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255.悪党の最後 (九条・兄・斎藤・夢主)
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聞いててだんだん切羽詰まった状況になっていくのが分かるのに目の前の斎藤は動かない。
(ああ・・もう!どうして踏み込まないのよっ!)
と武尊がもどかしく思っていた矢先、斎藤が動いた。
「・・っ!」
斎藤が部屋へ踏み込んだ瞬間に部屋の灯りが扉の開放で今まで暗闇の中の細い灯りに慣れていた武尊の目がその眩しさに目の前が真っ白になる。
武尊は思わず片腕で目の前を覆い顔を背けた。
「お前はっ!」
突然現れた斎藤の姿に九条は目をむいて驚いた。
慌てて銃口を斎藤に向けようとするが既に遅く、間合いを詰めた斎藤の拳を左頬に喰らって下品な叫び声と共に後ろへ吹っ飛んだ。
「散々探したんだ、これ以上手間を掛けさせるなこの阿呆が。」
突然現れた帯刀警官にただ驚く市彦は、
「何故警官が此処に・・。」
と目を皿のようにして呟いた。
「お前にも色々聞きたいことがあるんだがな、秦市彦。」
鋭い目を自分に向けた斎藤に市彦は警戒の体勢をとった。
「何故俺の名前を知っている・・。」
斎藤は目の前の九条に目でけん制しながら、
「武尊から散々聞いているからな。」
とニヤリと笑った。
「武尊・・?」
市彦は知らぬ名前を怪訝そうに繰り返した。
「武尊、いいぞ、入って来て。」
「うん。」
やっと明るさに目が慣れた武尊は緊張しながら扉の向こうの部屋に入った。
「兄様・・。」
薄汚れ、無精髭を伸ばし熊皮の上着を着ている姿はまるで熊そのものの様だったが眼差しはかつての兄そのままだった。
「蘭子・・。」
市彦だけでなく九条も驚きのあまり目を見開いて武尊を見た。
手に入れようとしていた人形と薬がこの場にあるのだ。
野望の為に長年探していた人形と薬が手の届く位置にあるというのに九条には手も足も出ない。
九条はくっと斎藤を睨むが斎藤はそれを面白がるかのように口角を上げて九条を見据える。
「そうか、お前は武尊というのか・・。」
「はい・・。」
「あの時は酷いことを強いたな、許してくれ。」
「いえ・・兄様こそご無事で良かったです。」
武尊はまさか此処にさんざん探し回った市彦がこんな所にいるとは夢にも思わなく、突然の再会に言いたい言葉がみつからない。
川路への恨み言を呪いのように武尊にすりこんで、その所為で武尊は市彦の無念の思いを晴らすべく川路を追ったのはついこの間のこと。
それが全部時代の所為という訳ではないけれども不遇な境遇に落ちた兄妹がどのようになったのかを知ってしまった今では本当に何と言っていいのか武尊は分からない。
だが武尊は蘭子ではないとやっとお互いが言い合えた。
そこで武尊はようやくほっとし部屋の中をぐるりと見回す。
二十畳ほどのスペース。
床は洞窟のままで土。
壁にはかなりの数の蝋燭が燃やされており不必要なくらいに明るい。
そして壁際には白い布が掛けられた床几の上に幾つか封をされた壺がありそれらの中央の壺にはロケットペンダントが掛けられていた。
「ん?」
兄の性格からにしてペンダントとはどう転んでも持つには似合つかわしくない。
しかもこの時代にそんなものが市中に出回っているとは理解しがたい。
首を傾げながら数歩近寄った武尊は
「あっ。」
と小さく声をあげて駆け寄った。
表面には見覚えのあるチューリップの装飾。
武尊はポケットからマーティンからもらったロケットを取り出して見比べた。
二つのロケットペンダントは金属のくすみ具合は違いはあれど瓜二つだった。
(なんでっ?)
そう思った武尊の頭にマーティンの言葉を思い出した。
『ニホンノジョセイト コイニオチマシタ・・ソノトキ オナジモノヲ アイノアカシダト ワタシマシタ・・』
『コドモガデキタト アトカラキキマシタ・・』
そして自分もマーティンからこのロケットペンダントを受け取った時、もしマーティンの娘さんに会えたら『あなたのお父様はずっとあなたの事を想ってました』という言葉と共にペンダントを渡そうと決めてたのだ。
(ちょっと待って・・ということは・・?)
答えは見えているはずなのに変な焦燥感に背中が冷たくなった。
武尊は振り返って斎藤に目で訴えるが斎藤は銃を握ったままの九条に睨みを聞かせてるので迂闊に動けない。
その代わりに市彦が武尊のソワソワした態度を不審に思い武尊に近寄った。
最初の市彦の場所からは武尊がポケットから出した物が見えなかったがそれが確認できると市彦は怖い顔になった。
「何故それをお前が持っている・・。」
「知り合いの外国人からもらった・・これは?」
武尊はもう一つのペンダントを指さし市彦に聞いた。
その時だった。
九条の握っていた銃の先がスッと武尊にむけられたのは。
斎藤の注意が一瞬だけ武尊と市彦に向いたのを九条は見逃さなかった。
(人形も薬も手に入らぬのならば殺してしまえ、あれは私の人形なのだ・・。)
そう思った九条はいつの間にか引き金を引いていた。
銃声とほぼ同時に武尊が横に吹っ飛び、直後にギャーという九条の叫び声が部屋に響いた。
九条のやろうとしたことに気が付いた斎藤が瞬時に九条の銃を持った手首を切り落としたのだ。
九条が手首をもう片方の手で押さえると同時に斎藤は銃を蹴飛ばし返した刀で峰打ちを一発喰らわすと九条は激痛でのたうち回った。
斎藤が武尊の方を振り返ると撃たれたのは市彦だった。
武尊の背中越しに九条が武尊に銃口を向けたのを見た瞬間武尊を突き飛ばしたのだった。
市彦は武尊を突き飛ばしたことで自分が弾道上に位置し、弾に当たったのだ。
武尊は目の前で小さくうめき声をあげた市彦がその場に崩れていくのをスローモーションのように感じていた。
どさっと音が土に響く。
「に・・兄様っ!」
武尊は市彦に駆け寄ると胸を抑えた市彦が苦しそうに、だが必死で笑顔を作って武尊に向けた。
「これも天罰だ。命・・をそしてお前の運命を弄んだ罰だ・・。」
「何をっ!しっかりしてよ!今手当を・・」
武尊は何か止血するものはないかときょろきょろ見回すがそんなものは何もない。
のたうち回っている九条を放っておいて斎藤が武尊の後ろに立った。
市彦は分からせてやってと言わんばかりに斎藤に視線をやった。
斎藤は軽く頷き武尊の肩にそっと手を置いた。
振り返った武尊に首を横に振った。
「ぅ・・やだ!こんなのやだ!」
武尊は涙をポロポロ溢れさせながら胸を抑える血だらけの市彦の手の上から止血しようと手を伸ばしたが市彦はその手を跳ねのけた。
(ああ・・もう!どうして踏み込まないのよっ!)
と武尊がもどかしく思っていた矢先、斎藤が動いた。
「・・っ!」
斎藤が部屋へ踏み込んだ瞬間に部屋の灯りが扉の開放で今まで暗闇の中の細い灯りに慣れていた武尊の目がその眩しさに目の前が真っ白になる。
武尊は思わず片腕で目の前を覆い顔を背けた。
「お前はっ!」
突然現れた斎藤の姿に九条は目をむいて驚いた。
慌てて銃口を斎藤に向けようとするが既に遅く、間合いを詰めた斎藤の拳を左頬に喰らって下品な叫び声と共に後ろへ吹っ飛んだ。
「散々探したんだ、これ以上手間を掛けさせるなこの阿呆が。」
突然現れた帯刀警官にただ驚く市彦は、
「何故警官が此処に・・。」
と目を皿のようにして呟いた。
「お前にも色々聞きたいことがあるんだがな、秦市彦。」
鋭い目を自分に向けた斎藤に市彦は警戒の体勢をとった。
「何故俺の名前を知っている・・。」
斎藤は目の前の九条に目でけん制しながら、
「武尊から散々聞いているからな。」
とニヤリと笑った。
「武尊・・?」
市彦は知らぬ名前を怪訝そうに繰り返した。
「武尊、いいぞ、入って来て。」
「うん。」
やっと明るさに目が慣れた武尊は緊張しながら扉の向こうの部屋に入った。
「兄様・・。」
薄汚れ、無精髭を伸ばし熊皮の上着を着ている姿はまるで熊そのものの様だったが眼差しはかつての兄そのままだった。
「蘭子・・。」
市彦だけでなく九条も驚きのあまり目を見開いて武尊を見た。
手に入れようとしていた人形と薬がこの場にあるのだ。
野望の為に長年探していた人形と薬が手の届く位置にあるというのに九条には手も足も出ない。
九条はくっと斎藤を睨むが斎藤はそれを面白がるかのように口角を上げて九条を見据える。
「そうか、お前は武尊というのか・・。」
「はい・・。」
「あの時は酷いことを強いたな、許してくれ。」
「いえ・・兄様こそご無事で良かったです。」
武尊はまさか此処にさんざん探し回った市彦がこんな所にいるとは夢にも思わなく、突然の再会に言いたい言葉がみつからない。
川路への恨み言を呪いのように武尊にすりこんで、その所為で武尊は市彦の無念の思いを晴らすべく川路を追ったのはついこの間のこと。
それが全部時代の所為という訳ではないけれども不遇な境遇に落ちた兄妹がどのようになったのかを知ってしまった今では本当に何と言っていいのか武尊は分からない。
だが武尊は蘭子ではないとやっとお互いが言い合えた。
そこで武尊はようやくほっとし部屋の中をぐるりと見回す。
二十畳ほどのスペース。
床は洞窟のままで土。
壁にはかなりの数の蝋燭が燃やされており不必要なくらいに明るい。
そして壁際には白い布が掛けられた床几の上に幾つか封をされた壺がありそれらの中央の壺にはロケットペンダントが掛けられていた。
「ん?」
兄の性格からにしてペンダントとはどう転んでも持つには似合つかわしくない。
しかもこの時代にそんなものが市中に出回っているとは理解しがたい。
首を傾げながら数歩近寄った武尊は
「あっ。」
と小さく声をあげて駆け寄った。
表面には見覚えのあるチューリップの装飾。
武尊はポケットからマーティンからもらったロケットを取り出して見比べた。
二つのロケットペンダントは金属のくすみ具合は違いはあれど瓜二つだった。
(なんでっ?)
そう思った武尊の頭にマーティンの言葉を思い出した。
『ニホンノジョセイト コイニオチマシタ・・ソノトキ オナジモノヲ アイノアカシダト ワタシマシタ・・』
『コドモガデキタト アトカラキキマシタ・・』
そして自分もマーティンからこのロケットペンダントを受け取った時、もしマーティンの娘さんに会えたら『あなたのお父様はずっとあなたの事を想ってました』という言葉と共にペンダントを渡そうと決めてたのだ。
(ちょっと待って・・ということは・・?)
答えは見えているはずなのに変な焦燥感に背中が冷たくなった。
武尊は振り返って斎藤に目で訴えるが斎藤は銃を握ったままの九条に睨みを聞かせてるので迂闊に動けない。
その代わりに市彦が武尊のソワソワした態度を不審に思い武尊に近寄った。
最初の市彦の場所からは武尊がポケットから出した物が見えなかったがそれが確認できると市彦は怖い顔になった。
「何故それをお前が持っている・・。」
「知り合いの外国人からもらった・・これは?」
武尊はもう一つのペンダントを指さし市彦に聞いた。
その時だった。
九条の握っていた銃の先がスッと武尊にむけられたのは。
斎藤の注意が一瞬だけ武尊と市彦に向いたのを九条は見逃さなかった。
(人形も薬も手に入らぬのならば殺してしまえ、あれは私の人形なのだ・・。)
そう思った九条はいつの間にか引き金を引いていた。
銃声とほぼ同時に武尊が横に吹っ飛び、直後にギャーという九条の叫び声が部屋に響いた。
九条のやろうとしたことに気が付いた斎藤が瞬時に九条の銃を持った手首を切り落としたのだ。
九条が手首をもう片方の手で押さえると同時に斎藤は銃を蹴飛ばし返した刀で峰打ちを一発喰らわすと九条は激痛でのたうち回った。
斎藤が武尊の方を振り返ると撃たれたのは市彦だった。
武尊の背中越しに九条が武尊に銃口を向けたのを見た瞬間武尊を突き飛ばしたのだった。
市彦は武尊を突き飛ばしたことで自分が弾道上に位置し、弾に当たったのだ。
武尊は目の前で小さくうめき声をあげた市彦がその場に崩れていくのをスローモーションのように感じていた。
どさっと音が土に響く。
「に・・兄様っ!」
武尊は市彦に駆け寄ると胸を抑えた市彦が苦しそうに、だが必死で笑顔を作って武尊に向けた。
「これも天罰だ。命・・をそしてお前の運命を弄んだ罰だ・・。」
「何をっ!しっかりしてよ!今手当を・・」
武尊は何か止血するものはないかときょろきょろ見回すがそんなものは何もない。
のたうち回っている九条を放っておいて斎藤が武尊の後ろに立った。
市彦は分からせてやってと言わんばかりに斎藤に視線をやった。
斎藤は軽く頷き武尊の肩にそっと手を置いた。
振り返った武尊に首を横に振った。
「ぅ・・やだ!こんなのやだ!」
武尊は涙をポロポロ溢れさせながら胸を抑える血だらけの市彦の手の上から止血しようと手を伸ばしたが市彦はその手を跳ねのけた。