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258.四乃森蒼紫の闇・壱 (蒼紫・夢主・翁)
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「何をしている。」
突如聞こえた聞き覚えのある声に武尊は全身が凍り付いた。
よく知っている声のはずなのに温度のないその声に武尊は声さえ咄嗟には出す事が出来ない。
何て言い訳しようと考える間もなく背後が薄暗くなり気配が濃厚になるが武尊は視線さえも動かす事が出来なかった。
武尊の右手の上に酷く優しく蒼紫の手が重なり畳を代わりに持つ。
蒼紫は黙ってそのまま畳をもとに戻し、立ち上がると床の間の横の書院造の違い棚の前に立った。
武尊は畳が戻されても俯いたままその場から立ち上がれずにいた。
沈黙が流れる。
黙って部屋に入り荒らしてごめんなさいという謝罪の気持ちとこれでまた刀を返してもらえないかもしれないという恐れで武尊はどう切り出していいのか分からずにいると蒼紫の方から言葉が漏らされた。
「俺は『早く身体を休めろ』と言っておいたはずだが。」
「うん・・聞いた。」
武尊はやっとのおもいで正座のまま蒼紫の方へ向きを変えた。
蒼紫は、
「まあ何をしていたか大方想像は出来る。」
と言い武尊を注視する。
「ごめんなさい・・なかなか返してもらえないから・・。」
武尊がようやく顔をあげ蒼紫の方をみると障子を背にした蒼紫の顔の表情は暗くてよく分からなかった。
「探し物はこれか?」
と蒼紫が壁をどんと叩くと天井から刀袋に入った刀が落ちて来た。
それを蒼紫がパシッと片手で握り武尊の方に突き出した。
「あっ!」
いったいどんな仕組み!?天井も一応探したけど何もなかったのに!と、驚くも武尊は刀に吸い寄せられるように立ち上がりフラフラと刀に近づいた。
手を伸ばせば刀に手が届くという所で蒼紫は刀をスッと下し武尊に問うた。
「何故今この刀を探す。」
刀を引っ込められて武尊は立ち止まりぽろりと本音を漏らした。
「明日にでも山に帰ろうと思って・・。」
蒼紫の息をのむ音がして再び沈黙が訪れた。
【帰るから刀を返して】
の一言をもう少しで言えそうだと喉までその言葉を込み上げた時蒼紫の言葉が重ねられた。
「これだけお前の事を心配しても・・心も身体も全てを捧げても・・俺はお前に振り向いてさえももらえないんだな。」
「・・そ、それはっ。」
静かに悲しみを湛えた声に武尊は即答出来ない。
それに武尊は知っている。
蒼紫ネクラでもなく冷酷なわけでもない。
本当は誠実で優しく何でも出来る超高性能イケメンだという事を・・。
だが問題はそこではないのだ。
武尊は蒼紫という人間が好きだ。
好きを通り越して愛おしいほどだ。
だけどそれは恋心では決してないと分かっている。
蒼紫には本当に幸せに長生きして欲しいと切に願う。
だから分かってもらうために武尊は何度も言った言葉を繰り返した。
「私が好きなのは斎藤さんだから・・蒼紫の気持ちには答えられない。」
蒼紫はまたそれかと思いつつ言い返す。
「仕事熱心な斎藤の事だ。あれではもう当分こちらに来ることはないだろう。なのにお前は後を追わず山に帰るという。つまり斎藤と別れたという事だ。仮に斎藤への想いが捨てられないというのを百歩譲ってもいい。なのに何故比古清十郎を選ぶ。それなら最初から比古清十郎を全身全霊を賭けて愛していると言えばいい。」
蒼紫の言う事が正論過ぎて武尊は何も言えない。
そんな武尊に蒼紫は追い打ちをかけるように言う。
「武士にとって刀は己自身も同然、斎藤の分身を携えてお前は比古の処へ戻るというのか?」
「だって帰るっていう約束だから・・。」
「お前を信じて送りだしたのはいいが自分の女を他の男に身も心も奪われ、しかもその男の刀を持って帰るという・・滑稽だな。」
蒼紫の突き刺さるような言葉にも返す言葉がない。
武尊が唇を引き結んでいると蒼紫は残念な声で言った。
「だがそれでも俺を選んでくれるのならどんなに滑稽でもいい、黙って斎藤を忘れる日が来るのを待とうと思っていた・・この部屋に帰って来るまでは。」
突如聞こえた聞き覚えのある声に武尊は全身が凍り付いた。
よく知っている声のはずなのに温度のないその声に武尊は声さえ咄嗟には出す事が出来ない。
何て言い訳しようと考える間もなく背後が薄暗くなり気配が濃厚になるが武尊は視線さえも動かす事が出来なかった。
武尊の右手の上に酷く優しく蒼紫の手が重なり畳を代わりに持つ。
蒼紫は黙ってそのまま畳をもとに戻し、立ち上がると床の間の横の書院造の違い棚の前に立った。
武尊は畳が戻されても俯いたままその場から立ち上がれずにいた。
沈黙が流れる。
黙って部屋に入り荒らしてごめんなさいという謝罪の気持ちとこれでまた刀を返してもらえないかもしれないという恐れで武尊はどう切り出していいのか分からずにいると蒼紫の方から言葉が漏らされた。
「俺は『早く身体を休めろ』と言っておいたはずだが。」
「うん・・聞いた。」
武尊はやっとのおもいで正座のまま蒼紫の方へ向きを変えた。
蒼紫は、
「まあ何をしていたか大方想像は出来る。」
と言い武尊を注視する。
「ごめんなさい・・なかなか返してもらえないから・・。」
武尊がようやく顔をあげ蒼紫の方をみると障子を背にした蒼紫の顔の表情は暗くてよく分からなかった。
「探し物はこれか?」
と蒼紫が壁をどんと叩くと天井から刀袋に入った刀が落ちて来た。
それを蒼紫がパシッと片手で握り武尊の方に突き出した。
「あっ!」
いったいどんな仕組み!?天井も一応探したけど何もなかったのに!と、驚くも武尊は刀に吸い寄せられるように立ち上がりフラフラと刀に近づいた。
手を伸ばせば刀に手が届くという所で蒼紫は刀をスッと下し武尊に問うた。
「何故今この刀を探す。」
刀を引っ込められて武尊は立ち止まりぽろりと本音を漏らした。
「明日にでも山に帰ろうと思って・・。」
蒼紫の息をのむ音がして再び沈黙が訪れた。
【帰るから刀を返して】
の一言をもう少しで言えそうだと喉までその言葉を込み上げた時蒼紫の言葉が重ねられた。
「これだけお前の事を心配しても・・心も身体も全てを捧げても・・俺はお前に振り向いてさえももらえないんだな。」
「・・そ、それはっ。」
静かに悲しみを湛えた声に武尊は即答出来ない。
それに武尊は知っている。
蒼紫ネクラでもなく冷酷なわけでもない。
本当は誠実で優しく何でも出来る超高性能イケメンだという事を・・。
だが問題はそこではないのだ。
武尊は蒼紫という人間が好きだ。
好きを通り越して愛おしいほどだ。
だけどそれは恋心では決してないと分かっている。
蒼紫には本当に幸せに長生きして欲しいと切に願う。
だから分かってもらうために武尊は何度も言った言葉を繰り返した。
「私が好きなのは斎藤さんだから・・蒼紫の気持ちには答えられない。」
蒼紫はまたそれかと思いつつ言い返す。
「仕事熱心な斎藤の事だ。あれではもう当分こちらに来ることはないだろう。なのにお前は後を追わず山に帰るという。つまり斎藤と別れたという事だ。仮に斎藤への想いが捨てられないというのを百歩譲ってもいい。なのに何故比古清十郎を選ぶ。それなら最初から比古清十郎を全身全霊を賭けて愛していると言えばいい。」
蒼紫の言う事が正論過ぎて武尊は何も言えない。
そんな武尊に蒼紫は追い打ちをかけるように言う。
「武士にとって刀は己自身も同然、斎藤の分身を携えてお前は比古の処へ戻るというのか?」
「だって帰るっていう約束だから・・。」
「お前を信じて送りだしたのはいいが自分の女を他の男に身も心も奪われ、しかもその男の刀を持って帰るという・・滑稽だな。」
蒼紫の突き刺さるような言葉にも返す言葉がない。
武尊が唇を引き結んでいると蒼紫は残念な声で言った。
「だがそれでも俺を選んでくれるのならどんなに滑稽でもいい、黙って斎藤を忘れる日が来るのを待とうと思っていた・・この部屋に帰って来るまでは。」