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257.壊れた心 (斎藤・夢主・蒼紫・翁・操)
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部屋に戻る途中、武尊は思わず星降る夜空を見上げた。
冬の透き通る空気に瞬く星の光は静かなのにどこか暖かい気がした。
「きれいだな・・。」
思わずぽつりと出た言葉に武尊は自分で微笑んだ。
「本当にきれい・・。」
かつて人を呪い、自分の生まれを呪い、絶望で何も見えなかった自分を思えば今こんなに穏やかで星空を見上げることが出来る日が来るなんて思いもしなかったと武尊は夜空を見つめる。
洞窟で蘭子の肉片が入った壺を壊した瞬間、この世から消えてなくならなくてよかったとちょっぴり思ったりする自分がちょっと現金なんじゃないかと思ったりした武尊だったがそこでふともう一つ思うことが湧いて来た。
(もしかして・・何かやり残していることがあるから存在を消されなかった・・とか?)
だとしたらそれは何?と自問して吐いた白い息に武尊は思わず、
「寒っ!いい加減寒いわ!」
と口に出した。
晴れた夜空は放射冷却でどんどん気温が下がる。
きっと明日の朝はものすごく冷えるんじゃないかと武尊が思った時、武尊の後方で大きな声がした。
「ほら武尊さん、寒いんだから早く部屋に戻ってこれ食べて温まって!」
武尊が振り返ると御膳を持って操がこっちに来るところだった。
「操ちゃん!」
武尊は操が来るのを待って湯気の上がっているお膳をのぞき込めばそこにはすぐに冷えないようにあんがかかった具沢山のうどんがあった。
「体調悪いのに出かけたりして今度そんなことがあったらいくら武尊さんでも蒼紫様に怒られるわよ!」
と操は眉間に皺を寄せて言った。
「うん・・心配かけてごめんね。」
武尊はお膳を持とうと手を伸ばすが操はそれをかわしスタスタと歩いて行く。
前後が入れ替わり武尊は操の後をついて行き自分の部屋に着いた。
操が障子を開けると火鉢が用意してあった。
「わ・・火鉢まで・・。ありがとう。」
「御礼なら蒼紫様に言って、はい。」
と言って武尊にお膳を手渡した。
「部屋を暖めるように言ったのも蒼紫様だし何か暖かい物を持ってくるように言ったのも蒼紫様。」
そう言うと操はハァとため息を吐いて、
「いいわよね~。」
と言った。
「え?」
思わず聞き返す武尊だったが操がため息吐く理由も何となくわからないではない気がするのでそれ以上は聞かなかった。
操は、
「じゃ、私は皆の手伝いに戻るから。」
と勝手場へ戻ろうとしたがすぐに立ち止り武尊に振り返って言った。
「そうそう。蒼紫様からの伝言を言い忘れる所だったわ。」
「伝言?」
「そう。『今日は暖を取って早く休め』だって。いい?私はちゃんと伝えたからね。」
「うん、ありがとう、分かった。で、そういう蒼紫は何処にいるの?」
部屋に着いた時、隣の蒼紫の部屋には灯りもなく居る気配もなかった。
一緒に帰って来たというのに蒼紫はすぐにいなくなってしまったのだ。
いったい何処にいるのだろうと武尊は操に聞いた。
まさかすでにお風呂とか・・とも思ったりもしたが客が入る可能性のある今の時間はそれはないと武尊はその考えをすぐに打ち消した。
「蒼紫様は座禅に出かけられたわ。最近は全然そんなことないと思ってたけど・・。」
操の声が微かに震えた。
「操ちゃん?」
「ううん、何でもない。じゃ私急いでるから。」
操の態度を不信に思うも、操はタタタタと廊下を駆けて戻っていった。
武尊は首をかしげながら障子を閉めると火鉢の横に座り冷めないうちにとうどんを食べ始めた。
「暖かい・・。」
湯気が武尊の気持ちをほっとさせると急に疲れが襲って来た。
(今日は色々あり過ぎて緊張していたから疲れることも忘れてた・・)
武尊はうどんを食べている間、斎藤と交わした言葉の一言一句を思い出すように記憶を辿り、また洞窟での出来事を思い返した。
だがうどんを食べ終わり、香の物に箸をのばした時ハッとすると同時に蒼紫の事が頭に浮かんだ。
それは千枚漬け。
「出来上がってたんだ・・」
武尊はおもむろにそれを口に運んで味わった。
「うーん・・。」
美味しいけど何かこう違う。
そもそも今の時代の千枚漬けはこういう味なのか未来の千枚漬けが違うのか判断には困るがどちらにせよ蒼紫をはじめ葵屋の皆で作った千枚漬けは味わい深い気がした。
そして最後にお茶を飲みながら武尊は呟いた。
「蒼紫何処行っちゃったんだろう・・座禅なら部屋ですればいいのに。」
そう口に出しながら帰る時蒼紫が無言だったことから、
「完全に不機嫌だったよね、あれは。そんなに私が一に会ってたことが気に入らなかったのかな。にしては気遣いしてくれてるし・・。」
蒼紫の気持ちが分からないと思いつつ美味しく頂いた夕餉のお膳を片付け部屋に戻った武尊は足が棒のように疲れているのに限界だと言葉に甘えて布団に入ったのだがはたと思いだした。
(私の刀・・。)
冬の透き通る空気に瞬く星の光は静かなのにどこか暖かい気がした。
「きれいだな・・。」
思わずぽつりと出た言葉に武尊は自分で微笑んだ。
「本当にきれい・・。」
かつて人を呪い、自分の生まれを呪い、絶望で何も見えなかった自分を思えば今こんなに穏やかで星空を見上げることが出来る日が来るなんて思いもしなかったと武尊は夜空を見つめる。
洞窟で蘭子の肉片が入った壺を壊した瞬間、この世から消えてなくならなくてよかったとちょっぴり思ったりする自分がちょっと現金なんじゃないかと思ったりした武尊だったがそこでふともう一つ思うことが湧いて来た。
(もしかして・・何かやり残していることがあるから存在を消されなかった・・とか?)
だとしたらそれは何?と自問して吐いた白い息に武尊は思わず、
「寒っ!いい加減寒いわ!」
と口に出した。
晴れた夜空は放射冷却でどんどん気温が下がる。
きっと明日の朝はものすごく冷えるんじゃないかと武尊が思った時、武尊の後方で大きな声がした。
「ほら武尊さん、寒いんだから早く部屋に戻ってこれ食べて温まって!」
武尊が振り返ると御膳を持って操がこっちに来るところだった。
「操ちゃん!」
武尊は操が来るのを待って湯気の上がっているお膳をのぞき込めばそこにはすぐに冷えないようにあんがかかった具沢山のうどんがあった。
「体調悪いのに出かけたりして今度そんなことがあったらいくら武尊さんでも蒼紫様に怒られるわよ!」
と操は眉間に皺を寄せて言った。
「うん・・心配かけてごめんね。」
武尊はお膳を持とうと手を伸ばすが操はそれをかわしスタスタと歩いて行く。
前後が入れ替わり武尊は操の後をついて行き自分の部屋に着いた。
操が障子を開けると火鉢が用意してあった。
「わ・・火鉢まで・・。ありがとう。」
「御礼なら蒼紫様に言って、はい。」
と言って武尊にお膳を手渡した。
「部屋を暖めるように言ったのも蒼紫様だし何か暖かい物を持ってくるように言ったのも蒼紫様。」
そう言うと操はハァとため息を吐いて、
「いいわよね~。」
と言った。
「え?」
思わず聞き返す武尊だったが操がため息吐く理由も何となくわからないではない気がするのでそれ以上は聞かなかった。
操は、
「じゃ、私は皆の手伝いに戻るから。」
と勝手場へ戻ろうとしたがすぐに立ち止り武尊に振り返って言った。
「そうそう。蒼紫様からの伝言を言い忘れる所だったわ。」
「伝言?」
「そう。『今日は暖を取って早く休め』だって。いい?私はちゃんと伝えたからね。」
「うん、ありがとう、分かった。で、そういう蒼紫は何処にいるの?」
部屋に着いた時、隣の蒼紫の部屋には灯りもなく居る気配もなかった。
一緒に帰って来たというのに蒼紫はすぐにいなくなってしまったのだ。
いったい何処にいるのだろうと武尊は操に聞いた。
まさかすでにお風呂とか・・とも思ったりもしたが客が入る可能性のある今の時間はそれはないと武尊はその考えをすぐに打ち消した。
「蒼紫様は座禅に出かけられたわ。最近は全然そんなことないと思ってたけど・・。」
操の声が微かに震えた。
「操ちゃん?」
「ううん、何でもない。じゃ私急いでるから。」
操の態度を不信に思うも、操はタタタタと廊下を駆けて戻っていった。
武尊は首をかしげながら障子を閉めると火鉢の横に座り冷めないうちにとうどんを食べ始めた。
「暖かい・・。」
湯気が武尊の気持ちをほっとさせると急に疲れが襲って来た。
(今日は色々あり過ぎて緊張していたから疲れることも忘れてた・・)
武尊はうどんを食べている間、斎藤と交わした言葉の一言一句を思い出すように記憶を辿り、また洞窟での出来事を思い返した。
だがうどんを食べ終わり、香の物に箸をのばした時ハッとすると同時に蒼紫の事が頭に浮かんだ。
それは千枚漬け。
「出来上がってたんだ・・」
武尊はおもむろにそれを口に運んで味わった。
「うーん・・。」
美味しいけど何かこう違う。
そもそも今の時代の千枚漬けはこういう味なのか未来の千枚漬けが違うのか判断には困るがどちらにせよ蒼紫をはじめ葵屋の皆で作った千枚漬けは味わい深い気がした。
そして最後にお茶を飲みながら武尊は呟いた。
「蒼紫何処行っちゃったんだろう・・座禅なら部屋ですればいいのに。」
そう口に出しながら帰る時蒼紫が無言だったことから、
「完全に不機嫌だったよね、あれは。そんなに私が一に会ってたことが気に入らなかったのかな。にしては気遣いしてくれてるし・・。」
蒼紫の気持ちが分からないと思いつつ美味しく頂いた夕餉のお膳を片付け部屋に戻った武尊は足が棒のように疲れているのに限界だと言葉に甘えて布団に入ったのだがはたと思いだした。
(私の刀・・。)