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253.幕末よりの再会 (九条・夢主の兄と名乗った男・夢主・斎藤・蒼紫)
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止まった時間が落下へ向かう瞬間、九条の手首はガシっと掴まれた。
ポロポロと小石が下へ落ちていく音が不気味に響いた。
「上がれ・・。」
九条の手首を掴んだ男は低い声でそう言うと九条を引っ張り上げた。
井戸の外で足が地面についた九条は力が抜けて一気にへなへなとへたり込んだ。
そして男を見上げながら、
「お前・・生きていたのか・・。」
と言った。
「嗚呼・・。」
男は小さくうなずくと九条に、
「今更何しに来た。」
と睨んだ。
九条を引き上げたのは市彦・・武尊を妹の蘭子と呼んだ男だった。
長州派の九条は薩長同盟を期に言う事を聞かなくなった市彦が邪魔になり市彦を殺し武尊を自分の手駒にしようとしていた。
そんな幕末の時間が二人の間に甦る。
かつて殺そうとした者を目の前にし、今度は自分が殺される・・と、九条は恐怖で動けなかった。
今は手下は誰一人いない。
圧倒的不利な中でこの熊のような体躯の男に九条はどうすれば自分が有利に立てるか必死で考えた。
(昔と変わっていなければこいつは無骨で真面目な男だ・・口は俺の方が数段上手い。)
九条は言葉を選びながら慎重に言った。
「私は今、政府の役人をしているんだが・・」
「だろうな、お前ならそういうのもありかと思っていた。」
九条の言葉が終わらないうちに市彦が素っ気無い言葉を挟んだ。
市彦は九条の本当の素性を知らない。
上手く出世をしたのだと思っていた。
命を狙われたこともあったが今となってはそれも遠い昔の事のようにも思える。
今は心静かに過ごす市彦にとっては九条のような男でも少しは仲間だった時期があったのだ・・と、昔を思い出していた。
「ふ・・普段は東京で暮らしている。」
市彦警戒心を解こうと他愛のない話をきりだした九条に市彦はまるで興味がないかのような目つきで九条を見下ろす。
九条はなんとか自分の話に引き込もうと、
「なんと東京で見たんだよ、蘭子を!」
九条は名前を強調して男に訴えた。
直に武尊を見たのは会津だったがそれは伏せた。
市彦は一瞬の色を変えた。
だが軽くため息をついて、
「生きていたのなら・・それでいい。」
と諦めた声を出した。
そしてくるりとを向きを変えると九条を置いて黙って歩き出した。
「待て!私は何より妹思いのお前に蘭子の事を知らせてやろうとこんな山奥まで居るか居ないか分からないお前を訪ねて来たんだ!日ももう暮れる、せめて今晩お前の所に泊めてくれ。いくら仲違いしたとはいえ同じ神仏に仕えた身ではないのか。そのくらいの慈悲はあってもいいだろう!」
と訴えた。
すでに日は傾き霜月の山はすでに息も白くなっていた。
市彦は訝し気に九条を見つめた。
昔だったら九条のそんな言葉も空々しいとしか思えなかっただろうと市彦は思ったがあれから月日が流れること幾星霜、毎日念仏を唱えているせいか、九条の顔を見ていても思ったよりも怒りは湧かなかった。
「いいだろう・・。だがお前は一つ間違っている。蘭子は死んだんだ、それはお前が一番よく知っているはずだ。明日は蘭子に線香の一本でもあげてやってくれ。」
市彦の言葉に宿が欲しい九条はうなずくしかなかった。
ポロポロと小石が下へ落ちていく音が不気味に響いた。
「上がれ・・。」
九条の手首を掴んだ男は低い声でそう言うと九条を引っ張り上げた。
井戸の外で足が地面についた九条は力が抜けて一気にへなへなとへたり込んだ。
そして男を見上げながら、
「お前・・生きていたのか・・。」
と言った。
「嗚呼・・。」
男は小さくうなずくと九条に、
「今更何しに来た。」
と睨んだ。
九条を引き上げたのは市彦・・武尊を妹の蘭子と呼んだ男だった。
長州派の九条は薩長同盟を期に言う事を聞かなくなった市彦が邪魔になり市彦を殺し武尊を自分の手駒にしようとしていた。
そんな幕末の時間が二人の間に甦る。
かつて殺そうとした者を目の前にし、今度は自分が殺される・・と、九条は恐怖で動けなかった。
今は手下は誰一人いない。
圧倒的不利な中でこの熊のような体躯の男に九条はどうすれば自分が有利に立てるか必死で考えた。
(昔と変わっていなければこいつは無骨で真面目な男だ・・口は俺の方が数段上手い。)
九条は言葉を選びながら慎重に言った。
「私は今、政府の役人をしているんだが・・」
「だろうな、お前ならそういうのもありかと思っていた。」
九条の言葉が終わらないうちに市彦が素っ気無い言葉を挟んだ。
市彦は九条の本当の素性を知らない。
上手く出世をしたのだと思っていた。
命を狙われたこともあったが今となってはそれも遠い昔の事のようにも思える。
今は心静かに過ごす市彦にとっては九条のような男でも少しは仲間だった時期があったのだ・・と、昔を思い出していた。
「ふ・・普段は東京で暮らしている。」
市彦警戒心を解こうと他愛のない話をきりだした九条に市彦はまるで興味がないかのような目つきで九条を見下ろす。
九条はなんとか自分の話に引き込もうと、
「なんと東京で見たんだよ、蘭子を!」
九条は名前を強調して男に訴えた。
直に武尊を見たのは会津だったがそれは伏せた。
市彦は一瞬の色を変えた。
だが軽くため息をついて、
「生きていたのなら・・それでいい。」
と諦めた声を出した。
そしてくるりとを向きを変えると九条を置いて黙って歩き出した。
「待て!私は何より妹思いのお前に蘭子の事を知らせてやろうとこんな山奥まで居るか居ないか分からないお前を訪ねて来たんだ!日ももう暮れる、せめて今晩お前の所に泊めてくれ。いくら仲違いしたとはいえ同じ神仏に仕えた身ではないのか。そのくらいの慈悲はあってもいいだろう!」
と訴えた。
すでに日は傾き霜月の山はすでに息も白くなっていた。
市彦は訝し気に九条を見つめた。
昔だったら九条のそんな言葉も空々しいとしか思えなかっただろうと市彦は思ったがあれから月日が流れること幾星霜、毎日念仏を唱えているせいか、九条の顔を見ていても思ったよりも怒りは湧かなかった。
「いいだろう・・。だがお前は一つ間違っている。蘭子は死んだんだ、それはお前が一番よく知っているはずだ。明日は蘭子に線香の一本でもあげてやってくれ。」
市彦の言葉に宿が欲しい九条はうなずくしかなかった。