空はいつまでも青く 紡ぐ糸【明治編・中の参巻(東京)】 鳥はいずこへ

【明治編・中の弐巻(東京)】残月、からの続きとなっております。
第81章~第120章


《登場人物》
夢主:
この物語の主人公、数奇な運命のもと幕末、明治へと飛ばされる

斎藤 一:
警視庁勤務、新撰組の生き残り
横浜で偶然会った夢主を抜刀斎が不在の為一ヶ月自宅に住まわせる
夢主と相思相愛
妻(時尾)在宅中

四乃森蒼紫:
京都料亭葵屋の住人
その正体は江戸城隠密御庭番衆御頭
最後の御頭の務めを悟った後、東京で緋村剣心を助ける。
夢主が斎藤に気があるのを知りつつ恋心を抱く

沢下条 張:
志々雄の十本刀の一人だった(刀狩の張)
現在斎藤の密偵として働く

その他登場人物:
密輸事件で捕まった海軍軍人青年:長州維新志士、平田の甥

平田:工部省の役人で長州維新志士
   甥を海軍に入れ都合のいいように使おうとしていた。
   内務卿の伊藤(伊藤博文)の工部省時代の右腕 

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目次

  • 91.謀略の影 (張・斎藤・夢主・御庭番衆)

    不審な視線・・気に入らんな

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  • 92.御庭番衆VS夢主 (御庭番衆・夢主・恵・玄斎・蒼紫)

    不審な視線・・気に入らんな

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  • 93.樹海にあるもの (蒼紫・夢主・恵)

    連れて帰ってやらねば

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  • 94.張のぼやき (斎藤・張・川路・蒼紫・恵・夢主)

    トンズラ秒読み開始

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  • 95.退院報告 (蒼紫・斎藤・夢主)

    斎藤と蒼紫の仲

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  • 96.つむじ風 (斎藤・蒼紫・夢主・恵)

    其々の帰る場所

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  • 97.煙草の匂いの上着 (斎藤・夢主)

    小さな幸せのひととき

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  • 98.幕末の亡霊 (斎藤・夢主)

    斎藤の好きだった人?

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  • 99.強敵 (斎藤・夢主)

    抜刀斎より手強い相手

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  • 100.世の中とはこんなもんです (斎藤・夢主・時尾)

    かれこれ家にたどり着いたのは、診療所を出てすでに半日は過ぎていた。



    歩く速さはいつもの半分以下。



    休憩もたくさん。



    武尊は今日も自分の所へ来てくれたのは巡察の途中だと知って斎藤に申し訳なくて何度も謝った。



    だが、斎藤は、



    「たまにこんなにゆっくりする巡察も悪くない。」



    と、さほど気にはしていなかった。



    それよりも頭の中は先ほど決まった“対時尾対策“がうまくいくかどうかでいっぱいだった。



    巡察がてら武尊の見舞いに行ったはいいものの、まさか退院だとは思ってもなく機転を利かせて自分の上着を貸してはみたが、せめて代りの制服があれば時尾にバレる確率はもっと下がったはずだった。



    が、今更それを言ってもしかたがない。



    ただ、一つ自分達にとって救いなのは、今日は時尾が月に一度お茶を習いにいっているというその日なのだ。








    二人が藤田家へ戻ったのは夕方前、主人が帰ってくるには早すぎる時間である。



    斎藤はいつも通り玄関に入り念のため妻がいない事を確認する為、



    「帰ったぞ。」



    と、声をかけた。



    しーん・・・。



    物音のしない我が家に、



    (よしっ!)



    と、気合を入れると



    「いいぞ、武尊裏へまわれ。」



    と、斎藤は玄関先の武尊を呼びいれた。



    そして二人は即座に風呂場へ向かった。



    武尊は入院中、誰かによって体は拭かれていたものの、髪の毛は汗と脂でゴワゴワしていてしかも病院の匂いが微かにしみついていたからだ。



    「武尊、上脱げ、頭こっちに出せ。どうせ背中が痛くて腕が上がらないだろう。」



    「は、はい。」



    斎藤に言われるまま、上着を脱ぎ頭を下にして



    斎藤に首を差し出した。



    斎藤は桶に残り湯を入れ、包帯にかからぬようそっと、頭に注いだ。

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