スラムダンク
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体育館に、練習終了を告げる心地よい静寂が訪れる。
「よし、片付け! 戸締まり、最後は誰だ?」
赤木の声に、三井が「俺だ」と短く答える。
「わかった。月下、三井。頼んだぞ」
赤木はそう言い残し、最後に一度、完璧に磨き上げられたコートを見渡してから部室へと向かった。
着替えを終えた部員たちが、一人、また一人と帰路につく。
流川は無言で自転車にまたがり、イヤホンをして校門を抜けていく。
『リョータ、お疲れ様。花道も、今日のリバウンド凄かったよ』
なつが二人に声をかけると、宮城は「なつさん、お先に失礼します。」と言い、桜木は「がはは! さすがなつさん、見る目がある!」と上機嫌で校門を抜けていった。
なつは彩子にも「お疲れ様」と手を振り、賑やかな声が遠ざかるのを見送った。
─────
最後の一人が校門を出て、あたりが急に静かになる。
三井くんが体育館の鍵を職員室に返しに行き、校門のところで待っていた私の元へ戻ってきた。
「……待たせたな」
夕暮れの街灯が、少し伸びた彼の髪をオレンジ色に染めている。
二人で歩き出すと、アスファルトを叩く靴の音だけが響いた。
『お疲れ様、三井くん。今日もシュート、すごかったね』
私が隣に並んで微笑むと、彼は一瞬、照れたように視線を泳がせてから、自分の首筋を乱暴にさすった。
「……おう。……なあ、なつ」
『ん? どうしたの?』
「お前……いつまでそれなんだ?」
三井くんの声が、静まり返った道に低く響く。
『え、それって?』
「呼び方だよ。……いつまで名字で呼ぶんだよ、お前は」
『……三井くん、って呼び方のこと?』
私が聞き返すと、彼はさらに耳を赤くして、ポケットに手を突っ込んだ。
「……宮城のことも、桜木のことも、お前は名前で呼んでるだろ。……けどよ、俺のことはずっと苗字呼びって……。付き合ってんのに、一番遠い気がすんだよ」
三井くんにとっては、自分よりも下の代の二人が名前で呼ばれているのが、耐えられないほどの「壁」に感じていたようだった。
その横顔は、中学の頃の自信満々な彼からは想像もつかないほど、不器用で、いじらしい。
『……三井くん。私ね、三井くんって呼ぶの、好きなんだよ。三井くんがいなかった二年間も、心の中で何回も呼んでたから。戻ってきてくれた実感が、その名前に詰まってるんだもん』
「……お、おう。それは……分かってるよ。でも……」
三井くんは立ち止まり、私の目をじっと見つめてきた。
「……せめて、二人っきりの時くらい……呼んでみてくれよ。一回でいいから」
街灯の下、期待と不安が入り混じったような、彼のまっすぐな瞳。
私は心臓が跳ねるのを感じながら、口の中でその名前を転がしてみた。
『……ひ、寿、くん』
蚊の鳴くような声で呼んだ瞬間、三井くんの目が見開かれた。
次の瞬間、彼はバッと顔を片手で覆い、そのまま反対側を向いて早歩きし始めた。
「……っ!! クソ……これ、心臓に悪すぎるだろ……」
『み、三井くん!? 待ってよ!』
「……呼ぶなっつーの! いや、呼んでいいんだけど……あー、もう!」
彼は髪をくしゃくしゃにかき乱すと、真っ赤な顔のまま、でも隠しきれない笑みを浮かべて私を横目で見た。
「……卑怯だわ、お前。……そんな顔して呼ぶなんて。……いいよ、もう。しばらくはそのままで我慢してやるよ」
『三井くん?』
「……なんだよ」
『……寿くん』
「……っ!! 調子乗んなバカ!!」
彼は照れ隠しに私の頭を少し乱暴に撫でると、少しだけ歩調を緩めて、私の歩幅に合わせてくれた。
その手は、さっきまでよりも少しだけ近くにあって。
私は、彼の隣を歩きながら、心の中でまたその名前を唱えた。
「三井くん」と呼ぶたびに感じる、安心感。
「寿くん」と呼ぶたびに感じる、特別な高揚感。
どちらも、私にとってはかけがえのない、彼を愛する証だった。
end
「よし、片付け! 戸締まり、最後は誰だ?」
赤木の声に、三井が「俺だ」と短く答える。
「わかった。月下、三井。頼んだぞ」
赤木はそう言い残し、最後に一度、完璧に磨き上げられたコートを見渡してから部室へと向かった。
着替えを終えた部員たちが、一人、また一人と帰路につく。
流川は無言で自転車にまたがり、イヤホンをして校門を抜けていく。
『リョータ、お疲れ様。花道も、今日のリバウンド凄かったよ』
なつが二人に声をかけると、宮城は「なつさん、お先に失礼します。」と言い、桜木は「がはは! さすがなつさん、見る目がある!」と上機嫌で校門を抜けていった。
なつは彩子にも「お疲れ様」と手を振り、賑やかな声が遠ざかるのを見送った。
─────
最後の一人が校門を出て、あたりが急に静かになる。
三井くんが体育館の鍵を職員室に返しに行き、校門のところで待っていた私の元へ戻ってきた。
「……待たせたな」
夕暮れの街灯が、少し伸びた彼の髪をオレンジ色に染めている。
二人で歩き出すと、アスファルトを叩く靴の音だけが響いた。
『お疲れ様、三井くん。今日もシュート、すごかったね』
私が隣に並んで微笑むと、彼は一瞬、照れたように視線を泳がせてから、自分の首筋を乱暴にさすった。
「……おう。……なあ、なつ」
『ん? どうしたの?』
「お前……いつまでそれなんだ?」
三井くんの声が、静まり返った道に低く響く。
『え、それって?』
「呼び方だよ。……いつまで名字で呼ぶんだよ、お前は」
『……三井くん、って呼び方のこと?』
私が聞き返すと、彼はさらに耳を赤くして、ポケットに手を突っ込んだ。
「……宮城のことも、桜木のことも、お前は名前で呼んでるだろ。……けどよ、俺のことはずっと苗字呼びって……。付き合ってんのに、一番遠い気がすんだよ」
三井くんにとっては、自分よりも下の代の二人が名前で呼ばれているのが、耐えられないほどの「壁」に感じていたようだった。
その横顔は、中学の頃の自信満々な彼からは想像もつかないほど、不器用で、いじらしい。
『……三井くん。私ね、三井くんって呼ぶの、好きなんだよ。三井くんがいなかった二年間も、心の中で何回も呼んでたから。戻ってきてくれた実感が、その名前に詰まってるんだもん』
「……お、おう。それは……分かってるよ。でも……」
三井くんは立ち止まり、私の目をじっと見つめてきた。
「……せめて、二人っきりの時くらい……呼んでみてくれよ。一回でいいから」
街灯の下、期待と不安が入り混じったような、彼のまっすぐな瞳。
私は心臓が跳ねるのを感じながら、口の中でその名前を転がしてみた。
『……ひ、寿、くん』
蚊の鳴くような声で呼んだ瞬間、三井くんの目が見開かれた。
次の瞬間、彼はバッと顔を片手で覆い、そのまま反対側を向いて早歩きし始めた。
「……っ!! クソ……これ、心臓に悪すぎるだろ……」
『み、三井くん!? 待ってよ!』
「……呼ぶなっつーの! いや、呼んでいいんだけど……あー、もう!」
彼は髪をくしゃくしゃにかき乱すと、真っ赤な顔のまま、でも隠しきれない笑みを浮かべて私を横目で見た。
「……卑怯だわ、お前。……そんな顔して呼ぶなんて。……いいよ、もう。しばらくはそのままで我慢してやるよ」
『三井くん?』
「……なんだよ」
『……寿くん』
「……っ!! 調子乗んなバカ!!」
彼は照れ隠しに私の頭を少し乱暴に撫でると、少しだけ歩調を緩めて、私の歩幅に合わせてくれた。
その手は、さっきまでよりも少しだけ近くにあって。
私は、彼の隣を歩きながら、心の中でまたその名前を唱えた。
「三井くん」と呼ぶたびに感じる、安心感。
「寿くん」と呼ぶたびに感じる、特別な高揚感。
どちらも、私にとってはかけがえのない、彼を愛する証だった。
end
