今回の事件、武尊の場合はそんなストーリーとなったのだが一方九条はどうしていたかというと・・



屋敷にいた九条は部下からの報告により、四乃森蒼紫が屋敷の前で手下の一人を倒したと聞き、即座に屋敷からの脱出を決めたのだった。


蒼紫と九条は直接会津で会っている。


本来有栖川宮の代理で東北・北海道に視察に行っているはずなのにあっちが替え玉であるという事は公にバレるわけにはいかないのであった。


裏社会に生きる九条にとってある意味田舎者の維新志士よりに御庭番衆京都探索方や御頭四乃森蒼紫の方が怖い存在なのだ。


頼りにしていた部下が簡単に殺られたとあっては次は我が身と居ても立ってもいられずすぐに馬車に乗り屋敷から逃走したのであった。


向かった先は秘密の隠れ家。


別に志々雄真実のアジトでもよかったのだが観柳に四乃森蒼紫から逃げて来たとは九条のプライドにかけても絶対言えなかったので不便だが近くの隠れ家の方を選んだのだった。


それが結果的にアジトの爆発に巻き込まれなくて済んだのだがまだこの時点で九条にそのような事など知るはずもなかった。


九条は隠れ家へ向かう途中で馬車を降り、御者に何か指示し、自分は林の中へと逃げ込んだのだった。


そして川の側まで来ると僅かな浅瀬沿いにすねまで水に浸かりながらた滝の下まで進んだ。


そして再度周囲を見回し、誰かに見られていないかを確認すると滝壺の端の岩を少し上り、滝の中へと消えていった。


そう、ここも織田信長の比叡山攻めの際、比叡山の僧侶が逃げ隠れた秘密の場所の一つ。


その山攻めの騒動の中、忘れ去られていたこの場所を古文書も管理していた九条がその存在を発見し利用していたのだ。



「万が一の時の為にここを残しておいただまさかこのような事になろうとは・・ん？」



奥へ続く横穴は真っ暗だ。


九条は奥へ向かう時の為の灯りを滝の裏に置いてあったはずだったがそれがない事に気が付いた。


九条の顔に疑惑と緊張の色が走った。



「ここを知っている者はごく限られた者しかいないはず・・。」



何度か通ったことのあるこの横穴は志々雄に貸したアジトのように複雑ではない。


九条は注意を払いながら壁を伝いながら奥へ進んだ。