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257.壊れた心 (斎藤・夢主・蒼紫・翁・操)
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葵屋へ戻った武尊は翁に一言帰宅の挨拶をしに行った。
ちゃんと正座をして翁の部屋の障子を開け一礼をする。
「すみません、書置き一つで外出して・・言えば止められると思ったものですから。すぐ戻るつもりだったのですが遅くなりました。」
「ああ?んん?まあ多少出かけるぐらいはええんじゃないかの。土岐君の体調が悪くなければの話じゃが。」
一応気を使ってくれているような翁の返事だが、顎鬚を撫でながら淡々と答える様子は気のせいかもしれないが少し冷たいように感じられた。
居候の身なのに勝手な事ばかりしているからいい加減呆れられたのかもと思うと申し訳なさで武尊の胸がチクりと痛んだ。
(身から出た錆だなんだけどね。)
思えば比古のいる山奥から出て来た目的はほぼ達成された今、期限の今年末までにはまだひと月ほどあるが自分の寿命の不安を考えるともう山に帰ってもいい頃だと武尊は思いつつ・・自分を心配して探してくれた蒼紫の顔を思い浮かべる。
(もう蒼紫にあんな心配をかけちゃいけない。私のすることはすべて終わったんだから・・帰ろう、帰る時が来たんだ。)
自分がいなくなれば蒼紫も操ちゃんの気持ちにきっと気が付く、そして葵屋の皆が願っているような結末に落ち着く、そう武尊が何度も思ったことを心に思い返していると翁が、
「なぁ土岐君よ、そろそろ本気で考えてくれんか。」
と言った。
「え?」
突然一体何の事かと武尊が聞き返すと、
「蒼紫のことじゃよ。」
とため息を吐きながら言い、煙管をコンと叩き灰を落とすとおもむろに立ち上がり武尊の横に立った。
武尊は翁を見上げた。
翁は庭を見ながらとつとつと言葉を漏らす。
「蒼紫は土岐君の事になると見境がなくなる。あの蒼紫が・・じゃ。」
翁は一度大きなため息をつき話を続ける。
「前にも言ったと思うが蒼紫か操かと言われれば儂は蒼紫を取る。あの不器用な男を笑顔に出来るのはどうやらお前さんしかおらんようじゃからのぅ。」
「・・こ、困ります!そんな事言われても!」
武尊は思いもかけない翁の言葉に途方に暮れた。
まさか『私はもう直ぐ寿命が尽きるんです!』と言おうとも思ったがそんな話信じてもらえそうにもない。
ならば翁でもどうすることも出来ない、そして原点に帰ろうと誓った想いを武尊は伝えた。
「私は比古さんのものですから。」
翁は武尊の言葉に顔を武尊の方へ少しだけ向けた目で武尊を見た。
武尊も目を逸らさず翁をじっと見つめた。
「どうしても駄目かの。」
「はい、どうしてもです。」
翁は武尊の返事に正面を向いてもう一度大きなため息を吐いた。
武尊は、
「丁度もう帰ろうと決めた所だったんです。翁さん、」
と言い、翁に対し正座のまま深く礼をした。
「私を東京にやってくださって、そして葵屋に置いてくださいまして本当にありがとうございますした・・お世話になりました。」
「左様か・。」
翁は本当に残念そうな声を出すと武尊に向かい合い、
「何時でも遊びに来なさい。もちろん比古殿も一緒にな。」
と目尻を下げて笑った。
「はい、ありがとうございます。」
武尊も口元に笑みを浮かべもう一礼し自室へ戻った。
ちゃんと正座をして翁の部屋の障子を開け一礼をする。
「すみません、書置き一つで外出して・・言えば止められると思ったものですから。すぐ戻るつもりだったのですが遅くなりました。」
「ああ?んん?まあ多少出かけるぐらいはええんじゃないかの。土岐君の体調が悪くなければの話じゃが。」
一応気を使ってくれているような翁の返事だが、顎鬚を撫でながら淡々と答える様子は気のせいかもしれないが少し冷たいように感じられた。
居候の身なのに勝手な事ばかりしているからいい加減呆れられたのかもと思うと申し訳なさで武尊の胸がチクりと痛んだ。
(身から出た錆だなんだけどね。)
思えば比古のいる山奥から出て来た目的はほぼ達成された今、期限の今年末までにはまだひと月ほどあるが自分の寿命の不安を考えるともう山に帰ってもいい頃だと武尊は思いつつ・・自分を心配して探してくれた蒼紫の顔を思い浮かべる。
(もう蒼紫にあんな心配をかけちゃいけない。私のすることはすべて終わったんだから・・帰ろう、帰る時が来たんだ。)
自分がいなくなれば蒼紫も操ちゃんの気持ちにきっと気が付く、そして葵屋の皆が願っているような結末に落ち着く、そう武尊が何度も思ったことを心に思い返していると翁が、
「なぁ土岐君よ、そろそろ本気で考えてくれんか。」
と言った。
「え?」
突然一体何の事かと武尊が聞き返すと、
「蒼紫のことじゃよ。」
とため息を吐きながら言い、煙管をコンと叩き灰を落とすとおもむろに立ち上がり武尊の横に立った。
武尊は翁を見上げた。
翁は庭を見ながらとつとつと言葉を漏らす。
「蒼紫は土岐君の事になると見境がなくなる。あの蒼紫が・・じゃ。」
翁は一度大きなため息をつき話を続ける。
「前にも言ったと思うが蒼紫か操かと言われれば儂は蒼紫を取る。あの不器用な男を笑顔に出来るのはどうやらお前さんしかおらんようじゃからのぅ。」
「・・こ、困ります!そんな事言われても!」
武尊は思いもかけない翁の言葉に途方に暮れた。
まさか『私はもう直ぐ寿命が尽きるんです!』と言おうとも思ったがそんな話信じてもらえそうにもない。
ならば翁でもどうすることも出来ない、そして原点に帰ろうと誓った想いを武尊は伝えた。
「私は比古さんのものですから。」
翁は武尊の言葉に顔を武尊の方へ少しだけ向けた目で武尊を見た。
武尊も目を逸らさず翁をじっと見つめた。
「どうしても駄目かの。」
「はい、どうしてもです。」
翁は武尊の返事に正面を向いてもう一度大きなため息を吐いた。
武尊は、
「丁度もう帰ろうと決めた所だったんです。翁さん、」
と言い、翁に対し正座のまま深く礼をした。
「私を東京にやってくださって、そして葵屋に置いてくださいまして本当にありがとうございますした・・お世話になりました。」
「左様か・。」
翁は本当に残念そうな声を出すと武尊に向かい合い、
「何時でも遊びに来なさい。もちろん比古殿も一緒にな。」
と目尻を下げて笑った。
「はい、ありがとうございます。」
武尊も口元に笑みを浮かべもう一礼し自室へ戻った。