※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
255.悪党の最後 (九条・兄・斎藤・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
僅かな灯りとりになっていた滝の裏口も道を曲がるともう見えない。
真っ暗な洞窟を斎藤の後に続いてその気配と微かな衣擦れの音を頼りに壁伝いに続く。
(どこまで続くんだろう・・。)
真っ暗だと時間がどれくらい経ったのか分からなくなる。
五分なのか十分なのか・・
しかしある所で武尊はハッと線香の匂いがした気がすると思ったとたん先に止まっていたと思われる斎藤の背中にドンと顔面をぶつけた。
(痛てて・・)
口に出そうな言葉をぐっと我慢し前を見ると暗闇に慣れた目に微かな灯りと人の声がした。
「行くぞ。」
斎藤は小声で武尊に指示をすると更に注意を払って前進する。
微かな灯りは洞窟に取り付けられている扉だった。
扉は少し開いており、その隙間から灯りと二人の話声がが漏れていた。
中には男が二人、どうやら言い争いをしているようだった。
斎藤と武尊は扉の前で聞き耳を立てた。
「ないものはない!」
突如苛立った男の声がした。
(・・!!)
武尊はその太い声に聞き覚えがあり目を見張った。
「ない訳がないだろう!あれだけ作ったんだ!いくら幕末使ったからといってもかなりの数は残っているはずだ!」
「分からん奴だな、『ない』といったらないんだ!」
お互いが言い合う声が扉の外まではっきり聞こえる。
「今なら蘭子の居所なら探せば分かる、今こそ積年の恨みを川路にはらせるんだぞ!」
「馬鹿を言うな!今更、・・今更それが何になるというんだ!」
ドンと土壁を叩く鈍い音がした。
武尊はそっと前にいる斎藤の様子を伺うと斎藤は鋭い目でじっと扉を見つめていたので武尊も視線を扉に戻した。
太い声の男は更にもう一人の男に言った。
「いいか、お前が何を企んでいるのかは知らないが俺を巻き込むのはやめてくれ。それに蘭子は死んだ・・死んだんだ、死んだんだ、死んだんだ!」
武尊は太い声の男・・市彦の『死んだんだ』というまさに己に言い聞かせるような叫びを聞いて十六夜丸に見せられた過去を思い出し心臓が握りつぶされるように苦しくなり眉根を寄せて目をぎゅっとつむった。
「それにあいつ・・はあの動乱を生き残って今を穏やかに生きているんだろ、放っておいてやれ。」
叫んだ後、やるせなく吐いた市彦の言葉に武尊はまた扉を切なく見つめた。
自分が本当の妹ではないという事を兄は・・いや、市彦は分かっていたのだ。
そして彼にとって十一年という月日が流れても未だ自分に気を使ってくれる優しさに少し胸が熱くなる。
「そんな事出来るか!あれさえ有れば天下権力を握るのも夢じゃない!」
「お前の口車に乗ることほど空しいことはないな、一時であれ神仏に仕える身にあったはずなのに憐れな奴め。」
「市彦!」
「ないと言ったらないんだ!帰れ!そして二度と此処に来るな!」
「そこまで言われるなら勝手に探すまでだ!」
九条は市彦に近づくと後ろの簡素な位牌を置いてある小さな棚を蹴飛ばした。
「何をする!」
怒号と共に市彦が九条に掴みかかり襟元を絞り上げた。
「くっ・・。」
九条はつま先が浮くぐらいに市彦に片手で持ち上げられた。
「この場所を荒らすことは俺が許さん!さっさと出て行け!」
鬼のような形相の市彦につるし上げられ、その後扉の前にドサッと落とされ九条は尻餅をついた。
その前に市彦は仁王立ちになり怒りの目で見下ろした。
一瞬怯えたような表情をした九条だったがにやりと目を細めて笑った。
「何が可笑しい。」
「出て行くのは石頭のお前の方だからだよ。こんな事もあろうかと・・。」
そう言った九条の手にはいつの間にか短銃が握られていた。
「貴様っ・・。」
「薬さえ手に入ればお前が死のうが生きようか関係ない。大人しく渡せばいい物を。」
九条の人差し指にグッと力がこめられようとした時、
「そこまでだ。」
と九条の後ろで声がした。
真っ暗な洞窟を斎藤の後に続いてその気配と微かな衣擦れの音を頼りに壁伝いに続く。
(どこまで続くんだろう・・。)
真っ暗だと時間がどれくらい経ったのか分からなくなる。
五分なのか十分なのか・・
しかしある所で武尊はハッと線香の匂いがした気がすると思ったとたん先に止まっていたと思われる斎藤の背中にドンと顔面をぶつけた。
(痛てて・・)
口に出そうな言葉をぐっと我慢し前を見ると暗闇に慣れた目に微かな灯りと人の声がした。
「行くぞ。」
斎藤は小声で武尊に指示をすると更に注意を払って前進する。
微かな灯りは洞窟に取り付けられている扉だった。
扉は少し開いており、その隙間から灯りと二人の話声がが漏れていた。
中には男が二人、どうやら言い争いをしているようだった。
斎藤と武尊は扉の前で聞き耳を立てた。
「ないものはない!」
突如苛立った男の声がした。
(・・!!)
武尊はその太い声に聞き覚えがあり目を見張った。
「ない訳がないだろう!あれだけ作ったんだ!いくら幕末使ったからといってもかなりの数は残っているはずだ!」
「分からん奴だな、『ない』といったらないんだ!」
お互いが言い合う声が扉の外まではっきり聞こえる。
「今なら蘭子の居所なら探せば分かる、今こそ積年の恨みを川路にはらせるんだぞ!」
「馬鹿を言うな!今更、・・今更それが何になるというんだ!」
ドンと土壁を叩く鈍い音がした。
武尊はそっと前にいる斎藤の様子を伺うと斎藤は鋭い目でじっと扉を見つめていたので武尊も視線を扉に戻した。
太い声の男は更にもう一人の男に言った。
「いいか、お前が何を企んでいるのかは知らないが俺を巻き込むのはやめてくれ。それに蘭子は死んだ・・死んだんだ、死んだんだ、死んだんだ!」
武尊は太い声の男・・市彦の『死んだんだ』というまさに己に言い聞かせるような叫びを聞いて十六夜丸に見せられた過去を思い出し心臓が握りつぶされるように苦しくなり眉根を寄せて目をぎゅっとつむった。
「それにあいつ・・はあの動乱を生き残って今を穏やかに生きているんだろ、放っておいてやれ。」
叫んだ後、やるせなく吐いた市彦の言葉に武尊はまた扉を切なく見つめた。
自分が本当の妹ではないという事を兄は・・いや、市彦は分かっていたのだ。
そして彼にとって十一年という月日が流れても未だ自分に気を使ってくれる優しさに少し胸が熱くなる。
「そんな事出来るか!あれさえ有れば天下権力を握るのも夢じゃない!」
「お前の口車に乗ることほど空しいことはないな、一時であれ神仏に仕える身にあったはずなのに憐れな奴め。」
「市彦!」
「ないと言ったらないんだ!帰れ!そして二度と此処に来るな!」
「そこまで言われるなら勝手に探すまでだ!」
九条は市彦に近づくと後ろの簡素な位牌を置いてある小さな棚を蹴飛ばした。
「何をする!」
怒号と共に市彦が九条に掴みかかり襟元を絞り上げた。
「くっ・・。」
九条はつま先が浮くぐらいに市彦に片手で持ち上げられた。
「この場所を荒らすことは俺が許さん!さっさと出て行け!」
鬼のような形相の市彦につるし上げられ、その後扉の前にドサッと落とされ九条は尻餅をついた。
その前に市彦は仁王立ちになり怒りの目で見下ろした。
一瞬怯えたような表情をした九条だったがにやりと目を細めて笑った。
「何が可笑しい。」
「出て行くのは石頭のお前の方だからだよ。こんな事もあろうかと・・。」
そう言った九条の手にはいつの間にか短銃が握られていた。
「貴様っ・・。」
「薬さえ手に入ればお前が死のうが生きようか関係ない。大人しく渡せばいい物を。」
九条の人差し指にグッと力がこめられようとした時、
「そこまでだ。」
と九条の後ろで声がした。