速度松(おそチョロ)
ピカッ。ドンガラガッシャーン!
「うわあっ!」
耳を劈くような音にチョロ松は耳を押さえて、しゃがみこんだ。そんな姿を嘲笑うかのように、雷が再び勢い良く鳴る。
ガッシャーン!
「ううー……早く止んでよ……」
涙目で空を見上げる。雨は止むどころかますます力を強めていた。
公園を見つけ、休憩所のような場所で何とか雨風はしのげているがいつまでもこうしているわけにはいかない。現に、雨に降られたチョロ松の身体は徐々に体温を失っている。シャツにパーカーというこの薄着では、風邪をひいてしまうだろう。かといって、雷のせいでここを動けないのも確かだった。
「もう、ほんと神様恨む……」
自嘲気味に呟くと同時に、何度目か分からないほどの雷で情けない叫び声を上げた。
─もう、耐えられない。誰か助けて。
─おそ松兄さん
「チョロ松!」
え?
振り返ろうとすると、後ろから強く抱きしめられる。ふわりと香った大好きな匂いと、じわりと温かい体温に涙が零れ落ちた。
「おそ松兄さん!」
身体ごと後ろを向いて、思い切り抱きつく。大きく優しい手が、背中をゆっくり摩った。
「ごめんな。こんなに冷えて……。何でこんな遠くにいるんだよ。お兄ちゃん、探したよ」
「ごめんなさい……」
おそ松はチョロ松の身体を離すと、口元を緩ませて涙を拭った。その姿を見て、チョロ松の目からも益々涙が零れる。
「あー、そんなに泣かない泣かない。折角の可愛い顔が台無しだって」
軽口を叩きながらチョロ松の涙を丁寧にハンカチで拭いてくれるおそ松に、ぎこちなく笑いかけた。
「可愛いって……同じ顔だろ」
「確かに」
にかっと笑うおそ松がやけに懐かしく思えて、再び抱きつく。おわっと声を上げながらも、強く抱きしめ返してくれるおそ松の肩に顔を埋めた。
「ひどいこと言って……ごめん」
「ひどいこと?ああ、あの大嫌いっていうやつか。それなら、おれも言っただろ?お互い様だって。ごめんな」
「……しつこかったんだろ。色々聞いて」
声が震えそうになるのを我慢しながら言うと、おそ松はあちゃーと空を仰いだ。そしてしばらく黙り込んだ後、ぽつりぽつりと話し始める。
「……あれはおれが馬鹿だった。心配してくれてたんだって、お前が飛び出してから初めて気がついた。なんて事言ったんだろうって……。後悔した。それに中々帰ってこないから、すごい悲しかった。もう会えないんじゃないかって、思った。お前があれで傷ついたんだったら、マジで謝る。だから……」
「だから?」
「もう、おれの前からいなくならないで……」
弱々しい声だった。いつもは適当なことを言って面白がっているくせに、繊細で傷つきやすい。恋人になって新たに知った一面だった。
ふ、と笑って今までより強くおそ松を抱きしめる。肩に顎を乗せて、耳の横で囁いた。
「一生、お前の横にいるって」
おそ松が息を呑んだのが分かった。チョロ松を抱く手の力が強くなる。
「その前に、おれがお前を離さない」
「ほんと?」
「ほんと。やっと捕まえたんだ。絶対に離さない。一生、守ってみせる」
─一生、守ってみせる。
心にじんわりと暖かいものが広がった。出し尽くしたはずなのに、眼にじんわりと涙が浮かぶ。
違うよ、おそ松兄さん。離さないんじゃなくて、ぼくが離れられないんだよ。デリカシーなくて、適当で、おっちょこちょいで。だけど優しくて、一途で、ぼくのことを想ってくれる。そんなあなたから、離れられない。離れようとも思わない。
あ、忘れてたとおそ松が呟いてポケットをかき回した。ちゃりんと鎖のような音がしたと思うと、首にひんやりしたものが当たる。驚いて、身体を起こした。
「何?」
「じっとして。じっとして」
目を細めて悪戦苦闘しながら、やっとおそ松が離れた。見ると、赤く小さな宝石を付けたネックレスが首にかかっている。そっと手の上に載せると、宝石はきらきらと輝いた。目を見開いておそ松を見る。
「これって……」
「おれら、男同志じゃん?指輪はハードル高いからさ、ネックレスだったらお揃いに良いかなーって思ったわけ。そしたら、それが緑のやつとペアで置いてあったんだよ。おれらのために作られたようなもんじゃん?早速買おうと思ったんだけど、金が足りなくてさあ。こっそりバイトしてた。だから、夜遅くなった。サプライズにしたかったから、言わなかったんだよ」
おそ松が鼻の下を擦りながら、得意そうに説明する。その首に緑の宝石を付けたネックレスがかかっていた。
「……っ」
「ちょ、泣くなって!もう買えたから、バイト辞めたから!夜遅くならないから!」
「そういうことじゃないって」
「じゃあ、何で……」
「嬉しいから」
「え?」
「すっごく、嬉しい。ありがとう」
涙を飲み込み、微笑む。焦っていたおそ松も、嬉しくてたまらないという風に笑った。 誰もいない公園に、二人の笑い声が響く。あれだけ降っていた雨も、いつの間にか止んでいた。
ふぅと息をついて、おそ松がチョロ松に手を差し出す。
「帰ろうぜ」
「うん」
しっかり手を繋いで、おそ松とチョロ松は歩いていく。二人の眼下に広がる雨上がりの街は、信じられないほど綺麗で眩しかった。
~終わり~
初めての速度松、書いてみました!
下手くそですね(笑)
次はイチャイチャさせるつもりです!多分!
リクエストあったら、言ってくださいね
ネタがありません!
これからも、よろしくお願いします!
「うわあっ!」
耳を劈くような音にチョロ松は耳を押さえて、しゃがみこんだ。そんな姿を嘲笑うかのように、雷が再び勢い良く鳴る。
ガッシャーン!
「ううー……早く止んでよ……」
涙目で空を見上げる。雨は止むどころかますます力を強めていた。
公園を見つけ、休憩所のような場所で何とか雨風はしのげているがいつまでもこうしているわけにはいかない。現に、雨に降られたチョロ松の身体は徐々に体温を失っている。シャツにパーカーというこの薄着では、風邪をひいてしまうだろう。かといって、雷のせいでここを動けないのも確かだった。
「もう、ほんと神様恨む……」
自嘲気味に呟くと同時に、何度目か分からないほどの雷で情けない叫び声を上げた。
─もう、耐えられない。誰か助けて。
─おそ松兄さん
「チョロ松!」
え?
振り返ろうとすると、後ろから強く抱きしめられる。ふわりと香った大好きな匂いと、じわりと温かい体温に涙が零れ落ちた。
「おそ松兄さん!」
身体ごと後ろを向いて、思い切り抱きつく。大きく優しい手が、背中をゆっくり摩った。
「ごめんな。こんなに冷えて……。何でこんな遠くにいるんだよ。お兄ちゃん、探したよ」
「ごめんなさい……」
おそ松はチョロ松の身体を離すと、口元を緩ませて涙を拭った。その姿を見て、チョロ松の目からも益々涙が零れる。
「あー、そんなに泣かない泣かない。折角の可愛い顔が台無しだって」
軽口を叩きながらチョロ松の涙を丁寧にハンカチで拭いてくれるおそ松に、ぎこちなく笑いかけた。
「可愛いって……同じ顔だろ」
「確かに」
にかっと笑うおそ松がやけに懐かしく思えて、再び抱きつく。おわっと声を上げながらも、強く抱きしめ返してくれるおそ松の肩に顔を埋めた。
「ひどいこと言って……ごめん」
「ひどいこと?ああ、あの大嫌いっていうやつか。それなら、おれも言っただろ?お互い様だって。ごめんな」
「……しつこかったんだろ。色々聞いて」
声が震えそうになるのを我慢しながら言うと、おそ松はあちゃーと空を仰いだ。そしてしばらく黙り込んだ後、ぽつりぽつりと話し始める。
「……あれはおれが馬鹿だった。心配してくれてたんだって、お前が飛び出してから初めて気がついた。なんて事言ったんだろうって……。後悔した。それに中々帰ってこないから、すごい悲しかった。もう会えないんじゃないかって、思った。お前があれで傷ついたんだったら、マジで謝る。だから……」
「だから?」
「もう、おれの前からいなくならないで……」
弱々しい声だった。いつもは適当なことを言って面白がっているくせに、繊細で傷つきやすい。恋人になって新たに知った一面だった。
ふ、と笑って今までより強くおそ松を抱きしめる。肩に顎を乗せて、耳の横で囁いた。
「一生、お前の横にいるって」
おそ松が息を呑んだのが分かった。チョロ松を抱く手の力が強くなる。
「その前に、おれがお前を離さない」
「ほんと?」
「ほんと。やっと捕まえたんだ。絶対に離さない。一生、守ってみせる」
─一生、守ってみせる。
心にじんわりと暖かいものが広がった。出し尽くしたはずなのに、眼にじんわりと涙が浮かぶ。
違うよ、おそ松兄さん。離さないんじゃなくて、ぼくが離れられないんだよ。デリカシーなくて、適当で、おっちょこちょいで。だけど優しくて、一途で、ぼくのことを想ってくれる。そんなあなたから、離れられない。離れようとも思わない。
あ、忘れてたとおそ松が呟いてポケットをかき回した。ちゃりんと鎖のような音がしたと思うと、首にひんやりしたものが当たる。驚いて、身体を起こした。
「何?」
「じっとして。じっとして」
目を細めて悪戦苦闘しながら、やっとおそ松が離れた。見ると、赤く小さな宝石を付けたネックレスが首にかかっている。そっと手の上に載せると、宝石はきらきらと輝いた。目を見開いておそ松を見る。
「これって……」
「おれら、男同志じゃん?指輪はハードル高いからさ、ネックレスだったらお揃いに良いかなーって思ったわけ。そしたら、それが緑のやつとペアで置いてあったんだよ。おれらのために作られたようなもんじゃん?早速買おうと思ったんだけど、金が足りなくてさあ。こっそりバイトしてた。だから、夜遅くなった。サプライズにしたかったから、言わなかったんだよ」
おそ松が鼻の下を擦りながら、得意そうに説明する。その首に緑の宝石を付けたネックレスがかかっていた。
「……っ」
「ちょ、泣くなって!もう買えたから、バイト辞めたから!夜遅くならないから!」
「そういうことじゃないって」
「じゃあ、何で……」
「嬉しいから」
「え?」
「すっごく、嬉しい。ありがとう」
涙を飲み込み、微笑む。焦っていたおそ松も、嬉しくてたまらないという風に笑った。 誰もいない公園に、二人の笑い声が響く。あれだけ降っていた雨も、いつの間にか止んでいた。
ふぅと息をついて、おそ松がチョロ松に手を差し出す。
「帰ろうぜ」
「うん」
しっかり手を繋いで、おそ松とチョロ松は歩いていく。二人の眼下に広がる雨上がりの街は、信じられないほど綺麗で眩しかった。
~終わり~
初めての速度松、書いてみました!
下手くそですね(笑)
次はイチャイチャさせるつもりです!多分!
リクエストあったら、言ってくださいね
ネタがありません!
これからも、よろしくお願いします!