なつさんの代わりに同行しますわ。」
『ヤオモモ、ダメだよ…危険すぎる……』
八百万「ヒーローとしての規則はどんな事があろうと、決して破ってはならない。本当は止める気でここに来ました……が、万が一を考え、私がストッパーとなりますわ。」
緑谷「僕も……自分でも分からないんだ……手が届くと言われて、居ても立っても居られなくなって……助けたいと思っちゃうんだ。」
緑谷は元々身体が勝手に動いてしまう。根っからのヒーローな性格。なつもそれをよく知っている。
『いず、くん…私も……』
緑谷「なつちゃんは、かっちゃんが戻ってきた時に元気な姿を見せれるように、待っててよ。
今のなつちゃんが一緒にきたら、それこそ僕がかっちゃんに怒られちゃうよ。かっちゃんにとって、君は大切な人なんだ。」
『!!』
出久君は、「昔から、なつちゃんが僕といる時に怪我してたらすっごく怒られたんからね?怖かったんだよ?」と冗談っぽく話してくれている。
辛い筈なのに私に心配させまいと出久君は言ってくれてる。
なつは溢れる涙を拭いて、にっこりと笑った。
『じゃあ、皆絶対無事で帰ってきてね?約束破ったらハリセンボン飲ませるんだから。』
轟「死ぬだろ、それ…」
切島「ハハっ、死なねえように無傷で帰んなきゃだな!」
八百万「約束ですわ。」
一人黙っていた飯田は「平行線か…」と呟き考えると、決意したように皆を見た。
飯田「ならば俺も連れて行け。」
切島「飯田!」
『飯田君…』
飯田「月下君との約束もあるんだ。俺も委員長として責任を持って引率しなければならない。月下君は、その代わり必ず安静にする事。分かったな?」
『うん。』
なつが頷くと、轟はなつの手を握った。
轟「なつ。俺はなつが好きだ。」
『えっ…』
緑谷「とっとと轟君!?」
緑谷は顔を真っ赤にしている。他のみんなも驚いて轟を見たが、本人は冷静だった。
轟「じゃあ行ってくる。」
『えっ……あっ、うんっ…気をつけて…』
なつに見送られ、5人は病院から出発した。